色々鑑賞録
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ベルナのしっぽ
白石美帆主演のヒューマン映画。

全盲女性が盲導犬をパートナーに得て、
世間の差別や偏見を乗り越えて人生を切り開いてゆくというお話。

実際の全盲者が原作なので内容は主題にストレート。
映画版スタッフも、変に奇を衒わずにそのままの描写に徹している。
デリケートな題材なので、話として変に作り込むよりも、
こうしてそのまま描く方が気持ちがダイレクトに伝わって来る。
良質なドラマに仕上がっているので、
興味のある人は是非御覧下さい。

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CinemaTopics
allcinema
MovieWalker
Wikipedia
Go! 盲導犬!
盲導犬~未来につなぐ 七色物語~
**盲導犬**

<作品データ>
脚本:鈴木智
監督:山口晃二
配給:シネカノン
公開:2006年

<出演>
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元永しずく:白石美帆

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元永隆一:田辺誠一

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塚田俊子:市毛良枝

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伊藤啓子:板谷由夏

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鈴木美樹子:根岸季衣

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稲垣道雄:北見敏之

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樫山徹:螢雪次朗

<ストーリー>
※昭和末から平成初頭にかけての
未だ盲導犬に理解が無かった時代のお話です。

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全盲女性・元永しずく(白石美帆)は、盲導犬協会から盲導犬・ベルナを譲り受けた。
実のところ、しずくは犬が嫌いだった。
それでも、敢えて盲導犬を引き取ったのは理由があった。
しずくは、全盲の夫・元永隆一(田辺誠一)と団地の2人暮しだ。
全盲の夫婦でも、健常者と同じように生活がしたい。
それがしずくの信念だった。
身の回りのことは、全部自分たちで片付けた。
そして、健常者と同じように外出出来るようになりたい。
その為選んだパートナーが、盲導犬のベルナだった。
協会で厳しい訓練を施されたベルナは、しずくにすぐに懐いた。
かつての犬嫌いは何処へやら、しずくもベルナのことが大好きになっていった。

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しずくと隆一の夫婦には、間もなく子供が出来る予定だ。
しずくの母・塚田俊子(市毛良枝)は、子供を作ることに反対だった。
全盲の夫婦が子供を育てる等、とてもじゃないが出来ることではない。
万が一があったらどうするのか。
子供にどう責任を取るつもりか。
母は、そう言って反対した。
母自身、娘が全盲になったことに強い責任を感じていた。
しずくが全盲になったのは、病気が原因で誰のせいでもない。
それでも、母はずっと自分を責めていた。
同じ思いを娘に負わせたくない。
その思いからの反対だった。
だが、しずくは母の反対を押し切って子供を作るつもりだ。
健常者と同じ生活をしたい。
絶対に譲れないしずくの信念であった。

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ベルナの導きで、しずくは自由に外出出来るようになった。
だが、それはまだ公道だけだ。
喫茶店やレストランに入ると、犬を理由に必ず追い出された。
どの店に入ってもどう説明しても、同じことの繰り返しだ。

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いい加減、しずくは意地になって来た。
「絶対レストランに入ってやる」
しずくは、予めベルナを念入りにブラッシングした。
服まで着せて万全を期した。
毛が飛ぶという口実で追い出されないようにするためだ。
そして、敢えてベルナと共に区役所のレストランへ入った。
ウェイターは当然のように犬の入店に難色を示した。
「お客様、困ります。犬の入店はお断りしてますので」
「ただの犬じゃありません。盲導犬です」
「盲導犬と言っても、他のお客様の迷惑になりますから」
「お客を選ぶんですか?」
「犬は外に繋いで頂きたいんです」
「この子は私の目なんです。一緒に居るのが自然なんです」
「そうは言っても……」
「ここは区役所に入っているレストランでしょ?
うちもちゃんと税金払ってます。
店長さん呼んで下さい。総務課の人も」
譲るつもりはなかった。
しずくの迫力に圧されたのか、ウェイターは戸惑いながら引き下がった。
レストランで食事を摂る。
当り前のことを当り前にする。
それがしずくの信念だ。
少しして、注文したハンバーグが来た。
しずくは満足して口を付けるのだった。

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しずくとベルナの道は険しい。
レストランの一件など、まだ序の口だった。
ある朝、しずくは踏切を横切ろうとして異変に気付いた。
ベルナの様子がおかしい。
前進を命じているのに足取りが覚束無い。
しずくはベルナを触って確かめた。
腹から血を流して、焦げ臭いニオイがする。
「ベルナ、どうしたのこれ?」
事情が分からず混乱するしずくに、側に居た老婦人が声を掛けた。
「男の人が、タバコの火を横腹に押し付けてたのよ。
このワンちゃん、じっと我慢してたのね。
御免なさいね、何もしてあげられなくて」
盲導犬のベルナは、どんな理不尽があっても任務をやり遂げるよう訓練されている。
こんな酷い目に遭っても、反撃も逃げもせずに黙って耐えていたのだ。
帰宅後、しずくは目に涙を溜めながらベルナに薬を塗った。
「ベルナ、染みるかもしれないけど我慢してね。大丈夫よ」

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やがて、しずくと隆一の夫婦に子供が出来た。
男の子なので、父の名を取って隆太と名付けた。
立派に育って欲しい。
幸いにして、隆太は目の見える子だ。
成長したら見せてやりたい。
しずくが目を悪くする前に描いた絵画を。
今はただ壁に飾っているだけだが、いつか成長した隆太が見てくれるに違いない。
しずくと隆一は、赤ん坊の世話に負われながら夢を膨らませていった。

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一方、赤ん坊が来て以来丸で面白くないのがベルナだった。
ベルナには感情がある。
主人の愛情を赤ん坊に奪われると、激しく嫉妬にも駆られるのだ。
ベルナは、わざと人間用寝床に寝転んで主人の気を引いてみた。
ベルナに出来る精一杯の抵抗だった。

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そんなある日のこと。
料理中だったしずくのエプロンをベルナが引いた。
「どうしたの?御飯まだだよ」
ベルナが戯れている。
しずくは最初そう思った。
しかし、ベルナは唸りながら裾を咥えて離そうとしない。
何か大事なことを訴えている。
異変に気付いたしずくは、寝かし付けておいた隆太を確かめた。
居ない、隆太が居ない。
しずくは手探りで隆太を探した。
隆太は、はいはいでベランダに出ようとしているところだった。
しずくは何とか隆太を捕まえてそれを食い止めた。
「ベルナありがとう」
ベルナはやっぱりベルナだった。
家族の危機を見逃すことなど出来ないのだ。

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健常者と同じ生活をしたい。
そう信念を持つしずくだったが、どう頑張ってもやはり人間だ。
24時間子供に注意を払い続けることは出来ない。
しずくは、友人・伊藤啓子(板谷由夏)の勧めで保育園を探すことにした。
ところが、これまた犬がネックになった。
どの園に行っても犬を理由に断られてしまう。
しずくは、園長・樫山徹(螢雪次朗)と直に話し合った。
樫山園長は中々首を縦に振ってくれなかった。
「でもね、元永さん。
犬を嫌いな子供やお母さんも居るでしょ。
この犬は大人しそうですけど、もし子供達に棒で叩かれたりしたらどうなります?」
何より子供の身を危惧する樫山園長に、しずくは懸命に説明した。
盲導犬は訓練された犬なので、絶対に人間に危害を及ぼさない。
心ない人間にタバコの火を押し付けられても、ずっと耐え続けた。
その経験を踏まえ、しずくは最後にこう結んだ。
「先生、もし何の抵抗もしない大人しい犬を棒で叩くような子が居たら、
そっちの方が問題なんじゃないですか?
そんなことしちゃいけないって教育するのが、先生達の役目なんじゃないですか?」

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しずくの熱い説得は実を結んだ。
隆太の通園も、ベルナを伴っての送り迎えも許可が降りたのだ。

やがて、隆太は4歳になっていた。
そんなある日のこと。
隆太は保育園から帰宅後、泣きながら怒りだした。
「目の見えないお母さんなんか嫌いだ。ベルナちゃんも嫌いだ」
園児たちに何か言われたのだろうか。
間もなく、鍼灸師をしている父・隆一が帰宅した。
あれから隆太は母に口を利こうとしない。
そんな隆太を、父は肩を抱いて諭した。
「お父さんもお母さんも目が見えない。
でもな、何でも見えるんだ。
隆太のこと、何でも見てるんだぞ。
世の中にはな、目に見えないことだって沢山あるんだ。
目に見えることだけが本物とは限らないんだぞ。
いいか、隆太。
目を閉じて心の目で見てごらん。
色んなものが見えるから」
隆太は、言われた通りに目を閉じた。
部屋一杯のビーフシチューの匂いがした。
母が隆太のために作ってくれたビーフシチューだ。
「お母さんな、お前の気持ち何でも分っているんだよ」
父に言われて、隆太の心に小明が灯った。
幼い隆太に、とても大事な何かが育まれようとしていた。

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子供を持つと、月日の経つのはあっという間だ。
隆太は6歳になり、小学校の入学式がやって来た。
その日、担任教師に促されて隆太は級友たちに母と盲導犬を紹介した。
「僕のお母さんは目が見えません。
だから、いつも盲導犬のベルナちゃんと一緒に歩きます。
ベルナちゃんがお母さんの目になってくれています。
お母さんは目が見えないけれど、何でも見えてます。
お母さんは心の目で僕を育て上げてくれました」
隆太はしずくの願い通り、
いや願い以上に成長していた。
その心は、強く優しく思いやりに満ちている。
母親として、こんなに嬉しいことはなかった。

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ベルナの定期健診の日、
しずくは獣医師(伊藤洋三郎)に思わぬ指摘を受けた。
「白内障が出てますね。そろそろリタイアを考えた方がいいですね。
ベルナは9歳でしょう。
人間で言ったらもうお婆さんなんですね。
新しい家に貰われていって、静かに余生を過ごすのも幸せの一つだと思いますよ」
隆太の成長した歳月は、
ベルナを確実に老いへと向かわせていた。
その後の精密検査で、獣医師はベルナが片目を失明していることを告げた。
「かなり進行してますね。
恐らく、片方の目は見えてませんね。
盲導犬としてはもう限界でしょう」

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帰宅後、しずくは家族会議を開いた。
夫・隆一は、ベルナのためを思うならリタイアさせた方がいいという意見だった。
しずくはそれに同意できなかった。
ベルナは家族だ。
別れたくない。
最期まで一緒に居たい。
対立するしずくと隆一の意見を纏めたのは、息子・隆太の申し出だった。
「大丈夫だよ。
僕がベルナちゃんの目になってあげるから。
そうしたら、ずっと一緒に居られるでしょ」

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その日から、しずくの買物には隆太も付き添うようになった。
しずくを導くのは、これ迄ベルナの役目だった。
何処に段差があって、どっちに進めばいいのか、全部ベルナが教えることになっている。
しかし、隆太も一緒だとそれを先回りされてしまう。
役目を奪われたベルナは、面白くなかった。

ベルナに忍び寄る老いは容赦なかった。
目だけでなく、足も確実に弱っていた。
買物帰りのある日、しずくと隆太はベルナが足から出血していることに気付いた。
何処かにぶつけたのか、足を踏み外したのか、
それでもベルナは足の痛さを隠して頑張っていたのだ。

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もうベルナの外出は危険だ。
そう判断したしずくは、ベルナを家に残して隆太と2人で買物に行くようになった。
誇り高い盲導犬のベルナにとって、これは大変な屈辱だった。
しずくと隆太が買物から帰って来てみると、
ベルナは洗濯物や生ゴミを撒き散らして大暴れしていた。
連れて行って貰えなかったことへの強い抗議だった。

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ベルナに、やり甲斐を見つけたい。
しずくは、ベルナを連れて幼稚園や保育園を回った。
盲導犬のことを少しでも知って欲しい。
子供たちにベルナの話をしたい。
そう考えたのだ。
しかし、どこを回っても受け入れてくれる所は中々見つからなかった。
何十軒回ったろうか。
さすがのしずくも諦めかけていた時に、漸く話を聞いてくれるという保育園が見つかった。

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園に導かれたしずくは、園児達を前に話を始めた。
病気で視力を失ったこと。
盲導犬との出会い。
家族を持とうと思ったこと。

「私は、犬が嫌いでした。
実は、大人になった今でも余り得意ではありません。
幼稚園の頃に、自分の背丈より何倍も大きな犬に襲い掛られて、
犬は怖い動物だという思いが強く焼き付いてしまったんですね。
そんな私ですから、病気で視力を失った時でさえ、盲導犬と一緒に生きていこうということは……」

「とっても赤ちゃんが欲しかったの。
お母さんになって、その子のために一生懸命生きていこう。
一緒に生きていきたいって思ったの。
みんなも同じだよ。
みんなのお父さんお母さんにとって、みんなは生きる力になってるの」

「まだまだ世間は、ハンディを持った人のことを正しく理解していない人も居ると思います。
でも、それ以上に沢山の人々が私を支えてくれました」

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また年月が過ぎた。
しずくの講演活動は着実に実を結んでいた。
今では多くの保育園や教会で話を聞いて貰えるようになった。
盲導犬への理解は深まっている。

しかし、ベルナの体力は日に日に衰えていた。
診察の日、獣医師はベルナの余命が短いことをしずくに告げた。
腹部に腫瘍が出来て、もう手術しても助からないという。
ベルナは、もうヨレヨレだった。
自力で階段を降りることも出来ない。
しずくは、ベルナを抱えてやっとのことで階段を降りるようになっていた。

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しずくとベルナは、保育園に最後の講演に行った。
園児達を前に、しずくはベルナへの率直な思いを話した。
「この子に出会えなかったら、私は家に閉じ籠もったまま立ち直ることが出来なかったでしょう。
この子は私に新しい世界を与えてくれました。
ベルナ、本当にありがとう」

講演活動を遂えた後、ベルナは1週間寝込んで息を引き取った。
最期まで、誇り高い盲導犬の一生を全うして。

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それから暫くして、しずくの夫・隆一も体を壊して亡くなった。
隆一は体調不良を家族にずっと隠し続けていた。
気丈に生きて来たしずくであったが、
立て続けに大事な存在を2つも失うと流石に堪えた。
夫の葬儀の日、しずくは母と抱き合って思い切り泣いた。
母とは対立して来た。
しかし、こんな時にしずくを受け止めてくれる人は母以外に居なかった。

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数日後、しずくは新たな盲導犬を譲り受けた。
新しい盲導犬は、ガーランドというメスのラブラドールだ。
ベルナに負けない立派な盲導犬になってくれるだろう。

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しずくは、夫の鍼灸院を再開した。
免許も取得してある。
これから、隆太とガーランドと一緒に力強く生きていくつもりだ。
鍼灸院には、夫の匂いが残っていた。
だが、しずくは敢えて窓を全開にしてその未練を振り切った。
「頑張ろう。頑張ろうね」
しずくと隆太は、ガーランドの頭に手を載せて再出発を誓い合うのだった。

白石美帆、田辺誠一:「ベルナのしっぽ」 [KBS京都] 2012年05月05日 19時00時00秒(土曜日)

<白石美帆:関連作品>

テーマ:邦画 - ジャンル:映画

雁の寺3(最終)
<その1>
<その2>

※ネタバレ注意
<その3>
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慈念が久間家の回向に出た翌日、
寺に平吉がやって来た。
「実は、今朝早う兄貴ポッコリ逝きよりましてん」
兄が亡くなったので、葬式を手配して欲しいということだった。
応対した慈念は、
「慈海和尚は今留守なので帰り次第伝えておく」と答えて平吉を帰した。

慈海和尚は、昨日知り合いの寺へ遊びに行ったきり未だ帰っていない。
無断外泊など前代未聞だ。
心配になった里子は、慈念に連れ戻すよう頼んだ。
何せ、里子の運命は慈海和尚に掛っているので、
居なくなると困るのだ。

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慈念は、里子に急かされるまま知り合いの寺を訪ねた。
この寺の住職・藤本雪州(山茶花究)は、慈海和尚とは懇意の仲だ。
慈念の話を聞いた雪州和尚は、呆れ顔で答えた。
「君んちの和尚さんは、昨夜8時頃帰ったよ。
久し振りにハシゴして、何処ぞでヘタってるのと違うか」
慈念は、困り果てて雪州和尚に相談した。
「檀家のお方が死なはりまして、明日葬式出してくれっちゅうて来はりましたんで。
お通夜も寺でせんなりまへんし」
事情を飲み込んだ雪州和尚は、慈念に答えた。
読経は僕がしてあげるから、君は帰って葬式の準備をしなさいと。

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その夜、寺で久間家の通夜が執り行われた。
慈海和尚は、結局帰らなかった。
その為、雪州和尚が読経を代役して進められた。

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久間家親族が寝静まった深夜、
里子は妙な物音を聞いて布団から身を起こした。
何か、ギシギシ木が軋む音が聞こえる。
本堂では、夜中も慈念の読経が続いている。
それとは別の音だ。
気になった里子は、本堂へ確かめに行ってみた。
「慈念はん、今何や音がしてたけど。
和尚さんが帰って来はったんと違うか?」
里子が問掛けても、答えはなかった。
慈念は、真っ暗闇の中で一心不乱に読経を上げ続けていた。

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翌日、雪州和尚による最後の読経が終った。
慈念は、平吉に指示を出した。
「間もなくご出棺で御座いますが、
お棺は昨日お担ぎやしたお方とは別のお方に担いで貰います」
何か作法でもあるのだろうか。
平吉は、慈念に一つ頼み事をした。
遅れてやって来た叔父に、故人の顔を見せてやって欲しいと。
慈念は段取りに追われているのか、その願いを退けた。
「お気の毒ですが、もう時間が御座いません」

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お棺を担ぎ上げるよう言われた久間家親族は、
余りの重さに驚きの声を上げた。
「重たい仏さんやないか」
「わい、こんな重たい仏はん初めてやわ」
「何でこないに重たいんねんやろな」
「平三郎はん、図体小っちゃい筈やのにな」
やっとのことで担ぎ上げると、
久間家親族は葬列を作って墓地へ向った。

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お棺を収める墓地は、寺から歩いて数分の場所にある。
雪州和尚の読経が響き渡る中、お棺は墓穴に収められた。
久間家親族は作法に則ってお棺に土を掛け、故人の冥福を祈るのだった。

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数日後、寺に僧侶たちが集められた。
慈海和尚の失踪が問題になり、一同で対応策を協議するためだ。
弟子の慈念が言うには、前々から旅に出たいと漏らしていたらしい。
とは言え、何の連絡も無しに姿を消すのは不可解だ。
僧侶たちが警察に届けようかと心配すると、
一同を取り仕切る武田海翁(南部彰三)が厳しく突き放した。
「放っとけ、放っとけ」
元々、慈海和尚は本山出頭をサボりがちで覚えが目出度くなかったのだ。

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更に数日が経過した。
寺の新任住職は、竺道に決まった。
慈念の中学で教師をしていたあの竺道だ。
元は僧侶のため、留守坊主が務まると本山に判断されたのだ。
着任の日、
竺道が座敷に上がって茶を啜っていると、慈念は思いの丈をぶち撒けた。

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「先生、悟りを開くということはどういうことですか?」
「悟り?何と言うたらいいか、まあ自分を知るということかな」
「自分を?出来ません、そんなこと。
自分っちゅうもんは、一生掛かっても分からんもんやと思います。
先生は自分を産んでくれた人を知ってはりますか?」
「そら、お母さんや。お母さんは大切や」
「そしたら、お父つぁんは?」
「父親も大切だ」
「ほんなら、何で出家するんです?
大事なお父つぁんやお母はんも捨ててまでも」
「迷いの絆を捨て去る為だ」
「そしたら、お母はんを想うことは迷いどすか?
そら矛盾してるわな。
私は、お母はんもお父つぁんも知りまへん。
捨てるのは、お父つぁんもお母はんもあらしまへん。
けども、私はお母はんに会いたい。
お父つぁんが誰やも知りたい。
先生、これも皆迷いどすか?
これが迷いやったら、やっぱり私は坊さんになれやしまへん。
先生は幸せなんです。
先生らが座禅して目を瞑ると、お母はんに育てられたええ日のことばっかりが思い出されますやろ?
けども、私らが目を瞑ったかて雁の鳴く声位しか聞こえやしまへん。
こんな気持ち、先生には分かりまへんやろ?
幸せなんです。私は、そないににしか思えません」

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慈念は、仏壇に目をやって竺道に尋ねた。
「先生、人を殺すいうことはやっぱり悪いことですか?」
「殺す?修行さえ積めば人を殺す必要はない。
殺そうとする心は即ち迷いだ。
悟りを開けば、殺すことも生きることもどちらも虚しい」

竺道は、噛んで含めるように慈念の質問に答えた。
はぐらかした答えは一つもない。
しかし、そこに慈念の求める答えはあったのだろうか?

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竺道との問答を遂えた慈念は、
身支度を整えて寺を出た。
異変を察知した里子は、慈念に縋り付いて引き止めた。

「どうしたんえ?
何処へ行くつもりなんえ?
何もアンタがここを出ることないやないの。
アンタ、ウチとアンタのことを和尚さんに言うたんと違うか?
それでアンタもここを出て行くのやろ?」
慈海和尚が寺を出て、
今また慈念が寺を出ようとしている。
その原因は、あの夜の出来事が原因ではないか。
疑念に駆られた里子は、割れた櫛を突付けて慈念を問詰めた。
「お仏壇の下に落ちてたけど、どうしたんえ?これ。
アンタが告げ口したさけ、ウチの人はここを出ていかはったのやろ?
な、そやろ?」
慈念は、真っ向からそれを否定した。
「私は何も言うてやしまへん。
あんなこと、人に言えることと違います」
里子は、スッカリ困り果てていた。
慈海和尚だけが頼りだ。
この寺を追い出されたら、一体どうすればいいのか。
里子が慈念に行き先を尋ねると、慈念は思い詰めた形相で答えた。
「和尚さんの行かはった所へ旅します」

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それを聞いた里子は、慈念を追い掛けた。
「アンタ、和尚さんの行かはった所知ってるのか?」
慈念は、答えようとしなかった。
無言のまま墓地へ行くと、
先日埋葬した久間家の墓前に向って一心不乱に読経を始めた。
異様な慈念を見て、
里子は先ほどの言葉の意味を漸く理解しようとしていた。
「慈念はん、もしかしてアンタ和尚さんを……」
慈念は読経を中断し、里子に割れた櫛を差し出した。
里子が拾った櫛の、もう片方だ。
それを慈念が持っているということは……

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恐ろしくなった里子は、墓地から寺に逃げ帰った。
息を切らして帰り着いた里子の耳に、何か鳥の声が聞こえた。
「鳴いてるわ。雁が鳴いてる。鳴いてる」
里子は、座敷に上がって声の主を探した。
座敷には雁の描かれた襖絵が無数にある。
その中に確かに居る。
あの声の主が。
一枚一枚確かめて回った里子は、襖絵の中に一つだけ破り取られたものがあることに気付いた。
「居いひん。雁が居いひん。お母ちゃん雁が居いひん」
それは、母子雁を描いた襖絵であった。
その母雁の部分だけが、何者かによって破り取られているのだ。
あの声の主は、母雁だろうか?
それとも、残された子雁だろうか?

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それから数十年が経過した。
京の街は、すっかり変わった。
かつて慈海和尚が住職を務めた寺も、例外ではない。
観光スポットとなったこの寺には、
連日のように修学旅行生や外国人観光客が押し寄せる。
現在の住職・鷹見邦逸(小沢昭一)の仕事は、
専らそんな客たちの案内役であった。
邦逸は寺を紹介しながら、
フラッシュを焚く外国人たちに注意を促した。
「無断で写真撮ったらあきまへん。
絵葉書買うて下さい。売店でうってますさかい」

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売り子の老婆は、
そんな邦逸の言葉を知ってか知らずか、
居眠りの最中だった。

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寺の目玉は、「母子雁」の襖絵だ。
長年破れたまま放置されていたが、
美術評論家の高い評価を得て最近になって修復された。
邦逸は、通訳を介して外国人客にその旨を説明した。

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元の襖絵を破り取ったのは誰なのか?
その行為にどんな意味があったのか?
今となっては、誰にも知る術はなかった。

若尾文子、高見国一:雁の寺_2006年11月29日(水)_[KBS京都]_アナログ

<原作:水上勉>

テーマ:邦画 - ジャンル:映画

雁の寺2
<その1>

<その2>
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ある日、寺に宇田竺道(木村功)という男がやって来た。
竺道は、慈念が通う中学の担任教師だ。
以前は慈海和尚と同じく僧侶であったが、
派閥争いに巻き込まれて僧門を追われたという異色の経歴を持つ。
その竺道が何故寺を訪問したのか。
理由は、慈念の出席日数が足りないことを慈海和尚に報告する為であった。
慈念が中学を度々サボっているなど、慈海和尚にとって寝耳に水だ。
慈海和尚は、慈念を呼んで問詰めた。
サボりの理由が教練だと知ると、慈海和尚は厳しく叱り飛ばした。

「アホ、兵隊ごっこくらい何や。高い月謝払ろて行ってるのやで!」

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竺道が帰った後、里子は大目玉を食らった慈念を気遣って声を掛けた。
慈念は、中々心を開いてくれない。
何を尋ねても、最小限の返事しかしない。
しかし、里子の方は同じ貧しい出自の慈念に強く感情移入していた。
どうして心を閉ざすのか?
里子はその原因が幼少期にあるのではないかと考え、慈念に身の上を尋ねてみた。
「あんた、若狭に居た時に何ぞあったん違うか?」
すると、慈念は火が付いたように怒りだした。

「奥さん、私は坊さんになった人間どす。
村も家も皆捨てて、坊主になった人間どす。
もう、そんなもんの事何も訊かんといて下さい!」

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後日、寺に木田黙堂(西村晃)という僧侶から手紙が届いた。
本山に登る前に、この寺に立ち寄るという便りだった。
この黙堂和尚こそ、慈念を寺に斡旋した人物だ。
里子は思った。
この黙堂和尚に尋ねれば、慈念の生立ちが分かるのではないか。

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数日後、約束通り黙堂和尚が寺にやって来た。
門を潜ろうとしたところで、黙堂和尚は慈念に呼び止められた。
慈念は、黙堂和尚に縋り付いて訴えた。

「和尚さん、お願いどす、ワシの頼み聞いておくれやす。
頼んます。お父つぁんのこともお母はんのことも言わんといておくれやす。
ワシは……ワシは知られとうないんや。
ここの和尚さんにも奥さんにも、誰にも知られとうないんや。
若狭に居た時のこと、何も言わんといて欲しい。
な、和尚さん。頼んます、頼んます。ワシの一生のお願いや。な、和尚さん」

慈念の深刻な形相を見て、黙堂和尚は戸惑いながら約束した。
「んん……そうか、よっしゃよっしゃ」

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その夜、黙堂和尚は座敷に通されて慈海和尚と里子の饗しを受けた。
里子は、頃合いを見て慈海和尚に尋ねた。
慈念の幼少期に何があったのか?
酒の回った黙堂和尚は、口止めされていたにも関わらずつい口を滑らせた。

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慈念は捨子だった。
お菊という瞽女に産み落とされ、阿弥陀堂に捨てられていた。
その後、貧しい寺大工に引き取られたが、
口減らしのためにこうして寺に奉公に出されることになった。
そんな悲しい身の上だ。
元の名前がステキチであることを、慈念は酷く恥じているという。
これを聞き出した里子は、増々慈念に共感を覚えていた。

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一方、このやり取りを立ち聞きした慈念は怒りに震えていた。
あれ程念を押したにも関わらず、黙堂和尚は約束を破った。
やりようのない怒りに駆られた慈念は、庭池の鯉目掛けて包丁を投付けた。

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そんな慈念の脳裏に、家を出された日の出来事が蘇った。
口減らしの為、寺大工の家から寺の奉公に出されたあの日。
出発直前、養母(菅井きん)は慈念に言い聞かせた。
誰に問われても、絶対に出自を明らかにするな。
お前はもう"乞食谷"の住民ではない。
修行を積んで立派な坊さんになりなさい。
そう言って、養母は慈念を寺に送り出した。
慈念は、今日までその教えを忠実に守って来たのだった。

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その日の深夜、慈海和尚が寝静まったのを確認して、
里子は慈念の部屋へ忍び込んだ。
そして、慈念を思い切り抱締めた。

「慈念はん。あんた、可哀想や。
ウチのもん、何でもあげる。みんなあげる」

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南嶽の四十九日が来た。
寺には、南嶽の妻子が法要にやって来た。
慈海和尚は、ここ数日風邪気味だ。
予めそれを聞いていた南嶽の妻子は、慈海和尚へスッポンを差し入れた。
この日は、慈海和尚に代わってその弟子・慈念が読経を執り行った。
慈念は、元々頭のいい子と見込まれて寺に入った。
慈海和尚に厳しく指導されたこともあって、
今ではすっかり僧侶の作法を身に付けている。
南嶽の妻子が帰った後、慈海和尚は慈念に回向を命じた。
檀家の久間家から、読経を頼まれていたのだ。

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慈念は命じられた通り久間家へ赴き、仏間に通されて読経した。
久間家では現在主人が病に臥せている。
読経を遂えた慈念が帰ろうとすると、
主人の弟・久間平吉(伊達三郎)が呼び止めた。
用件は、慈海和尚への伝言であった。
久間家の主人は間もなく亡くなる。
その時は、慈海和尚に葬儀を手配して欲しいという言付けだ。
慈念はそれを承りながら、妙な答えを返した。

「和尚さんは、何や修行に出たい言うてはりましたけど。
何でや知りませんけど、そない言うてはりました」

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慈念は、回向を遂えて寺へ帰った。
出迎えの里子が「ご苦労さん」と労うと、慈念は何故か庭木のトンビに目をやった。

「奥さん、トンビがあそこで何してるか知ってはりますか?
トンビはね、あそこで貯めてますねん。
あの木の天辺に、大きな穴が有りますねん。
暗い壺が有りますねん。
その真っ暗な壺の中に、蛇やら魚やらネズミやらがウジョウジョしてますねん。
それ皆、トンビが地面で足手にした奴を咥えて運んだ物で。
蛇は赤いのも居たし、白いのも。
それらが、黒い泥々した中でグジョグジョ、グジョグジョ……」

気味が悪くなった里子は、「止めて止めて」と言いながらその場から逃げ出した。
慈念は、一体何が言いたいのだろう?

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その夜、体調の回復した慈海和尚は知り合いに招かれて晩酌を交わした。
雨の夜道を千鳥足で寺に帰って来た慈海和尚は、
門を潜ったところで何者かに襲われて意識を失った。

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<その3に続く>

<川島雄三:関連作品>

テーマ:邦画 - ジャンル:映画

雁の寺1
若尾文子主演の文芸映画。

寺で住み込み修行中の小坊主が、
和尚とその愛人の間で自尊心が揺さぶられてゆくというお話。

鬱屈した少年心理が緻密に描写された
川島雄三監督晩年の傑作。



allcinema
MovieWalker
wikipedia
若尾文子スペシャルインタビュー(3):『雁の寺』
いくらおにぎりブログ

<作品データ>
原作:水上勉
脚本:舟橋和郎、川島雄三
撮影:村井博
監督:川島雄三
公開:昭和37年(1962年)
配給:大映

<出演>
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桐原里子:若尾文子

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北見慈海:三島雅夫

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宇田竺道:木村功

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堀之内慈念:高見国一

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岸本南嶽:中村鴈治郎

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藤本雪州:山茶花究

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桐原たつ:万代峯子

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藤本ますみ:加茂良子

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鷹見邦逸:小沢昭一

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木田黙堂:西村晃

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堀之内かん:菅井きん

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千石喜七:石原須摩男、久間平吉:伊達三郎

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笹井南窓:木村玄、岸本秀子:金剛麗子

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久間平三郎:藤川準

<ストーリー>
京都のさる寺に、母子雁を描いた美しい襖絵があった。
この襖絵を描いたのは、高名な画家・岸本南嶽(中村鴈治郎)である。
南嶽は、この寺の檀家であった。
寺の和尚・北見慈海(三島雅夫)とは親しい仲にある。
慈海和尚に頼まれると、面倒だからと断る訳にもいかなかった。
南嶽は、高齢の身を押して襖絵を描いた。
漸く仕上げて寺に収める日、南嶽は襖絵を見ながら自嘲した。
「儂が死んだら、ここは差し詰め"雁の寺"や。
洛北に一つ名所が増える」

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それから暫く後。
南嶽は、体調を崩して床に臥せた。
死期が近いと悟った南嶽は、病床に慈海和尚を呼んだ。
そして、ある遺言を託した。

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やがて、南嶽は亡くなりその初七日が来た。
その日、慈海和尚の寺に桐原里子(若尾文子)という妙齢の婦人がやって来た。
南嶽の遺言とは、生前囲っていた妾の始末であった。
その妾というのが、この里子なのだ。
慈海和尚に妻はない。
住込みの小坊主・堀之内慈念(高見國一)と男の2人暮しだ。
慈海和尚は、身の回りの世話を全てこの慈念にさせた。
それも殊更キツい態度だった。
些細な理由で叱責を繰り返し、これも修行と辛く当たった。
初めてこの寺を訪問した里子は、2人のやり取りを見て思わず漏らした。
「キツう叱らはんのどすな。あない叱らんかてええのに」
女の肌が恋しい慈海和尚は、里子を奥に上げると早速首筋に顔を寄せて匂いを嗅いだ。
そして、酒を振る舞って里子を酔わせると、抱着いて強引に体を求めた。
「ワシなあ、南嶽から頼まれたんや。
あんたの面倒見てくれ言うたんや。
あの男、ワシがあんた好いてるっちゅうことを知ってたんや。
どや、あんた聞いてくれるか。
どや、聞いてくれるな」
里子もこうなることは薄々察していたのか、
一応拒みながらも結局は流れに身を任せるのだった。

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南嶽を失った里子にとって、慈海和尚は渡りに船だった。
実家は酷く貧しい。
父は既に亡く、母も薬の行商でやっと暮している有り様だ。
とても面倒を見て貰える余力はない。
その日から、里子は慈海和尚の愛人として寺に転がり込むことになるのだった。

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一方、小坊主の慈念は、寺で寝泊まりしながら中学校に通う毎日を送っていた。
学費は慈海和尚の負担だ。
衣食住の上に学費まで負担して貰っているので、
慈念は慈海和尚に頭が上がらない。
寺の生活でどんなに怒鳴り散らされても、反抗する気は起きなかった。
しかし、中学校に通うのは慈念にとって苦痛だった。
勉強が嫌いな訳ではない。
教練が嫌なのだ。
体力のない慈念は、重い鉄砲を担いで行進するのが苦痛だった。
ボロボロの靴を履き潰して、来る日も来る日もしごかれる。
ケチンボの慈海和尚に新しい靴を買って欲しいと言い出すことも出来ず、
慈念はとうとう教練のある日は学校をサボるようになっていた。

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里子を住まわせるようになって以来、慈海和尚の毎日は薔薇色だった。
ダブルベッドを購入して準備万端に整え、
毎晩のように里子を求めた。
当の里子は、夜以外はすることがない。
炊事、洗濯、風呂焚きに至るまで、身の回りの世話は全て慈念がしてくれる。
別に何に困るでもないが、退屈を持て余すようになっていた。

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ある日、里子は慈海和尚に慈念の出自を尋ねてみた。
慈海和尚によると、慈念は若狭の寺大工の子だという。
貧しい家のため、この寺を追い出されると行く所がない。
だから、どんなにキツくしてもここに居られるだけ天国なのだという。
それを聞いた里子は、慈念の境遇を我が身に重ねた。
私と同じだ。

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慈海和尚が留守の昼下がり。
里子は、せっせと庭掃除をする慈念を呼び止めて菓子を持たせた。
「ひもじいこっちゃろ。これ、全部食べても構へんのえ」
慈念が御礼を言ってまた庭掃除に戻ると、
里子はそれとなく自分の身の上を打ち明けた。
同じ貧しい家の出で、ここを追い出されたら帰るところもない。
しかし、女の自分と違ってあなたには将来がある。
修行を積めば立派なお坊さんになれるのだから、今は辛抱するのよ。
そう言って、里子は慈念を励ました。
話に夢中になったせいか、里子はつい縁石で足を踏み外した。
着物の裾が肌蹴て慈念に足を見られると、里子は妙な恥ずかしさを覚えた。
自分の話を一通り遂えた里子は、今度は慈念に身の上を尋ねた。
「慈念はん、あんたステキチさんって言うんたんかいな。
面白い名前や思てたけど、若狭のお父さんが付けはったん?
ステキチっちゅう名……」
その話題になると、中途であるにも関わらず慈念は突然逃げ出した。
里子には、理由が分からなかった。
ステキチという名前に、何か負い目でもあるのだろうか?

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このところ、慈念は腕に縄を結んで床に就く。
僧侶の生活は朝が早い。
寝坊は厳禁だ。
にも関わらず、慈念は一度寝坊して朝の務めに遅れたことがあった。
慈海和尚はそれ以来慈念の腕を長縄で結び、自分の寝室に引き込むことにした。
夜の写経の時間に居眠りしていないか、
朝の務めの時間に寝過ごさないか、
時々縄を引っ張って慈念が起きているか確かめるためだ。
縄を引く合図が来ると、慈念はすぐに慈海和尚の部屋へ用件を聞きに行く。
馬鹿馬鹿しくも合理的な仕組みであった。

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深夜、慈念は合図が来たので慈海和尚の寝室へ駆け付けた。
「和尚さん、お呼びどすか?」
慈海和尚は、慌てて慈念を追い払った。
「寝惚けたらあかんがな。呼んでへん、何も呼んでへんがな。ええから戻って早よ寝え」
これは、合図ではなかった。
寝返りを打った里子が、足を引っ掛けただけだ。
当然ながら、里子は慈海和尚と同じ寝室で寝る。
慈念が帰った後、里子は肌蹴た着物を直しながらその視線を思い返した。
「また見られた、ウチ」

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<その2に続く>

<若尾文子:関連作品>

テーマ:邦画 - ジャンル:映画

若さま侍捕物帖
大川橋蔵主演の時代劇シリーズ8作目。

将軍お毒味役が変死する事件が発生する。
それを受けて将軍家への納入業者であった造酒屋には取り潰しの処分が下される。
見に覚えのない処分を下された造酒屋の主人は、体を壊して亡くなってしまう。
造酒屋の娘は父の無念を晴らそうと、
この陰謀を仕組んだ一味への復讐を誓っていた。
そこにフラリと謎の若侍が現れ、
事件の黒幕を調べ上げて真相を突き止めるというお話。

前作「紅鶴屋敷」が怪奇描写の多いミステリー映画だったのに対して、
本作は謎解きを頭から放棄した勧善懲悪になっている。
悪役は、時代劇の定番である私腹を肥やす商人とお役人。
ロケの多かった前作に対して、本作はほぼ全編がセット撮影になっていて画作りも対照的。
女優の歌と踊りが随所に入る、東映らしい華やかな仕上がり。

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若さま侍捕物帖
映画.com
allcinema
若さま侍捕物帖

<作品データ>
脚本:結束信二
監督:佐々木康
公開:昭和35年(1960年)
配給:東映

<出演>
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若さま:大川橋蔵

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唐金屋総右衛門:三島雅夫、鈴木妥女:山形勲

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月美香:藤田佳子

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奈美:岡田ゆり子

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遠州屋小吉:本郷秀雄、佐々島俊蔵:千秋実

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堀田加賀守:坂東好太郎

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伊勢屋周兵衛:明石潮

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役人:

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周兵衛の妻:

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番頭:

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お蝶:清川虹子

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おいと:桜町弘子

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お澄:花園ひろみ

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おちか:三田佳子

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英明院:花柳小菊

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熊谷民部:戸上城太郎

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射的場の娘たち:

あらすじ(番組情報より引用)
おとそ気分の松の内、奇怪な事件を小耳に挟んだ若さまは船宿喜撰越をから腰を上げる。
事件というのはーー御用商酒問屋伊勢屋の清酒で毒見役が命を失い、見廻り役もまた、何者かに暗殺され、
その科で実直な伊勢屋の財産は没収、一門は遠島、店は取り潰しされようとしているのだ。

獄門を待たずして伊勢屋も病に伏し絶命する。
目明し小吉と与力佐々島はいくらあせっても、事件の核心は老中堀田加賀守の手中にあり、なす術を知らない。
足にまかせて若さまが調べあげたところでは、
私腹を肥やそうとする小納戸役鈴木妥女の企みが事件の核心と分かり…。

大川橋蔵、三田佳子:「若さま侍捕物帖」 [KBS京都] 2013年12月25日 20時00分00秒(水曜日)

<桜町弘子:関連作品>

テーマ:映画紹介 - ジャンル:映画



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