色々鑑賞録
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弁護士迫まり子の遺言作成ファイル5 告発
斉藤慶子主演の2時間サスペンス。

弁護士の主人公が元市長から遺言書を託される。
それは、自分が死んだら現市長の息子を警察に告発して欲しいというものだった。
調査を進めた主人公は、その息子が殺人犯であることを確信する。
果たして息子は逮捕されるのか、
それとも事件は闇に葬られるのかというお話。

出色の出来だった4作目に比べると、かなり落ちている感が否めず。
早い話が血の繋がらない父と息子の葛藤の物語なのだが、
この主題が描き切れておらず、見ていて余り心を打つものがない。
ディレクターが代わったせいか、全体に表現が大げさなのも気になる。
肺を病んで余命幾許もないという設定の津川雅彦がやたら熱演するので、
ちっとも病気に見えない等チグハグな描写が多い。
動機もクライマックスも強引。
2時間サスペンスだと割り切って見れば腹も立たないが、
完成度の高かったこのシリーズとしては残念な出来。

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BS-TBS
TBS-CH
テレビドラマデータベース

<作品データ>
脚本:井上由美子
初回放送:2003年6月9日
放送枠:TBS「月曜ミステリー劇場」

<出演>
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迫まり子:斉藤慶子

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迫和美:岸田今日子

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迫みな子:磯野貴理子

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山野太一郎:津川雅彦

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山野孝平:大石継太

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山野暁子:真由子

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柳川和夫:山谷初男

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柳川節子:八木昌子

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生田医師:小宮孝泰

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ナース:小森琴世

<ストーリー>
弁護士・迫まり子(斉藤慶子)は、手紙による呼び出しを受けて長野県花岡市に飛んだ。
遺言書作成を専門とするまり子の今回の依頼者は、
元市長の山野太一郎(津川雅彦)という男だった。
山野は肺を病んで入院中で、余命半年を宣告されている。
そんな山野が、最期にどうしてもやり残したことがあるというのだ。
まり子が病室に面会に行くと、
山野は自分が死んだら警察に届けて欲しいと手紙を差し出した。
「これは、ある種の告発状だ」
事情の飲み込めないまり子に、山野は事の詳細を打ち明けた。

山野には息子が居る。
現在市長を務めている山野孝平(大石継太)という男だ。
2年前、孝平はある人物を殺害した。
誰を殺したのかは言えない。
この秘密は、山野と孝平だけが知っている。
自分が死んだら、親として息子に責任を取らせたい。
だから、告発状を警察に提出して欲しい。
それが山野の遺言だった。

弁護士のまり子は、依頼人に守秘義務を負っている。
当然、これを外部に漏らすことは出来ない。
しかし、そうは言っても事は殺人という重大案件だ。
まり子は、とんだ重荷を背負ったと内心頭を抱えるのだった。

- - -

まり子は、更に詳しい事情を知るために地元調査を開始した。
花岡市は、現在市長のリコール問題で揺れている。
争点は、古い小学校を取り壊してショッピングモールを建設することに賛成か反対かだ。
現市長の孝平は、取り壊し反対派だ。
花岡市民の意見は、真っ二つに割れている。
賛成派と反対派は、互いに選挙カーを走らせて連日支持を訴えていた。
孝平は、当初から反対派だった訳ではない。
就任から僅か3ヶ月で突如反対派に転じた。
父の地盤を継承した当初は、賛成派だった。
そもそも、ショッピングモール建設は父が市長時代に始まった計画なので、
息子の孝平がそれを受け継ぐのは自然な流れだったのだ。
まり子は思った。
山野と孝平の父子の間で、一体何があったのだろう?

- - -

まり子は、山野と孝平の生い立ちを調べてみた。
2人は血の繋がった親子ではない。
孝平は養子で、実の両親は市庁舎の事故で亡くなっている。
山野は、それを不憫に思って孝平を引き取った。
この一件は美談として報じられ、
それまで汚職問題で人気低下の著しかった山野は一躍時の人となった。
果たして、山野は純粋な善意で孝平を引き取ったのか、
それとも計算ずくでやったことなのか。
まり子には分からなかった。
ただ、地元住民に聞き込みして得られる証言はどれも共通していた。
山野と孝平の父子仲は決して悪くなかった。
孝平が反対派に転じるまでは。

- - -

悩むまり子の元に、妹でやはり弁護士の迫みな子(磯野貴理子)が応援に駆け付けた。
まり子はみな子と共に、父子対立の鍵となる小学校へ足を伸ばした。
そこで出会った元校長夫人・柳川節子(八木昌子)に話を聞くと、
意外な事実が判明した。
節子夫人の夫で元校長・柳川和夫(山谷初男)は、2年前から行方不明になっている。
孝平が反対派に転じたのは、これが契機だった。
柳川校長は、当然ながら取り壊し反対派だ。
その恩師が謎の失踪をしたことで、孝平の中で何かが変わったらしいのだ。

まり子は、推理してみた。
ひょっとして、孝平が殺したというのはこの柳川校長なのだろうか?
だとしたら、一体どうして殺害したのだろう?
孝平にとって、柳川校長は恩師の筈だ。

- - -

まり子は、事の真相を確かめるため件の小学校で孝平と会った。
そして、単刀直入にズバリ問い質した。
「私は、あなたが柳川先生を殺害したのではないかと思ってます」
孝平は、何故か動揺する素振りは見せなかった。
それどころか、事件の真相をペラペラ喋り始めた。
異様なテンションで告白を始めた孝平を、まり子は唖然として見守った。

市長選に当選した夜、孝平は柳川校長に呼び出された。
場所は、この小学校校舎だ。
柳川校長は、取り壊しを公約に掲げて当選した孝平を激しく非難した。
市長の権限で取り壊しを撤回して欲しい。
そう訴える柳川校長に、孝平は答えた。
父の意志を受け継いで当選した以上、それは出来ない。
すると、柳川校長は孝平に怒鳴りつけた。
「操り人形!あの権力の亡者の山野が、純粋にお前の将来を考えてお前を引き取ったと思うのか?」
柳川校長は、孝平にぶち撒けた。
養子縁組は善意などではない。
自分が山野に持ち掛け、山野は政治利用のためにこの計画に乗った。
「お前も山野も裏切り者だ。親子揃って裏切り者だ。この恩知らず!」
激昂した柳川校長は、孝平に掴みかかって揉み合いになった。
後はお決まりの結果だ。
振り解こうとした孝平は柳川校長をつい突き飛ばしてしまい、運悪く頭を打って死んでしまったのだ。
孝平は、柳川校長の死体を校庭に埋めた。
これを、孝平の父・山野が目撃していたのだ。
孝平が学校取り壊しに反対する理由は、校舎保存のためでも何でもない。
掘り起こされて死体が見つかることを恐れたからに過ぎないのだ。

そこ迄聞いたまり子は、興奮状態の孝平に尋ねた。
「どうして、私に話したんですか?」
孝平は、震える声で答えた。
「それは、あなたには死んで頂くしかないからです」
殺される。
直感したまり子は、その場から逃げ出した。
孝平は、追い掛けて来た。
まり子は死に物狂いで走ったが、体力のある男から逃げ切れる筈もなかった。
直ぐ様追い着かれて揉み合いになり、あわやという瞬間誰かの怒鳴り声が辺りに響いた。
「何をしている!」
声のした方向を確かめてみると、そこに居たのは山野であった。

山野は病院を抜け出し、遥々学校まで駆け付けた。
息子の過ちを止めるために。
山野は、車椅子の車輪を進めて孝平の元に詰め寄った。
「孝平、儂と一緒に警察へ行こう。自首をするんだ」
孝平は、聞く耳を持とうとしなかった。
「冗談じゃない。自首なんか出来る筈ないじゃないか。
僕は市長ですよ。明日の投票で再選されるんです」
孝平が逃げ出そうとすると、山野は車椅子で回り込んで行く手に立ち塞がった。
「どうしても逃げるなら、儂がお前を殺す」
山野は、車椅子から立ち上がって孝平の首を締めた。
しかし、病身の山野に大の男を絞め殺せる筈もない。
孝平は、山野の腕を解きながら涙声で叫んだ。
「お父さん、そんなんじゃ死ねないじゃないか。
出会った時は、もっと強く抱きしめてくれたじゃないか」
孝平は、山野に引き取られた日のことを忘れたことが無かった。
山野は、幼い孝平を力一杯抱き締めてくれた。
その腕に抱かれながら孝平は思った。
こんな立派な人が自分の親になってくれた。
自分も将来父のように立派な市長になろう。
そう誓った孝平は、ずっと山野を追い求めて来た。
市長の面子を潰してはならない。
それに誰より拘ったのは、山野以上に孝平だった。
だからこそ、殺人をここ迄隠し通して来たのだ。
孝平は、力尽きた山野を車椅子に座らせて漸く冷静さを取り戻した。
そして、ある重大な覚悟を決めようとしていた。

- - -

その日、孝平は妻・山野暁子(真由子)に付き添われて自ら警察に出頭した。
暁子は、「待ってます」と言って夫を送り出した。

- - -

息子の自首を知った山野は、これまで拒否していた延命治療を受け入れると医師に申し出た。
1日でも長く生きて、息子と共に罪を償うためだ。
現職市長が殺人で逮捕された花岡市には、これから大混乱が起きるに違いない。
そんな中で共に生き、最期まで息子を守るのが山野の務めなのだ。

- - -

こうして、まり子の仕事は終った。
遺言書は、本来依頼人が亡くなった後に開封されるものだ。
しかし、事件が解決した以上守り通す意味はない。
まり子は、帰りの電車内で山野の遺言書を開封してみた。

『前略、花岡警察署長殿。
私、山野太一郎は、これより息子・山野孝平の罪を御報告致します。
息子・孝平は、殺人の罪を犯しました。
動機は、父親である私を庇おうとしてのことです。
そして、今日迄息子が罪を告白することに至らなかったのは、偏に私が原因です。
私が、自らの名誉と地位を守らんがために息子の自首を阻みました。
息子をここ迄追い込んだのは私です。
息子・孝平は理想に燃えた青年であり、心優しき青年です。
全ては、この愚かな父親に起因することであります。
どうか、その点御配慮の上、息子・孝平が罪を償うことが出来ますようにお導き下さい。
柳川先生の御冥福をお祈りします』

斉藤慶子、津川雅彦:弁護士迫まり子の遺言作成ファイル5 告発 [テレビ大阪] 2014年05月13日 13時00分00秒(火曜日)

<斉藤慶子:関連作品>

テーマ:ドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

弁護士迫まり子の遺言作成ファイル4 再会
斉藤慶子主演の2時間サスペンス。

遺言作成を専門にする弁護士が、刑務所から出所したばかりの男から依頼を受ける。
それは、刑務所の中でコツコツ貯めた僅かばかりのお金を娘に残したいというものだった。
しかし、婚約を間近に控えていた娘は前科者の父と関わるのを断固拒否する。
弁護士が娘の説得を重ねているうちに、やがて事態は思わぬ方向に走ってゆくというお話。

井上由美子の脚本が素晴らしい。
冒頭から単刀直入の表現でズバズバ切り込むのでまだるっこさがない。
人物造形が骨太で力強く、最後まで気を抜かずに一気に見せてくれる。
演じるキャストも全員熱演で、脚本の良さに応えている。
ギャラクシー賞受賞も当然の出来。
非の打ち所なし。
再放送されたら是非見て欲しい作品。

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TBSチャンネル
BS-TBS
Wikipedia
テレビドラマデータベース

<番組データ>
脚本:井上由美子
初回放送:2002年3月18日
番組名:TBS「月曜ミステリー劇場」

<出演>
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迫まり子:斉藤慶子

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迫みな子:磯野貴理子

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沢田泰雄:大地康雄

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川野みゆき:奥貫薫

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中谷賢一:林泰文

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川野文子:山口果林

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迫和美:岸田今日子

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奥貫薫(中学生)

<ストーリー>
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服役囚・沢田泰雄(大地康雄)に仮釈放の日がやって来た。
この日、沢田は14年振りに刑務所の外へ出た。
2人を殺害しての無期懲役。
それが、沢田の服役理由であった。
刑務所の中で、沢田は殺人を後悔しない日はなかった。
毎夜のように殺した人たちの夢に魘され、ずっと罪の意識に苛まれ続けた。
刑期は真面目に務め上げたつもりだ。
だからこそ、仮釈放の許可も降りた。
しかし、外へ出ても沢田が身を寄せる場所はなかった。
妻と娘が居たが、とっくに離婚が成立している。
沢田は、犯罪者の社会復帰を支援する「更生保護施設」で寝泊まりしながら、
これからも大罪を背負って生きていかねばならないことを自覚していた。

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刑務所を出た沢田には、まず会わねばならない人が居た。
刑事裁判の弁護を担当してくれた迫和美(岸田今日子)という弁護士だ。
2人を殺害して無期懲役で済んだのは、この人の尽力の賜物だ。
沢田は、和美が所長を務める「迫法律事務所」を訪ねて深々と頭を下げた。
この「迫法律事務所」は、所長である和美(岸田今日子)を筆頭に、
長女・迫まり子(斉藤慶子)、次女・迫みな子(磯野貴理子)の母娘3人の弁護士が運営している。
迫法律事務所を訪ねた目的は、御礼とは別にもう1つ理由があった。
それは、娘・川野みゆき(奥貫薫)への遺言書作成依頼であった。
沢田は、刑務所内の労役で得た報酬をコツコツ貯めていた。
100万円とほんの少し。
それが全財産だ。
それだけでも娘に残してやりたい。
その為の遺言書作成依頼であった。
娘・みゆきからは刑務所に手紙が届いていた。
近く結婚するから、出所しても会いに来ないで欲しい。
そういう内容だった。
沢田も、そう言いたくなる娘の気持ちは良く判った。
殺人犯を父に持った娘が、どれだけ世間に白い目で見られ続けたか察して余りある。
だから、生きているうちでなくてもいい。
自分が死んだ後にでも受け取って欲しい。
それが、沢田の願いであった。
その意を汲んだ和美所長は、遺言書作成を専門にする長女・まり子を中心にして、
この依頼をやり遂げると沢田に約束した。

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その晩、和美はまり子に沢田の詳しい経歴を話して聞かせた。
沢田は、かつて町工場を経営していた。
しかし、不況の煽りと過剰投資が裏目に出て忽ち経営に行き詰まるようになり、
町工場は借金地獄に陥った。
沢田には妻と娘が居た。
その家庭にも、借金取りは容赦なく押し掛けて来た。
沢田は、次第に精神的に追詰められるようになっていった。
そんな中での事件だった。
沢田は、借金取りをゴルフクラブでめった打ちにして殺害した。
発端は、借金取りが娘・みゆきを事務所に連れ込んで暴行しようとしたことだった。
沢田は、娘を守ろうとすっかり我を忘れていた。
路地を逃げ惑う借金取りを追い掛け、これでもかと殴り続けていた。
気が付くと、沢田はその借金取りだけでなく止めに入った通行人まで殺してしまっていた。
余りの興奮状態で、止めに入ったのが丸で無関係の第三者だと認識出来なかったのだ。
この事件は、沢田の胸に深い傷を刻んだ。
謝って謝り切れるものではない。
人を殺した重み。
それも第三者まで巻き込んでしまった重み。
それが、沢田の胸をギリギリと締め上げていた。
弁護人となった和美は、沢田の贖罪意識の強さを訴えて何とか無期懲役に持ち込んだ。
それから14年が経過した。
沢田が妻や娘との絆を取り戻せるかどうかは、今まり子の双肩に委ねられようとしていた。

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まり子は、手順通り遺言書を作成した。
それ自体は簡単だ。
しかし、これを娘・みゆきに受け取って貰うのは中々骨が折れそうだ。
まり子は、みゆきのアパートを訪ねた。
みゆきは、このアパートで母・川野文子(山口果林)と2人暮しだ。
まり子がアパートの前へ来たところで、丁度仕事終りのみゆきが帰って来た。
隣には男性を連れている。
どうやら、例の婚約者らしい。
その男性・中谷賢一(林泰文)は、みゆきに話があるとまり子が伝えると、
気を利かせて帰って行った。

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まり子はアパートに入れて貰い、みゆきと母・文子に要件を伝えた。
出所したお父さんから遺言書を預かって来ました。
そう言って書面を差し出すと、みゆきはそんなものは要りませんと受け取りを拒否した。
まり子は説明した。
刑務所の中でお父さんが苦労して貯めたお金を譲りたいという遺言書です。
受け取ってあげて下さい。
そう説得しても、みゆきは聞く耳を持とうとしなかった。
人殺しの娘。
その汚名を背負ったみゆきにとって、
父のことは消したい存在以外の何者でもないのだ。
まり子は、日を改めて出直すことにした。
一体、どう説明すれば沢田の意図を分かって貰えるだろう。

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翌日、まり子はみゆきの職場へ押し掛けて行った。
みゆきは、遊園地で係員をしている。
まり子が客を装って話し掛けると、みゆきは遊園地の片隅へまり子を連れ出した。
まり子は再度頼み込んでみた。
遺言書を受け取って欲しい。
どうしても拒否するなら、せめてお父さんに直接その旨を伝えて欲しい。
懸命に説得したが、みゆきは中々頷こうとしなかった。
そこで、まり子は思い切って痛いところを突くことにした。
「それでいいの?このまま結婚してしまっていいの?
婚約者の方、中谷さんって仰ったわよね。
彼はお父さんのこと知ってるの?」
「知る訳ないでしょ。
そんな事知ったらあたしと結婚する人なんて居ないわ」
「じゃ、一生黙ってるつもり?」
「ええ、一生隠し通します」
「そんな苦しいこと出来るの、みゆきさん?
私も人を好きになったことがあるから分かるの。
好きな人に嘘を付くのは凄く辛い」
「仕方ないでしょ。それ以外、幸せを手に入れる方法が無いんだもの。
どんなことをしても隠し抜くわ」
「それは本当の幸せ?」
「本当じゃなくてもいいの。本物じゃなくてもいい。嘘の上に立ってるものでも何でもいい。
あたし、賢一さんと暮したいの。
一緒に御飯食べて、買物して、テレビ見て笑って、そう願うのがそんなにいけないこと?
あなたが彼に父の事件のこと話したら、あたし死にますから」
みゆきは、そこで話を打ち切って持ち場に戻って行った。
決して本心から父を憎んでいる訳じゃない。
しかし、この結婚だけは邪魔されたくない。
それが本音のようだ。
まり子も引き止める言葉が出て来なかった。
どうしたものか。
思案しながら遊園地から出たところで、まり子は思わぬ人物に呼び止められた。
みゆきの婚約者・中谷であった。

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まり子は、中谷を「迫法律事務所」の応接間に通した。
中谷は心配しているようだ。
弁護士のまり子がみゆきの元に何度も押し掛けて来るのは、
何か面倒な事件にでも巻き込まれたからではないか。
もしそうなら、力になりたいので訳を話して欲しい。
中谷はまり子にそう訴えた。
まり子が答えに窮していると、
事務所に居合わせていたまり子の母・和美所長が執り成しに入った。
「みゆきさんが事件に巻き込まれているなんてことは無いわ。
あたしとみゆきさんのお父さんは古い知り合いでしてね。
娘に使いを頼んだものですから」
咄嗟の作り話だったが、これが中谷を更に刺激していた。
「みゆきさんのお父さんって、離婚したお父さんのことですか?
彼女のお父さん、どんな方なんでしょう?
全く話もしてくれないので、少し気になっていたんです」
「とっても誠実な、真面目な方よ。
いつも、みゆきさんのことを気に掛けてらっしゃるわ」
「結婚の御挨拶に行かなくていいでしょうか?
例え離れていてもお父さんはお父さんですよね?
僕、早くに両親を亡くしました。
だから、みゆきの両親は大事にしたいと思ってるんです」
「そのお気持ちは、みゆきさんに話してあげて下さい。
そして、みゆきさんがそれを望んだらそうしてあげて頂きたいわ」
「分かりました。僕は彼女を信じていてもいいんですね?」
「勿論よ。信じてあげて下さい」
和美所長の言葉を聞くと、漸く納得したのか中谷は礼を言って腰を上げた。
中谷は、事務所から出ていこうとしたところで丁度やって来た沢田とすれ違った。
中谷は、ドアを開けて沢田を中へ招き入れから事務所を出て行った。

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中谷が出て行った後、まり子は沢田に説明した。
今の青年がみゆきさんの婚約者です。
それを聞くと、沢田は恐縮してまり子に頭を下げた。
「私は、嬉しいです。
娘があんないい青年と出会って、新しい生活を築こうとしている。
他に何も望みません。
遺言状は処分して下さい」
沢田は、遺言書作成依頼を取り下げたいとまり子に伝えた。
もう、一生娘には会わない。
それが、自分に出来る精一杯の手向けだ。
沢田にそこ迄言われると、まり子も流石に返す言葉はなかった。

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沢田が帰った後、和美所長は妙なことが気になっていた。
みゆきの婚約者・中谷に、前に何処かで会った覚えがある。
一体何処で会った誰だったのか?
高い記憶力を誇る弁護士の和美所長であったが、
それが中々思い出せずにいた。

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迫法律事務所から出て来た沢田は、
先ほどの青年・中谷の車がエンストを起こして立往生しているのを見掛けた。
「どうかしたんですか?」
沢田は、中谷に声を掛けて車に歩み寄った。
沢田の町工場は、精密機械メーカーだった。
多少の機械なら心得が有る。
沢田がボンネットを開けて少し中をいじると、すぐにエンジンが掛かり始めた。
中谷は、笑顔で沢田に礼を言った。
沢田は改めて思った。
礼儀正しい好青年だ。
この青年なら、娘をきっと幸せにしてくれる。
中谷に名前を尋ねられた沢田は、名乗る程のことでもないからとその場を誤魔化すのだった。

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翌日、まり子は路地で中谷を発見した。
その場所は、かつて沢田が借金取りを殺害した事件現場であった。
中谷は、そこで頭を垂れて何かに祈っている様子だ。
それを見たまり子は、慌てて迫法律事務所に引き返した。
何故、中谷があそこに居たのか。
ひょっとして、沢田のことがバレてしまったのではないか。
もしそうなら、みゆきの結婚が破談になってしまう。
まり子が狼狽えて和美所長に相談すると、和美所長はまり子に意外なことを命じた。
「みゆきさんの婚約者が沢田さんのことを知ったのは、恐らくまり子先生のせいじゃないと思う。
出来る限り早く中谷さんの身元を調べて下さい。
もし、あたしの記憶が正しければ……急がなくちゃ」

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まり子は、早速中谷の身元を洗った。
その結果、意外な経歴が浮上した。
中谷賢一は、中学時代に両親を亡くして母方の叔父の養子となった。
元の名前は、関根賢一という。
その後中谷は苦学して夜間大学を卒業し、現在は病院事務職に就いている。
そこで患者の娘だったみゆきと交際が始まり、今では結婚を目前に控えている。
中谷が父を失った理由。
それは、路上で事件に巻き込まれたからであった。
男がゴルフクラブで人を滅多打ちにしているのを目撃し、
止めに入って巻き添えを食ったのだ。
その男の名が沢田泰雄。
そう、遺言書作成の依頼者である沢田だ。
つまり、中谷は沢田が殺した被害者の息子であった。
そんな中谷が、もうすぐ沢田の娘・みゆきと結婚しようとしている。
殺人事件被害者の息子・中谷と、加害者の娘・みゆき。
2人の出会いは偶然なのだろうか?
そして、2人は互いの素性を知っているのだろうか?

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まり子の報告を受けた和美所長は、悪い予感が的中したと唇を噛んだ。
和美所長と中谷とは確かに会ったことがあった。
14年前、未だ中学生で苗字も違う被害者遺族だった中谷少年と。
和美所長は、沢田に無期懲役の判決が出た後に中谷少年に怒鳴り付けられたのを覚えていた。
「どうしてだ?どうしてだよ?何であいつが死刑にならないんだ?
僕の親父はあいつに殺されたんだぞ。
僕のお父さんは何も悪いことをしてないのに殺されたんだぞ。
弁護士なんて嘘付きだ。
法律が裁かないなら、俺が裁いてやる。俺が代りに殺してやる。殺してやる!」
あの少年の怒声が今も脳裏にこだまする。
あれだけの怒りが、今になって収まっているとは考えられない。
きっと、今も恨んでいるに違いない。
中谷は、みゆきの素性を知りつつ意図的に近付いたのか?
それとも、出会いは奇跡的な偶然で中谷はみゆきの素性を知らないのか?
ここ迄事件に関わった以上、まり子たちは真相を確かめる必要に迫られていた。

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その晩、まり子は沢田を自宅の応接間に招いた。
まり子が言いにくそうにしているのを見て取ると、沢田の方から口火を切った。
「娘に何かあったんですか?もしかして、相手の方に私のことが知れてしまったんでしょうか?」
「いいえ、みゆきさんの婚約者は……中谷賢一さんは、初めから沢田さんの事件のことは御存知です」
「初めから?」
「中谷さんは、あなたが殺害した関根マサルさんの息子さん、賢一さんです」
「あの人が……関根さんの息子……関根さん……
娘は……みゆきは知っているんでしょうか?結婚する相手が、私が殺した人の子供だと」
「分かりません。私達にも未だ分からないんです。
ただ判っているのは、14年前あなたが起こした事件の被害者の息子さんとみゆきさんが結婚しようとしていることだけです。
沢田さん、私が明日中谷さんに会って真実を確かめます。
それがどんな形の真実であれ、みゆきさんには本当のことを伝えなければならないと思います。私がお伝えします」
「先生、私が……私が話します」

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翌日、沢田はみゆきに会いに行った。
14年振りの娘との再会だった。
沢田は、まず頭を下げて娘に謝った。
みゆきは、複雑そうな表情で父に背中を向けた。
「どうして来たんですか?会いたくないって手紙を送ったじゃないですか」
「それは……話さなければならないことがある」
「言い訳なんか聞きたくありません」
「言い訳なんかするつもりはない。お前に話さなければなさないんだ。
お父さんが自分で、話さなければならないんだ」
沢田は、みゆきに打ち明けた。
中谷が、自分が殺害した関根マサル氏の息子であることを。
それを聞くと、みゆきはショックで凍り付いた。
「嘘……嘘でしょ?どうしてそんな酷い嘘つくの?
賢一さんが被害者の……そんな……彼は知っててあたしに……
犯人の娘だと知ってて近付いたの?復讐のために?
嘘だったの?優しくしてくれたのも、一生大事にするって言ってくれたのも、
みんなあたしを騙して傷付けるために?」

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その頃、まり子は中谷を迫法律事務所に招いて詳しい話を聞いていた。
まずは、中谷が父を亡くした事件のことを尋ねてみた。
14年前、中谷の父は路上で大暴れする男を止めに入って犠牲になった。
その男は裁判の結果無期懲役の判決を受け、死刑を望んでいた中谷は弁護人を怒鳴り付けた。
辛い事件のため、まり子は慎重な言い回しで中谷に質問した。
「その裁判で被告人の国選弁護をしたのは私の母です。御存知ですね?
母は、あなたが最後に死刑にならなければ自分で犯人を裁くと言ったのを覚えていました。
あなたがあの事件の遺族であることを、みゆきさんは知りませんね?」
「ええ、話していません。法律に違反しますか?」
「あなたのお父さんを殺害した犯人の名前を覚えていますか?」
「忘れる筈がありません。沢田泰雄です」
「では、もう一つ聞かせて下さい。
あなたはみゆきさんに離婚したお父さんが居ることを御存知ですね?」
「勿論知っています」
「その名前を知ってますか?」
「沢田です。沢田泰雄です」
中谷は、何時に無く挑戦的な表情でまり子を睨み付けた。
何もかも知っているようだ。
では、みゆきとの出会いは意図的だったのか?
偶然知り合った後からみゆきの身元に気付いたのか?
まり子がそう問い質すと、中谷は平然と答えた。
「勿論、最初から知ってましたよ。
僕は父を殺した沢田泰雄の娘だと知ってたから彼女に近付いたんです。
憎んでも憎み足りない相手ですからね。
僕は決心しました。
沢田が刑務所に入っている間に娘と結婚してやろう。
そして、沢田が仮釈放で出所したらお父さんお帰りなさいと迎えてやろう。
娘の愛する夫の正体を知った時、沢田がどんな顔をするか。
そして、あいつの最も大切な娘がどれ程傷付くか。
これ以上の復讐はありませんからね」
「それが、あなたの裁きですか?」
「そうです。だから沢田にも近付いた。娘を愛する優しい婚約者として。
あの男は僕の顔を見ても全く気付きもしなかった。
自分が殺した人間の遺族の顔を覚えてもいなかった」
「嘘です」
「嘘?」
「あなたが、復讐のためにみゆきさんと結婚しようとしたなんて嘘です。
あなたはみゆきさんを愛しているから一緒に居たいと思ったんでしょ?」
まり子は覚えていた。
初めてみゆきのアパートに行った時、
中谷は見知らぬまり子を警戒して咄嗟に自分の体を盾にしてみゆきの前に出た。
一瞬のことだったが、まり子は見逃さなかった。
あれは、みゆきを守ろうという本能的な動きだった。
この人は、言葉とは裏腹にみゆきを愛している。
まり子の指摘に、中谷は淡々と答え続けた。
「まさか。彼女は僕の父を殺した犯人の娘なんですよ」
「最初はそうだったかもしれない。
でも、あなたはみゆきさんを愛するようになった」
「冗談じゃない。僕はどうしても許せなかった。
人を殺した人間がどうして死刑にならないのか。
何で情状酌量なんてものがあるのか。
僕の父は、何の理由もなくある日突然命を奪われたんだ」

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まり子と中谷が話し込んでいる中、突然ドアをノックする音が鳴り響いた。
やって来たのは沢田であった。
沢田は、中谷の前へ歩み寄ると額を地面に擦り付けて土下座した。
中谷は冷たい視線でそれを見下ろした。
「何ですか、それ?何をしてるんですか?」
「申し訳ありませんでした。大切な、大切なお父様の命を奪って本当に申し訳ありませんでした。
人様の命を奪った私がこの世に命永らえて、本当に、本当に申し訳ありません」
「許せると思ってるんですか?」
「私のことを許して下さいとは申しません。
ですが、どうかみゆきのことは恨まんでやって下さい。
みゆきは、あなたのことを愛しております。
どうか、憎まんでやって下さい」
「やっぱり刑務所に入っても、結局治らないんですね。
借金を取り立てられた位で、止めに入った人間まで殺してしまう身勝手な考え方は。
そうでしょ?だって、僕は父に心配して貰えることは一生ないんです」
「私も一生みゆきには会いません。妻にも会いません。
一生電話も手紙も書きません。私にはこれしか償いの方法がありません。
どうか、これ以上娘を傷付けんでやって下さい。
あなたがみゆきと一緒に過ごした日々が、全て復讐のためではなかったと言ってやって下さい。
ほんの一握りでもいい。愛情あったと言ってやって下さい。お願いします」

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沢田が迫法律事務所を出て行った後、まり子は中谷に再度訴えた。
「1つだけ言わせて下さい。
罪を犯したのは沢田さんです。みゆきさんじゃありません」
「それを言うなら僕の母はどうなるんです?
父の死がショックで病気になり、寂しく死んでいった。
そして、僕は家族を失くした。たった1人になったんです」
中谷は氷のような表情でまり子に言い返した。
そんな時、迫法律事務所に慌ただしく誰かが駆け込んで来た。
みゆきであった。
みゆきは中谷と目が合うと、表情を強張らせた。
みゆきは、父の行方を捜しているらしい。
つい先程、みゆきに遺言書を渡して思い詰めた表情で立ち去ったという。
それを聞いたまり子は、沢田の言葉を思い返した。
「私も一生みゆきには会いません。
私にはこれしか償いの方法がありません」
もしかして、沢田は自殺して償おうとしているのではないか。
まり子とみゆきは、沢田の行方を探しに事務所を飛び出した。

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まり子は、みゆきと共に沢田を捜した。
沢田が自分の死に場所に選ぶ場所は、
恐らくかつて工場を経営していた蒲田に違いない。
まり子とみゆきは、夜の街を走って沢田を探し回った。
間もなく、沢田は見つかった。
橋の欄干から身を投げようとしているところだった。
まり子たちが駆け付けると、沢田は2人に向き直った。
「他に方法はないんです。中谷さんもきっと納得してくれます」
その瞬間、あらぬ方向から沢田に声が飛んだ。
「納得なんてしない」
中谷であった。
中谷は、沢田の元に静かに歩み寄って来た。
まり子は沢田を懸命に説得した。
「沢田さんが死んでしまったら、誰があの事件の償いをするの?
沢田さんが生きて、辛くても生き続けて、中谷さんの幸せを願って、
奥さんやみゆきさんを愛し続けることが、それが本当の償いなんじゃないの?」
沢田は、震える声で反論した。
「本当の償いは死ぬ以外にないんです。
刑務所に居た時には、償っているような気になっていました。
務め上げれば、私が殺めた人たちへの償いになると。
でも、出てみたら何も償えていなかった。
やはり、人を殺した者は命をもって償うしかないんです」
それを聞いた中谷は、沢田に飛び掛って殴り飛ばした。
「あなたはこうやって人に殴られることが出来る。罵られることも出来る。
刑務所から出て仕事を探すことも出来る。
なのに僕の親父は、僕の大好きだった親父はもう何も出来ない。
理由も何もない。それが死ぬということなんだ!
あなたは、結局人が死ぬということがどんなに重いことか判っていない。
だから、人を殺し自分をも殺そうとするんだ!」
中谷は、沢田に馬乗りになって殴り続けた。
まり子たちがオロオロしながら見守っていると、沢田の元妻・文子が駆け付けてその場に土下座した。
「止めて下さい。止めて。御免なさい。御免なさい。
主人のしたことは私も償いますから、だからどうか」
みゆきも、泣きながらその場に土下座していた。
母娘が並んで土下座する姿を前にして、中谷もまた泣いていた。
「何で苦しんだ。苦しめるつもりだったのに。
あんた達を苦しめてやるつもりだったのに、何で俺が苦しんだ?」
中谷は、沢田を離して怒鳴り付けた。
「死ぬことなんか許さない。ずっと生きて、生き抜いて貰う。それが償いだ!」

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『沢田さんの本当の償いが始まりました。
生きていくことは苦しい。
でも、その苦しさを乗り越える力を人は持っている。
人の命を奪った沢田さんにそのことを教えてくれたのは、被害者の遺族であった中谷さんでした。
人は一人では生きられません。
例え、それがどんな絆であろうと誰かと共に生きることが私達の幸せなのかもしれません』

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まり子は、その後みゆきと中谷が婚約を解消したことを風の便りに知った。
2人はこのまま別れてしまうのか。
それとも、また一からやり直すのか。
まり子には分からなかった。
沢田の方は縫製工場の職に就いたと聞く。
恐らく、今も被害者の冥福を祈りながら作業に追われていることだろう。
いつか、分かり合える時が来て欲しい。
まり子は、心の中でそれを祈らずにはいられなかった。

斉藤慶子、大地康雄:弁護士迫まり子の遺言作成ファイル④ 再会 [テレビ大阪] 2012年01月26日 13時00時00秒(木曜日)

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テーマ:ドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ



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