色々鑑賞録
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大映ドラマ各話リンク
※大映ドラマの各話タイトルが探しにくいという連絡を頂きました。
以下リンクを追加しておきます。
青い文字をクリックすると新しい窓で開きます。

<大映ドラマ・スタッフ>
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「ヤヌスの鏡」脚本:江連卓

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「アリエスの乙女たち」脚本:長野洋

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「ヤヌスの鏡」「アリエスの乙女たち」監督:土屋統吾郎

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「ヤヌスの鏡」「アリエスの乙女たち」監督:岡本弘



『ヤヌスの鏡』全18話

1話「遅すぎた!私が消える」
2話「少女に何が起こったか?」
3話「嵐呼ぶ悪の化身」
4話「昼は恋人、夜は敵」
5話「慕い続けた人の名は…」
6話「納戸の中の秘密」
7話「あれが噂のBカップル」
8話「悪魔が初めて恐怖する」
9話「花嫁姿で笑う魔少女」
10話「少女が知った恐ろしい秘密」
11話「ダイヤの秘密」
12話「今夜魔少女の復讐が始まる」
13話「聖少女と魔少女の闘い」
14話「変身はパトカーの中で」
15話「悪魔の棲む館」
16話「私が勝ったと叫ぶ魔少女」
17話「私の敵は祖母」
18話「輝ける合体」



『アリエスの乙女たち』全23話

1話「魔性の瞳」
2話「これが愛?」
3話「二人だけの夜」
4話「恋のスクランブル」
5話「親たちの秘密」
6話「恐ろしい破局」
7話「真昼の決闘」
8話「男の決着」
9話「愛なき妊娠」
10話「たった一人の結婚式」
11話「私の全て捧げます」
12話「私は愛人?」
13話「陰の女」
14話「恐ろしい宣告」
15話「神よ!私に暗闇を」
16話「檻の中の愛」
17話「私の名は不倫少女」
18話「花嫁となる夜」
19話「母の遺言」
20話「召しませ我が命」
21話「悲しき化身」
22話「愛しながら他人」
23話「輝ける愛の奇跡」

<大映テレビドラマ:関連作品>

テーマ:懐かしドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

坂道の家2(最終)
<その1>

※ネタバレ注意

<その2>
開業医・石黒(北村和夫)は、急な連絡を受けて「坂道の家」に駆け付けた。
この家の主人・寺島が、風呂場で突然倒れたという。
行ってみると、寺島は内縁の妻・りえ子と隣家の主人・古賀克彦(小松政夫)によって、
布団に寝かし付けられていた。
石黒医師は、寺島の体を診察してりえ子に伝えた。
「お気の毒ですが、手遅れです。既に、お亡くなりになっております」
りえ子によると、寺島は飲酒後に入浴して急に倒れたという。
また、以前から坂道の昇り降りで息を切らすことがあったという。
心臓に負担を掛けての狭心発作。
そう見て間違いなさそうだ。

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石黒医師は、寺島が倒れたという風呂場を確かめてみた。
これと言って不審な点は見当たらなかった。
一つだけ気になったのは、熱い湯船におが屑が浮いていたことだった。

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石黒医師の通報を受けて、河崎刑事(樋浦勉)を始めとする警察関係者が遺体の引取に来た。
これから寺島の遺体は監察医によって解剖され、死体検案書が作成される。
それが終われば、遺族に返還の予定だ。

手順通り解剖が終わると、河崎刑事はりえ子と本妻・峰代に遺体引取を打診した。
りえ子と本妻は、共に引き取りを拒否した。

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長年のカンとでも言おうか。
河崎刑事は、この事件には何か裏がある気がしてならなかった。
解剖所見では、寺島の心臓に持病は無かった。
勿論健康な心臓の持ち主でも、飲酒して熱い風呂に入れば発作を起こすことはある。
だが、そうであったとしても何かが引っ掛かる。
河崎刑事は、主任・斉木警部補(中丸忠雄)の許可を取って、
この事件を詳しく調べることにした。

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寺島の死亡を確認した石黒医師によると、
寺島家の湯船にはおが屑が浮いていたという。
これがどうも妙だ。
寺島家の風呂は石炭炊きだ。
薪は使っていない。
何故、そんなものが湯船に浮いていたのだろうか?

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河崎刑事は、りえ子の経歴も調べた。
りえ子は、元はキャバレーのホステスだった。
寺島はそこの常連客で、足繁く通ううちに懇意になった。
ここ暫くは、この「坂道の家」で同居生活を送っていた。
寺島はこの愛の巣に相当執心していたようだが、
りえ子の方は冷めたものだ。
元同僚ホステス・さゆり(西川峰子)によると、
寺島が亡くなって間もないというのに、新しく店を持つ予定だという。
りえ子がキャバレーに勤めていたのは1年半程なのに、随分貯めこんだものだ。

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河崎刑事の部下(中本賢)は、保険の勧誘を装って寺島家の近辺で聞き込みをしてみた。
向かいの学生によると、寺島家では毎日午前10時頃に風呂を焚くのに、
事件の日に限って午後8時だったという。
おが屑に、午後8時。
そこにどんな意味があるのだろう?

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更に調べると、面白いことが分かった。
りえ子には、寺島とは別に男が居ることが分かった。
店の購入手続きをした不動産屋(石倉三郎)が、
契約の際に山口という男が同席していたのを覚えていたのだ。

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山口の身元はすぐに割れた。
バーに住み込みで勤めるバーテンだ。
マスターによると、事件の日は午後5時から午後7時まで店を出ていたという。
その時間、山口は何処で何をしていたのか?
これも、調べるとすぐに割れた。
山口は、知り合いから自転車を借りて何かを運んでいたようだ。
何を運んだかは分からないが、自転車を返す際には荷台がグッショリ濡れていたという。

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山口は一体何を運んだのか?
河崎刑事は、バーに聞き込みに行った際、氷屋を見てピンときた。
山口は氷を運んだのだ。
おが屑は、その氷に付着していたものだ。

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河崎刑事は、寺島の解剖を担当した監察医に、血液検査を要請した。
血液から睡眠薬が検出されると、捜査本部はりえ子の逮捕状を請求した。

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りえ子は、逮捕された。
刑事達が取調室で追求すると、りえ子は言い逃れをするでもなく素直に罪を認めた。

「あたしは、初めから寺島のことは好きではありませんでした。
あたしが愛したのは、山口1人です」

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「坂道の家」に囲われたりえ子に待っていたのは、
寺島による徹底した束縛であった。
やがては、逃げると顔に硫酸を掛けると脅されるようになった。
身の危険を感じたりえ子は、恋人の山口と共に寺島殺害を思い立った。
寺島の晩酌に睡眠薬を混ぜ、意識を失ったところで氷風呂に沈める。
寺島は発作を起こして勝手に死んでくれる。
後から風呂を炊いてしまえば、誰にも真相は分からない。
寺島が酔って入浴中に、自然に死んだように見える。

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真相を告白したりえ子は、悔し涙を流しながら「坂道の家」での生活を振り返った。

「丸で監獄のような生活でした。
あたしはこんな事したけど、それ程悪かったとは思ってません。
寺島に顔に硫酸を掛けられる位なら、あたしの方から寺島を殺したらいいと考えました。
今でも山口への愛は変わりません」

いかりや長介、黒木瞳:松本清張特別企画 黒い画集・坂道の家 (20120817-1300 テレビ大阪)




















テーマ:懐かしドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

坂道の家1
遊びを知らない堅物男が、生まれて初めて恋に落ちた。
相手は、キャバレーのホステスであった。
男は際限なく女に入れ揚げてゆき、とうとう家まで一軒買い与えた。
「坂道の家」で待望の同居生活を始めた男は、
やがて狂信的なまでに女を支配しようとする……というお話。

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TBSチャンネル
BS-TBS
テレビドラマデータベース
Wikipedia

<作品データ>
原作:松本清張
脚本:葉村彰子
監督:久世光彦
放送枠:TBS「月曜ドラマスペシャル」
初回放送:1991年8月26日

<出演>
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寺島吉太郎:いかりや長介(小間物屋主人)

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杉田りえ子:黒木瞳(ホステス)

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寺島峰代:白川和子(寺島の妻)

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山口:沖田浩之(バーテン)

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川上さゆり:西川峰子(りえ子の同僚ホステス)

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トモコ:神津はづき(小間物屋の従業員)

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石黒医師:北村和夫

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古賀克彦:小松政夫(隣人)

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斉木警部補:中丸忠雄

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河崎刑事:樋浦勉

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刑事:中本賢

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不動産屋:石倉三郎

<ストーリー>
下町に小さな小間物屋があった。
この店の主人・寺島吉太郎(いかりや長介)は、質素倹約を絵に描いたような男だ。
商売だけが生きがいで、楽しみと言えばせいぜいおでん屋の屋台で一杯引っ掛ける程度だ。
家族は、口うるさい女房・寺島峰代(白川和子)1人で、子供は居ない。
従業員のトモコ(神津はづき)と3人、コツコツ店を守る毎日だ。

そんな寺島の小間物屋に、ある日1人の女性客がやって来た。
その客・杉田りえ子(黒木瞳)は、店内を物色して売り物の財布に目を留めた。
なのに、中々買おうとしない。
接客に出た寺島が聞いてみると、持ち合せがないのだという。
事情を飲み込んだ寺島は、「お代は後日届けて下さい」とその財布を持たせて帰した。
寺島は、酷くケチな男だ。
一見の客に信用払いを認めるなど、前代未聞だ。
それでも、この日の寺島は損をした気にならなかった。
寺島は、りえ子に一目惚れしていたのだ。

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それから数日が経過した。
りえ子は、中々代金を支払いに来なかった。
痺れを切らした寺島は、りえ子のアパートへ行ってみた。
勿論、代金が欲しかったからではない。
りえ子に会いたかったからだ。
部屋を訪ねると、りえ子は嫌な顔一つ見せず寺島を招き入れた。
りえ子を前にすると、寺島はすっかり舞い上がっていた。
代金を受け取る筈が、逆に店から持ち出した口紅と香水をりえ子にプレゼントしていた。
「あの財布、あなたにサービスします。
これも、使って下さい」
受け取ったりえ子は、大喜びで寺島にマッチを差し出した。
「ありがとう。
ねえ、今夜お店にいらして。
そしたら、お返しにうんとサービスしますから」
りえ子は、キャバレーのホステスであった。

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その晩から、寺島のキャバレー通いが始まった。
勿論、指名はりえ子だ。
寺島は、遊びを知らない男だった。
夜のキャバレーは余りに眩しく、りえ子は輝いて見えた。

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寺島は、暇さえあればりえ子に会いに行った。
毎夜のようにキャバレーに通い、自宅アパートにも足繁く通った。
当然ながら、やがて男女の関係になった。
そうなると、もう歯止めは効かない。
りえ子が欲しがるものは、何でも買い与えた。
出費が嵩むので、妻には再三苦情を言われた。
それでも、寺島はキャバレー通いを止めなかった。
もはや、りえ子無しでは居られなくなっていたのだ。

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それから暫くが経過した。
寺島は、りえ子に男が居ることに気付いた。
りえ子に尋ねると「弟よ」と言い訳したが、明らかな嘘だった。
りえ子と男は、度々会っていた。
時に夜の公園で、時にりえ子のアパートで。
嫉妬に駆られた寺島は、尾行して男の正体を確かめた。
相手は、山口(沖田浩之)というバーテンだった。

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山口の正体を知った寺島は、
りえ子のアパートへ押掛けて鬼の形相で迫った。

「家を見付けて来た。坂道の上の、いい家だ。
お店を辞めて、そこで暮すんだ。
なあ、りえ子。そうしてくれ。
りえ子、俺は何もかも知ってるんだよ。
お前が弟だと紹介したあの男は、山口っていうバーテンだということも。
でも、怒れないんだ。
怒ると、俺が寂しくなる。
お願いだから、あの男と手を切ってくれ。
金なら幾らでも出す。
何でもするから、あの山口と別れてくれ」

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りえ子は承諾した。
寺島は、りえ子を「坂道の家」に住まわせた。
生活費だけでなく、キャバレーへの借金から山口との手切金まで、何もかも寺島が用立てた。
寺島は、退路を断っていた。
貯金は切り崩し、小間物屋も完全に放り出した。
もう、元の生活には戻れない。
でも、これでりえ子と一緒に居られる。
寺島は、少しだけ安心していた。
だが、その安心は長くは続かなかった。

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同居生活を始めて数日後、寺島はりえ子と山口が切れてないことに気付いた。
りえ子は、寺島不在の隙を見て度々山口を家に引き込んでいた。
問い詰めても、りえ子はのらりくらりと言い訳を繰り返した。
どんなに言って聞かせても、聞こうとしない。
嫉妬に狂った寺島は、あらゆる手を使ってりえ子を支配しようと企むのだった。

寺島は、りえ子に薬品の瓶を見せてこんな事を囁いた。
「知り合いの薬局で分けて貰った硫酸だ。
もし、お前が俺に隠れて何処かに行ったら、
何処までも追い掛けて探し出して、これを顔にぶち撒けてやる」

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寺島は、りえ子を再三買い物へ行かせた。
家は坂道の上にある。
炎天下の行き帰りは、りえ子を酷く消耗させるものだった。

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帰宅後も、寺島はりえ子を休ませなかった。
強い酒を飲ませ、力づくで熱い風呂に浸からせた。

「りえ子、俺はお前が可愛いんだ。
誰にも渡すもんか。
それ位なら殺してやる。
お前はもう、俺から逃げようったって駄目だよ。
俺も、命がけなんだからね」

りえ子から体力を奪い、身も心も支配下に置く。
寺島の計画は、着々と進行していた。

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<その2に続く>


テーマ:懐かしドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

海を飛ぶ夢3(最終)
<その1>
<その2>

※ネタバレ注意。

<その3>
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翌日、ラモンは安定剤から目を覚ました。
眠っている間に、ロサから繰り返し電話が掛かって来たという。
ラモンは、ロサを部屋に呼んで用件を尋ねた。
すると、ロサは何時に無く神妙な表情で一大決心を打ち明けた。

「私は判ったのよ。やっと理解したの。
あなたが言ったこと。
"本当に愛するのは、死なせてくれる人"
私の心は決まったわ。
愛してる。
手を貸して欲しい?私は本気よ。
手を貸して欲しい?」

フリアとの連絡が絶たれたラモンにとって、
それは意外な申し出であった。

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ラモンは、兄夫婦に"旅立ち"を告げた。
予てから尊厳死に反対だったラモンの兄・ホセ(セルソ・ブハッロ)は、
ホセの部屋へ来て激しく詰った。
「そうはさせん!」
勿論、それで引くラモンではない。
理屈に強いラモンは、ホセに反論した。
「どうするつもりだ?
ベッドに縛り付けるか?
病院みたいに、睡眠薬を山盛りか?
兄貴には止めさせない。
無知とエセ宗教心で、僕を奴隷にするな」
いつもの調子で抗弁するラモンに、
ホセは声を震わせて激昂した。
「俺はお前の奴隷じゃないのか?
お前のために海を捨て、こんな農場をやる俺の気持ちは?
お前の世話だけをする為に!
俺も女房も息子も、皆お前の奴隷だ!」
言うだけ言うと、ホセは泣きながら部屋を出て行った。
止めても、止められない。
口で否定しつつも、ホセはそんなことは分っていたのだ。

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一方、兄嫁・マヌエラは何も言わなかった。
ホセの気持ちも、ラモンの気持ちも、どちらも良く分かる。
だからこそ、何も言わずに通した。

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昼過ぎ、兄夫婦の息子・ハビエル(タマル・ノヴァス)が帰宅した。
ラモンから見れば、甥っ子にあたる。
ラモンはハビエルを部屋に呼んで、先日届いた著書の一節を読み上げるよう頼んだ。
ハビエルは、ピンと来ない様子でその文面を読み上げた。

「息子よ、生まれて来ぬことを謝ろう。
でも、それは私の過ちではなく、恐れおののくバラのせいだ。
共に遊べぬことを謝ろう。
もし私が去った後で生まれたら、私の愛を忘れないで。
お前の母に口づけを。
私を恨まずに。憎しみは醜い」
「意味は?」
「生まれなかった叔父さんの息子への詩で、その子に語りかけている。
"許してくれ"と」
「そうだ。その下に何て書いてある?」
「ハビエルに」
「どうだ?」
「何が?」
「何も感じないか?」
「息子じゃない」
「勿論だ。でも、理由があるからお前に詩を捧げた」
「息子じゃないよ」
「学校で何を習ってる?もういい、行け」

ラモンは、ムッとした様子でハビエルを部屋から追い出した。
字面は理解出来ても、
詩に込められた思いは伝わらなかったらしい。
この時、ハビエルは未だラモンの旅立ちを聞かされていなかったのだ。

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その夜、「尊厳死の会」代表・ジェネの携帯が鳴った。
ラモンからだ。

「明日、旅立つことにした。
君はこの事から完全に手を引いてくれ。
これでお別れだ。もう連絡はしない。
君の安全のためだ」

「そう、分かったわ。
でも、一つだけ言わせて。
ラモン、もう一度よく考えて。
無理にやらないで。
自分の言葉を実行するためや、
世の中や私たちの組織のために、自分を追い込んだりしないで。
聞いてる、ラモン?」

ジェネが縋り付くよう訴えると、ラモンは突き放したように答えた。

「君も皆と同じだね、ジェネ」
「ごめんなさい、ラモン」
「さよなら、ジェネ」
「いい旅路を祈るわ、心の友……」

ジェネは、涙ぐみながら携帯を切った。
もう誰に求められない。

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旅立ちの朝が来た。
ラモンは、家族に見守られながら車に載せられた。
兄夫婦のホセとマヌエラ、それに甥っ子のハビエルだ。
ハビエルは、「詩を理解したよ」とラモンを抱き締めた。
やがて、車が出た。
ハビエルは、追い切れなくなるまで車を追いかけ続けた。

ラモンは、ハビエルに教えることは教えたつもりだ。
年老いた祖父を大事にすること。
ハビエルを息子同然に愛し、思いを託していたこと。
いつか、分かってくれるだろう。

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ラモンを載せた車は、ロサの待つホテルに到着した。
そのホテルからは、海がとてもよく見える。
ラモンとロサは部屋を取り、夕日を眺めながら語り合った。

「ラモン、死後の人生があるなら、私に"しるし"を送って」
「しるし?」
「何でもいいの。幽霊は平気よ。いつでも、どこでも、待ってるから」
「分かった、約束する。
でも、君だからハッキリ言うけど、死んだ後には何も無いよ。
生まれる前のように、無の世界だ。
確信は無いけど、予感がするんだ。
忘れないで。僕は君の夢の中に居る。
夜は君のベッドに横たわり、愛し合おう。
今から約束しておくよ。
ありがとう、ロサ。心から感謝している」

ロサは、ラモンに唇を寄せたところで思い留まり、
額にキスをした。

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ラモンは、ビデオカメラに向かって語り始めた。
部屋に1人だ。
他に誰も居ない。
顔の横には、ストローを差したコップが置かれていた。
カメラもコップも、誰が設置したのかは分からない。

「ご覧のように水の入ったグラスがあり、適量の青酸カリが含まれています。
それを飲めば、命が絶たれます。
私は貴重なる肉体を放棄します。
生きることは"権利"の筈ですが、私には"義務"でした。
この辛い状況に耐え続けました。
28年4ヶ月と数日もの間です。
思い起こしても、私の人生に楽しいことなど有りませんでした。
意志に反し、ただ時が流れただけです。
ほぼ全生涯です。
でも、状況は変わります。
いつの日か、時と人々の良心によって判断が下るでしょう。
私の死の願いが、正当なものか間違っているか」

ラモンは、首を伸ばしてコップの水をストローで飲み干した。
間もなく、ラモンの意識は混濁を始めた。

「体が熱い。もうすぐだ」

薄れゆく意識の中で、ラモンは海に飛び込んだあの日の夢を見た。

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ラモンが亡くなって暫くが経過した。
「尊厳死の会」代表・ジェネは、療養中のフリアを尋ねた。
フリアは海の見える別荘で、夫と静かに暮らしていた。
病状は進行し、今では話が通じないこともある。
ジェネは、夫の許可を取ってフリアと2人になった。
挨拶すると、フリアは穏やかな笑顔で答えた。
ジェネのことが理解出来ているらしい。
ジェネは少し安心して、ラモンからの手紙を手渡した。
すると、フリアはキョトンとした表情でジェネに尋ねた。

「ラモンって?」
「ラモンよ。あなたのお友達。私が紹介したの。覚えてる?」
「あなたが?」
「そうよ」

フリアは、ラモンを覚えていなかった。
手紙の内容を理解することは、もはや不可能であろう。
そんなフリアに、ラモンはどんな手紙を残したのだろうか。

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『裡なる海へ、裡なる海へ、無重力の奥底へ、
夢が眠る場所で、
2つの魂は、1つの願いを叶える。
2人の眼差しが、静かに幾重にも重なる。
深く、もっと奥深く。
肉体を超えて遥か彼方へ。
でも私は目覚め、ひたすら死を願い、
私の唇は永遠にあなたの髪を彷徨う』

ハビエル・バルデム:「海を飛ぶ夢」 [ABCテレビ] 2011年03月05日 25時30時00秒(土曜日)


テーマ:洋画 - ジャンル:映画

海を飛ぶ夢2
<その1>

<その2>
フリアは病院に担ぎ込まれ、意識を取り戻した。
フリアの持病は「脳血管性痴呆」という。
宣告は2年前だ。
日に日に体が衰え、知能を失ってゆく難病である。
完治する見込みは無い。
フリアは、病床に「尊厳死の会」代表・ジェネを呼んで伝えた。
自分も「尊厳死の会」に入りたいと。
ジェネはよく考えるよう諭して、ラモンからの手紙を手渡した。
フリアには夫が居る。
しかし、死を望む気持ちを判ってくれと言っても理解はしてくれないだろう。
一体、誰ならこの気持ちを判ってくれるだろう。
フリアは、複雑な心境でラモンの手紙に目を通した。

『親愛なるフリア、
"僕の裁判に興味を持つ弁護士"と聞き、僕はすぐに判った。
"この弁護士も病に苦しんでいる"と。
同じ状況にある者だけが、僕の"地獄"を理解してくれる』

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フリアとラモンは、文通で互いの近況を報告した。

ラモンの部屋には、様々な人がやって来る。
寝たきり前から付き合いのある友人も多い。
最近は、工場勤めのロサがよくやって来る。
苦しい胸の内を誰かに聞いて欲しいのだろう。
ラモンの世話をしたいとお節介を焼くので、時に兄嫁マヌエラと小競り合いになる。

一方のフリアは、夫に支えられてリハビリの毎日だ。
足が弱って中々歩けない。
弁護士活動は、もう無理だろう。
だが、ラモンとの交流はこれからも続けるつもりだ。
いつか、ラモンの本を出版したい。
フリアは、ラモンにそんな返事を出した。

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フリア不在の中、「尊厳死の会」の尽力で裁判の手続きが始まった。
ラモンの訴えは、多くの議論を生んだ。
中には、痛烈な批判者もいた。
その急先鋒が、同じ四肢麻痺のフランシスコ神父(ホセ・マリア・ポウ)だ。
フランシスコ神父は、テレビを通じてこう批判した。

「ラモンは死を願っている。
だが、これはラモンの叫びではないのか。
自分に注目してくれと、世の中に訴えているのだ。
彼の家族や周りの人間に、愛情が足りないのだろう。
ラモンが求めているのは、愛情だ。
是非彼に会い、人生は生きるに値するということを判らせたい」

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その夜、ロサが泣きながらラモンの家にやって来た。
勤めていた工場が閉鎖されて、この先どうやって食べていけばいいか分からないという。
ラモンは、途方に暮れるロサを慰めた。
「今の君は、勇敢で強い女だ。
おまけに、寛大で美人。
惚れない男は馬鹿だ」
励まされたロサは、ラモンのためなら何でもしたいと手を握った。
何でも。
そう来ると、ラモンの頼み事は一つだ。
「怖がるな。
計画したのは2年前。誰も罪に問われない。
協力してくれる友人はいるが、もう1人勇敢な人間が必要だ」
何の話か気付いたロサは、慌てて協力を拒否した。
「いいえ、違うわ。看病したいの。
死ぬ手伝いじゃない」

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後日、ラモンの家にフランシスコ神父がやって来た。
テレビで言っていた通り、ラモンを説得するためだ。
フランシスコ神父が教義に照らした命の大切さを説くと、
ラモンは徹底的に反論した。
寝たきりで26年、尊厳死について考えに考えた。
理屈では負けない。
さすがのフランシスコ神父も、ラモンの抗弁には打つ手無しだ。
処置無しと見たフランシスコ神父は、
せめて家族だけでもと説得を始めた。
「彼を生きる気にさせ、教えてやるのだ。
人生は手足を動かし、走り回ったりボールを蹴るだけではない。
人生はもっと深い。
遥かに意味がある。私を信じ給え」
すると、今度は兄嫁マヌエラが反論した。

「あなたがテレビで言ったことは、一生忘れません。
"ラモンの家族に愛情が足りない"だなんて。
義弟は愛情に包まれて暮らしています。
私は長いこと世話をして、息子のように愛してます。
誰が正しいのか判りません。
命は私達のものではなく、神に帰属するのかどうか。
でも、1つだけ判ります。
あなたは、やかましいわ」

結局、フランシスコ神父は誰も説得出来ずに帰っていくのだった。

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数カ月後、弁護士・フリアが退院した。
足に後遺症が残って車椅子状態だが、体調そのものは回復した。
フリアは再びラモンの家に泊り込み、詩の清書を手伝った。
2人は、互いに共感していた。
同じ尊厳死を望む者同士、絆以上の何かがあった。
詩の清書を遂えた夜、フリアはラモンにそっと口付けをした。

「一緒に旅立ちましょう」
「いつ?」
「本の準備は済んだわ。
私はバルセロナへ行き、出版社を見つける。
本を出すのよ。
見本を持って戻ってくるから、その日にしましょう」

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裁判の日が来た。
ラモンは、法廷に出廷した。
寝たきりになって以来家から出ていないラモンにとって、
これは28年振りの外出だった。
傍聴席には、ロサが駆け付けていた。
裁判は粛々と進められ、忽ちに結審した。
最後まで、ラモンに発言の機会は認められなかった。

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閉廷後、ラモンはロサと話し合った。
ロサは度々ラモンの家へやって来て、身の回りの世話を買って出る。
どうしてかと尋ねると、ラモンを愛しているからと言う。
ラモンは、そんなロサに困惑していた。

「どこが愛なんだ?僕の意に反しているのに。
いいか。
僕を本当に愛するのは、死なせてくれる人だ。
それが愛だよ、ロサ。それが愛だ」

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裁判の結果は、ラモンの予想通りだった。
ラモンの心情は察するが、
自殺を幇助した人間は罪に問われるという。
尊厳死は認められなかった。

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暫くして、ラモンの家に著書が届いた。
フリアが持って来る筈が、何故か郵便だ。
著書には、フリアからの手紙が添えられていた。
一緒に死のう。
そう約束をした筈が、フリアはギリギリになって翻意したのだ。

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その日の深夜、兄嫁マヌエラはラモンの嗚咽を聞いて飛び起きた。
ラモンが何かを訴えている。
マヌエラが部屋に駆け付けると、ラモンは泣きながら叫んだ。

「何故、何故だ。
何故皆のように自分の人生に満足出来ない?
何故僕は死にたい?
何故なんだ?
何故……何故僕は死を望む?」

マヌエラは、ラモンを宥めて安定剤を飲ませた。
混濁する意識の中で、ラモンは何度も見た例の夢を見た。
海を飛ぶ夢を。

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<その3に続く>




















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