色々鑑賞録
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12 | 2014/01 | 02
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アリエスの乙女たち:13話
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13話「陰の女」脚本:長野洋

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保

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結城敬子:相楽ハル子

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結城小百合:大場久美子

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小暮毅、鈴木倫子、才神ルミ、小池孔一

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大下直樹:宅麻伸

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敬子の両親:結城美栄子、平泉成

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長谷川千草:藤代美奈子

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久保小夜子:梶芽衣子

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長谷川欣吾:高橋昌也

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久保哲也:若林豪

<ストーリー>
早朝、市街地の通行人が騒然となっていた。
少女が身投げしようとしている。
ビル屋上に、虚ろな表情で佇んでいる。
通行人たちは、声を枯らして思い留まるよう呼び掛けた。
その少女・水穂薫(南野陽子)は、
ビル屋上に立ち尽くしたまま一夜を明かしていた。
立て続けに起きた出来事に翻弄され、
前夜は余りにショッキングな経験で酷く打ちのめされていた。
朦朧とした意識の中で、薫は誰かが呼掛けているのに気付いた。
「水穂、馬鹿なことを考えるのは止せ。死ぬんじゃない!」
担任教師・大下直樹(宅麻伸)だ。
大下教師がどうしてここに居るのか、
何を訴えているのか、
放心状態の薫には、それさえ理解出来なかった。
「死ぬってどういうことなのかしら?
あたしが死んじゃったら、誰か泣いてくれる人いるのかな?」
薫は上の空で呟いていた。
大下教師は、薫を刺激しないよう慎重に歩み寄った。
そして、一瞬薫が気を逸らした隙を突いて体を確保した。
その時、薫は何故か赤ん坊の鳴き声が聞こえたような気がしていた。

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薫の投身自殺は、既のところで食い止められた。
大下教師は、薫を自宅へ送った。
薫の母は、またしても旅行に出ていて留守だった。
このまま薫を一人にしておくと、また自殺するかもしれない。
そこで、薫の身柄は当分別の家に預けられることになった。
薫が一番安心出来る相手、親友・久保恵美子(佐倉しおり)の家だ。
恵美子と父・久保哲也(若林豪)は、薫を歓迎した。
しかし、母・久保小夜子(梶芽衣子)だけは薫を警戒していた。
娘を誑かし、夫をも奪おうとしている危険な少女。
小夜子の目に、薫はそう映っていた。
勘のいい薫は、そんな小夜子の緊張を感じ取っていた。
食事中に会話したらわざと遮られる。
食器洗いを手伝うと申し出たら断られてしまう。
刺々しい態度にムッと来た薫は、当て付けにわざと母の話を持ち出した。
「おじ様、私にもそのワインいただけません?
そのワイン、うちのママも大好きなんです」
その瞬間、小夜子の手から落ちた食器が粉々に砕け散っていた。

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やっぱり、この家には居られない。
薫が出て行こうとすると、引き留めたのは意外にも小夜子であった。

「出て行くことは許しません。
あなたの身柄は、あなたのお母様が帰って来るまでうちで預かることになっています。
学校へもそう通知してあります。
今あなたに勝手な真似をされては、うちが迷惑致します。
いいですね?
あなたももう子供じゃないんだから、それ位のことはちゃんと聞き分けて下さいね」

薫は一本取られてしまった。
相手は一枚上手だ。

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その頃、陶工見習・結城司(松村雄基)は連日の港湾労働に明け暮れていた。
緊急手術の結果、妻・結城敬子(相楽ハル子)は無事男の子を出産した。
体重1500gとギリギリの状態だったが、何とか無事に育ってくれそうだ。
家族を持った以上、これからは多くの責任を背負い込まねばならない。
陶芸で食べていけるようになるには、未だまだ時間が掛る。
司は体に鞭打って重労働に耐え、日銭を稼いで工房に通った。
敬子の両親(平泉成、結城美栄子)からは、定職を世話すると言われていた。
だが、司は土下座してこれを断っていた。
陶芸だけは絶対諦めない。
同時に家族も養っていく。
師匠・長谷川欣吾(高橋昌也)に言われたよう、自分で運命を切り開くために。
司の心には、熱い炎が燃え盛っていた。

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自殺未遂を起こした翌日、薫は恵美子と共に学校に通った。
学校では、噂話が持ち上がっていた。
薫が大下教師と熱愛している。
もう、とっくに男女の関係になっている。
同級生たちは、薫の聞こえるところで露骨にヒソヒソ話を繰り返していた。
負けん気の強い薫は、人に弱みを見せるのが大嫌いだ。
大下教師が教える体育の授業中も、同級生たちはしつこく陰口を叩いていた。
頭に来た薫は、一同に歩み寄って啖呵を切って見せた。

「私と大下先生が何ですって?
何よ、急に黙り込んじゃって。
第一、私と先生がどうなろうとあなた方には関係ない事でしょ?
悔しかったら、あなた方もいい人を見つけることね」

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授業が終った後、薫は恵美子に窘められた。
幾ら何でも態度が挑発的過ぎる。
薫はカチンと来るとすぐやり返さないと気が済まないので、恵美子は前々から気になっていた。

「もう止めて欲しいの。
大下先生とのこと、みんなの前であんな風に言うの止めて。
あれじゃみんな増々本気にしちゃうわ。
薫さんを見てると、自分からドンドン悪ぶってるみたいで」

恵美子にそう言われた瞬間、薫はハッとした。
悪ぶってる。
自分からドンドン悪ぶってる。
ひょっとして、昨日の司のあの態度は……

『その時、薫は初めて司の真意に気付いたのだ。
あれは、自分を憎み忘れさせるために打った必死の大芝居だったことを』

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薫は、すぐさま司の工房に飛んだ。
物陰から様子を伺ってみると、司はフラフラになりながら頑張っていた。
工房で陶器製造に明け暮れ、終るとその足で港湾労働に向う。
夢を実現させるため、家族を養うため、
自分を捨てて死に物狂いだった。
やっぱり。
昨夜のアレは芝居だ。

『薫は、司に何一つ手助け出来ない自分に気付いていた。
止めて下さいと縋り付くのは容易い。
だが、それでは司に男としての使命感を放棄させることになってしまう。
薫は、今己の無力が堪らなく情けなかった。
薫の脳裏にある考えが浮かんだ。
愛する人を直接手助けすることが叶わぬなら、
その人の妻と子のために尽くすのが、せめてもの愛の証になるのではないか。
いや、証など立てなくとも良い。
ただ、無償の愛を貫くために今自分の出来ることはそれしかないのだと』

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薫は、司の妻・敬子の病室へ見舞いに行った。
敬子は相変わらず敵意剥き出しだった。
それでも何か世話をさせて欲しいと訴えると、
敬子は薫に奴隷になるよう命じた。

「最初の命令はこうよ。
今すぐここを出て行くが良い。
口答えは許さぬ。
すぐにあたしの前から消えるのだ」

取り付く島もない。
薫は引き返すしか無かった。

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丁度その頃、恵美子の恋人・磯崎高志(石橋保)は、
偶然司と再会して近況を報告し合っていた。
恵美子と破局した。
幸せにする自信がないから自分から別れたと高志が打ち明けると、
司は怒って焚き付けた。

「問題は、お前が今でもエクボを愛してるかどうかってことなんだ。
格好付けて、身を引こうなんて気障なこと考えるんじゃねえよ!」

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この一言で、高志は目が覚めた。
自分を卑下してどうする。
男なら、逆境から這い上がれ。
愛する人を幸せにするために戦い抜け。
その夜、高志は思い切って恵美子に電話を掛けた。

「恵美子さん、もう一度だけ君に会いたい。
今、君の家の近くの公園に居る。
どうしても会って欲しいんだ」

恵美子は来てくれた。
両親の監視を掻い潜り、無理して家を抜け出して来てくれた。
高志は恵美子を抱き締めながら胸に誓った。

「僕は意気地なしだった。
君を幸せにする自信を無くして、自分から逃げ出してしまった。
だが、僕はやっぱり君を愛している。
世界中の誰よりも君が好きだ。
待っていて欲しい。
僕がもう一度自信を取り戻して、君の所へ帰って来るまで待っていて欲しいんだ」

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その夜、薫は帰るのが随分遅くなった。
夜の公園に差し掛ったところで、薫は見覚えのある2人を目撃した。
恵美子と高志だった。
2人は熱く抱擁していた。
どうやら仲直り出来たようだ。
薫は安心して見送った。

「良かったわね、恵美子さん。
せめて、あなたと高志さんだけは幸せになってね」

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翌日もまた、司は工房に通っていた。
しかし、連日の重労働が祟ってとても集中出来る状態ではなかった。
燃え盛る窯の前で意識朦朧となった司は、
バーナーが異常を起こしていることに気付いて、慌てて元栓に手を掛けた。
その瞬間、窯は大爆発を起こして司の体を吹き飛ばしてしまうのだった。

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『その時、薫は愛する者の異変をハッキリと感じ取っていた。
アリエスの星の下に生まれた2人の乙女。
その1人・久保恵美子は今確かな愛を掴んだかに見えた。
だが、水穂薫の愛の行く手には更に過酷な運命が待ち受けていた』

ドラマ アリエスの乙女たち(第13話) [サンテレビ] 2014年01月29日 15時00分00秒(水曜日)

<藤代美奈子:関連作品>

テーマ:ドラマ・映画 - ジャンル:テレビ・ラジオ

アリエスの乙女たち:12話
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12話「私は愛人?」脚本:長野洋

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保

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結城敬子:相楽ハル子

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来栖順子:佐藤万理

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結城小百合:大場久美子

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長谷川千草:藤代美奈子

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上司:大塚国夫

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大下直樹:宅麻伸

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磯崎志乃:奈月ひろ子

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久保小夜子:梶芽衣子

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長谷川欣吾:高橋昌也

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久保哲也:若林豪

<ストーリー>
波乱の一夜が明けた。
石段から転落した結城敬子(相楽ハル子)は、
医師の懸命な治療によって何とか小康状態を取り戻していた。
その朝、敬子が目を覚ました時に、
最初に見たのは夫・結城司(松村雄基)ではなかった。
夫を奪おうとした女子高生・水穂薫(南野陽子)であった。
薫は、敬子と子供の為に一晩中祈り続けていた。
どうか無事でありますように。
今もこうして病床に付き添っている。
薫の気持ちに邪心はない。
それは敬子にも判っていた。
それでも、敬子は御礼を言うのは嫌だった。
開口一番、敬子は薫に吐き捨てた。
「薫さん、出てって。
あなたには感謝してるわ。
でも、こうやってあなたの顔を見ているのは辛いの。
お願い、出てって」

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病室を追い出された薫は、
病院前で担任教師・大下直樹(宅麻伸)と出会した。
大下教師がどうしてここに居るのか。
薫が事故に巻き込まれたと聞いて、心配して駆け付けて来たのか。
何れにせよ、ここに来た目的が薫にあるのは間違いなかった。
事故の経緯を確かめた後、大下教師は改めて薫に訴えた。
「こんな時に何だが、この前の話真剣に考えてくれないか?」
卒業したら結婚して欲しい。
薫は、大下教師にそう言われていた。
大下教師には別に恋人がいた。
来栖順子(佐藤万理)という同僚教師で、誰もが認める相思相愛の仲だった。
それが破局したのは、薫が原因だった。
大下教師が、薫に夢中になってしまったのだ。
順子教師に悪いと薫が渋っても、大下教師は中々聞こうとしなかった。
「確かに、俺は彼女を裏切った。
その事で言い訳しようとは思わない。
悪いのはこの俺なんだ。
しかし、俺は君を愛してしまったんだ。
どうしようもない位愛してしまったんだよ。
どんなに非難されようとも、俺は自分の気持ちに嘘を付いてまで彼女と結婚しようとは思わない」
分かってくれ、この気持を。薫さん」
薫は、この言い分には納得出来なかった。
「贅沢です、先生は。
自分の気持ちに嘘を付いてまで結婚したくないなんて、格好良すぎます。
世の中には自分の気持ちを殺しても、責任を取ることだって……」
言い掛けたところで、薫は口を噤んだ。
誰のことを言おうとしているのか、大下教師にも容易に察することが出来た。
薫の心には、司が居る。
大下教師は、改めて薫に司のことをどう思っているのか尋ねた?
薫は迷わず断言した。
「愛してます。
彼が敬子さんと結婚して、もうすぐ父親になったとしても、
私は彼を愛しています。
どうしようもなく愛してるんです。
でも、それがいけないことだというのも分かってます。
いっその事、先生の胸に飛び込んで彼のことを忘れたい。
許されるなら今すぐにでも飛び込みたい。
でも……でも、私には出来ません。
どうしても出来ないんです!」
薫は、その場から逃げ出した。
大下教師には、心惹かれていた。
誰かに苦しみを受け止めて欲しい。
そんな気持ちもあった。
しかし、薫は懸命にそれを押し殺して迷いを振り切るのだった。

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その頃、薫の心を占拠していた司もまた苦悩していた。
陶工見習の司は、工房で燃え盛る窯を見つめながら思った。
薫のこと、妻・敬子のこと、そして生まれて来るやもしれぬ我が子のことを。
司の師匠・長谷川欣吾(高橋昌也)は、
そんな弟子を気遣って優しくも厳しく諭した。

「運命だな。いや、宿命というべきかもしれん。
運命とは、自分で切り開いてゆけるものだ。
だが、宿命は抗っても抗い切れない大きなもんだ。
我々がこの世に生まれてきたことそのものが宿命なんだ。
お前の子供が無事この世に生まれてくるかどうか、儂には分からん。
だが、生まれるのも宿命。
死ぬのもその子が背負った宿命だ。
冷たい言い方かもしれん。
だが、誕生と死は人間……いや、命あるもの全てにとって抗い難い宿命なんだ。
そうは思わんか?
問題はその誕生と死の間にある人生を、どう切り開いてゆくかだ。
己の人生を見極めたいと思ったら、宿命に振り回されるな。
自分の手で運命を切り開くんだ」

『生まれて来るも死ぬも宿命と言った長谷川の言葉が、
司の上に大きく伸し掛っていた。
自分はどのように運命を切り開けば良いのだろうか。
敬子を愛すべく努力するべきか。
それとも、あくまでも薫への愛を貫き通すべきなのか』

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一方、薫の親友・久保恵美子(佐倉しおり)の前にも、
苦難が差し掛かっていた。
恵美子は、恋人・磯崎高志(石橋保)の元へ通い詰めていた。
なのに、高志にはずっと避けられた。
会社帰りを待ち伏せしても無視され、
アパートへ押掛けて行っても入れて貰えない。
それでも、恵美子は諦めなかった。
高志を救いたい。少しでも力になりたい。
出来ることは何でもやった。
高志は、今の仕事が合わないのではないか?
そう考えた恵美子は、父・久保哲也(若林豪)に口利きを頼み込んでみた。
恵美子は真剣だったが、父には軽く窘められてしまった。
何も出来ない。
恋人が苦しんでいるのに、助けてあげることが出来ない。
恵美子は自分の無力さが腹立たしくて仕方がなかった。

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その夜、恵美子は両親の口喧嘩を立ち聞きした。
母・久保小夜子(梶芽衣子)は、夫に酷くイライラしていた。

「大体あなたはあの子に甘すぎます」
「そんな事はない」
「いいえ、そうです。
あなたの態度が煮え切らないから、恵美子がいつ迄もフラフラしてるんです。
男親でしたら、言うべき時にはもっとハッキリと仰って下さらないと困ります」
「小夜子、君はそんなに高志君のことが気に入らないのか?」
「気に入るとか気に入らないの問題じゃありませんよ。
あの子は未だ高校生なんですよ。
それが、勝手に男のアパートに押し掛けて行くなんて。
あたしは、あの子をそんな端ない女に育てた覚えはありませんよ。
恵美子があんな風に変わってしまったのは、きっとお友達のせいですわ」
「友達?」
「水穂薫です。あの娘と付き合いだしてから恵美子は……」
「小夜子、水穂薫と恵美子との問題は関係ないだろ。薫は薫、恵美子は恵美子だ」
「あなた、水穂薫のことになると酷くムキになるんですね。
あなた、まさか未だあの娘と……」
「何馬鹿なこと言ってるんだ。約束は守ってる。
あれ以来あの子とは二度と会ってない」
「でも、ずっと気に掛けてらっしゃるんでしょ?」
「小夜子!」
「そう、やっぱりそうなのね。
あなたは、やっぱり水穂マキさんのことが忘れられないんだわ。
だからあの娘のことも……」
「いい加減にしないか!」

立ち聞きした恵美子は、複雑な気持ちにさせられた。
今まで高志に夢中で気付いていなかった。
まさか、自分の居ないところで両親の仲がここ迄険悪になっていようとは。

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翌日の放課後、下校中の薫の前に恵美子の父・久保が現れた。
娘のことで相談があるという。
久保は薫を喫茶店に誘って尋ねた。
磯崎高志のことをどう思うか?
どうやら、久保は娘の交際相手について色々調べて回っているようだ。
はっきりとは言わなかったが、久保は2人の交際に難色を示していた。
薫は腹が立って来た。
娘の恋なのに、どうして親が邪魔をするのか。
いつしか、薫は久保と言い合いになっていた。

「愛し合ったら一緒になればいいのよ。
それが人間の一番自然な姿でしょ」
「若いな。確かに若いというのは、何物にも代えがたい財産だ。
それだけに危険も大きい。
ハッキリ言って、今の恵美子に男の本質を見極める目はない。
そして、君にもだ。
君が結城司という青年を愛していることは知ってる。
しかし、私に言わせればそれだって本当の愛と言えるかどうか」
「何ですって?!」
「君達若い娘が恋愛に憧れるのは当然だ。
そして、すぐこれが恋だと思い込む。
だが、君達は本当の恋をしている訳じゃない。
恋という甘酸っぱい言葉に酔い痴れてるだけなんだ」
「偉そうなことを言わないでよ。
おじ様に私達の何が分かるって言うの?
大人の打算だけで物事を決め付けるのは止めて下さい」
「じゃ聞くが、君はどんな障害があろうと結城司との愛を貫き通す覚悟は出来てるのか?
彼が他の娘と結婚したことは、仰星高校の関係者なら誰でも知ってる。
それでも、君は報われぬ愛に一生を賭けて悔いはないと言い切れるのか?」
「賭けるわ。
そうよ、私は自分の一生を賭けても彼との報われない愛を貫き通して見せるわ!」

薫は、啖呵を切って喫茶店を飛び出した。
久保の口調は穏やかだった。
それだけに、小馬鹿にされたみたいで我慢ならなかった。

『薫の心に、鋭い痛みが走っていた。
哲也に指摘された通り、司との不毛の愛の苦しみから逃れようと、
大下の求愛に心を動かしたことは事実なのだ。
薫は己を恥じた。
そして、今度こそ本当に一生賭けてこの報われぬ愛を貫き通そうと決心したのだ』

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薫は、その足で敬子の病室へお見舞いに行った。
案の定、敬子にはすぐ追い返されてしまった。
敬子にとって、薫は敵だ。
夫の心に居座る憎き女だ。
敬子は口汚く薫を罵った。
薫は、敬子をそれ以上怒らせないように努めて静かに病室を出た。
そんな薫は、思わぬ人物に呼び止められて振り向いた。
敬子の夫・司であった。

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薫は、司に会えて嬉しかった。
敬子に悪いと百も承知だが、それでも一緒に居られるだけで幸せだった。
だが、その日の司は何処か変だった。
司は無言で薫の手を引いて、グイグイ繁華街を突き進んで行った。
一体何処へ連れて行くのだろう?
薫の目にケバケバしいネオンサインが飛び込んで来た。
ラブホテルだ。
薫は、ギョッとして司の腕を振り解いた。

「何処へ行くの?!」
「そうだ、あそこへ入るんだ。どうしたんだ?
いつか素敵なところへ連れて行ってくれと言ったじゃないか。
どうして、こんな簡単なことに気が付かなかったのかな。
要は俺はお前を愛してる。お前も俺を愛してる。
だったら、結ばれるのが当然だ」
「敬子さんはどうするのよ?」
「知られなければいい。
知られなければ敬子を裏切ったことにはならない。
あいつには間もなく俺の子供が生まれる。
だから、子供のためにもあいつとの家庭を壊す気はない。
だが、俺が本当に愛してるのはお前だ。
だからお前を抱く。それだけのことだ」
「私に愛人になれって言うの?」
「愛人じゃ不満か?愛し合ってるならそれだけで十分じゃないか」
その瞬間、薫は司を張り倒した。
「バカ、私を何だと思ってるの?
あなたの言いなりになるお人形じゃないわ」
「うるせぇ。惚れてる癖に贅沢言うな」
「そうよ、私は贅沢な女よ。
完全な愛、100%の愛じゃなきゃ我慢出来ない女なのよ。
サヨナラ!」

薫は、泣きながらその場から逃げ出した。
報われなくても愛を貫き通す。
そこ迄覚悟した相手からの、身勝手で信じられない暴言の数々だった。
薫の心は、ズタズタに引き裂かれていた。

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薫が走り去った後、司は頬を擦りながら呟いた。

「これでいいんだ。
これであいつは俺を憎むことが出来る。
薫、お前の幸せは俺を憎み俺を愛せなくなった時から始まるんだ。
そうさ、これがお前に送る俺の最後の愛なんだ」

全て芝居だった。
司もまた、報われぬ愛を貫き通すことを覚悟していたのだ。

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その夜、入院中の敬子の体に異変が訪れた。
緊急事態と見た担当医は、
母体を救うために帝王切開に踏み切る決断を下した。
敬子は手術室に担ぎ込まれ、
司は姉・結城小百合(大場久美子)と共に為す術なく無事を祈るしか無かった。

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『一つの小さな命が、今生と死の間で揺れていた。
そして、その頃一つの恋に自ら秋止符を打った娘が生と死の間を見つめようとしていた』

ドラマ アリエスの乙女たち(第12話) [サンテレビ] 2014年01月28日 15時00分00秒(火曜日)

<梶芽衣子:関連作品>

テーマ:懐かしいテレビ番組 - ジャンル:テレビ・ラジオ

アリエスの乙女たち:11話
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11話「私の全て捧げます」脚本:大原清秀

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保

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結城敬子:相楽ハル子

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来栖順子:佐藤万理

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結城小百合:大場久美子

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磯崎志乃:奈月ひろ子

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長谷川千草:藤代美奈子

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雨宮ジュンヤ:深水三章

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由香の父:稲垣昭三

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大下直樹:宅麻伸

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敬子の両親:平泉成、結城美栄子

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芝園道代:初井言榮

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長谷川欣吾:高橋昌也

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マキ水穂:野川由美子

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久保小夜子:梶芽衣子

<ストーリー>
仰星高校に卒業式の日がやって来た。
生徒会長・磯崎高志(石橋保)は、この日で高校生活にピリオドを打った。
卒業後は商事会社に就職する予定だ。
学業優秀な高志であったが、経済的にとても進学できる状態ではなかった。
式を終えた高志は、恋人・久保恵美子(佐倉しおり)にアパートで祝って貰った。
同席していた高志の母・磯崎志乃(奈月ひろ子)は、
息子の門出に新しい背広を買ってやれないことを酷く気に病んでいる様子だ。

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見ていられなくなった恵美子は、
自宅に引き返して自分の振袖を取り出した。
困っている高志のためにお金を作りたい。
恵美子がそれを手に自宅を飛び出したところで、
異変に気付いた恵美子の母・久保小夜子(梶芽衣子)が引き止めに来た。
小夜子は、恵美子と高志の交際にずっと反対していた。
娘が恋人のために大事な振袖を処分しようとしている。
それを知ると、見逃せる筈もなかった。
恵美子は有無を言わさず母に引き戻された。
そして、高志に会うこと自体を固く禁止されてしまうのだった。

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その頃、恵美子の親友・水穂薫(南野陽子)は、
帰り道に立ち寄った陶芸店で嬉しい発見をしていた。
恋人・結城司(松村雄基)の壺が売りに出されていたのだ。
薫は、迷うことなく購入した。
2万円の値札だったが、惜しみなく3万円を支払った。
薫は司が好きだった。
司の成功を誰よりも願っていた。
司が別の人と結婚しても、その気持に変りはなかった。
結ばれなくても愛し抜く。
そう覚悟していた。
司が丹精込めて焼き上げたこの壺が手元にあれば、
いつでも一緒に居られる。
そんな気がした。
幸せな気分で店から出て来た薫は、思わぬ人物と出会した。
それは今一番会いたくない人物、司の妻・結城敬子(相楽ハル子)であった。

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敬子のお腹はもう随分大きくなっていた。
敬子は、「ちょっと一緒に来てくれない?」と薫の手を引いた。
連れて行かれたのは、デパートのオモチャ売り場だった。
そこに司が居た。
敬子は、産まれてくる子供のために夫と買物に来ていたらしい。
薫は司を見ると思わず凍り付いた。
司も気不味くて目を逸らした。
そんな薫を尻目に、敬子は当て付けに司に寄り添って見せた。

「薫さん、あなたはその陶器を眺めて司を偲ぶつもりらしいけど、
あなたに出来るのはそれだけよ。
あなたの愛には形が無いのよ。
あたしは司の妻。
司はあたしの夫。
それに赤ちゃんも産まれるわ。
それに引き換え、あなたは司の何?
どんなに司を愛したところで、あなたが司と一緒になれるどんな形があるっていうの?
薫さん、色々あったけどあたしの勝ちね」

敬子に嘲笑された薫は、唇を噛み締めてその場から駆け出して行った。

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一方、薫の親友・恵美子の恋路もいよいよ破綻に差し掛ろうとしていた。
恵美子は母に禁じられているにも関わらず、高志のアパートに通い詰めるのを止めようとしなかった。
その夜、恵美子は帰りの遅い高志を心配して駅に迎えに行った。
雨の降る中、恵美子は高志の帰りを待ち続けた。
高志は終電になって漸く帰って来た。
酔っ払ってベロベロになっていた。
恵美子は高志に駆け寄ってハッと気が付いた。
ワイシャツに口紅の跡が付いている。
固まる恵美子を見て、高志は自嘲した。

「僕は今夜女を抱いた。
安キャバレーの女だ。
酔っ払って何も分からない。
恵美子さん、僕と別れてくれ。
僕はドンドン腐っていってる。
満員電車に揺られて、
安月給の為に朝から晩までペコペコして。
恵美子さん、僕なんかと付き合ってたら君まで汚れてしまう。
だから、別れる」

言い終わると、高志は雨の中を駆け出して行った。
恵美子が追い掛けたが、高志は後ろを振り返ろうとはしなかった。

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その夜、恵美子は親友・薫の家を訪ねた。
恵美子の話を聞いてくれる人は、他にいなかった。
薫もズブ濡れの恵美子を見て察した。
余程のことがあったらしい。
薫は恵美子を家に上げると、タオルで拭いて事情を訊いてみた。
恵美子は苦しい胸中を打ち明けた。

「高志さんとはお終いだわ。
私はお付き合いしたいんだけど、高志さんが別れたいって。
アパートに行って幾らドアを叩いても開けてくれないの。
私、パパやママがどんなに反対したって、
将来は高志さんと一緒になる自信はあったの。
だけど、肝心の高志さんが……
卒業して何ヶ月も経たないのに、高志さんは変わってしまった。
輝きを失った平凡なサラリーマンになってしまった。
高志さん、そんな自分を蔑んで、そして私が重荷になって来たのよ。
汚れた世の中があの人をそうさせたの。
私……私、世の中には勝てない。
御免なさい、薫さん。
愚痴ばかり言って」

薫は、泣き崩れた恵美子を抱き締めて励ました。

「いいのよ、恵美子さん。
泣きたければ思い切り泣きなさい。
その代わり、明日は元気を出してね。
そして、高志さんを信じて愛し抜くのよ」

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翌日、恵美子は授業中に突然自分が指名されたことに驚いた。
ずっと上の空だった。
何を訊かれているのか、サッパリ分からない。
恵美子が困っていると、数学教師・来栖順子(佐藤万理)が詰め寄ってきた。
「どうしたの?何処だか分からないの?
来年は大学受験だと言うのに、そんな事でどうするの?
廊下に立ってなさい」
恵美子は、昨夜の一件を未だ引き摺っている。
見兼ねた親友・薫は、間に入って何とか執り成してみた。
「先生、久保さんは今勉強出来る状態じゃないんです。
立っていろなんて、子供じみています」
薫は順子教師を静止しようと揉み合いになった拍子に、
つい体を突き飛ばしてしまった。
すると、これでよろけた順子教師は怒りに震えて薫に食って掛かった。
「水穂さん、これは何の真似?校内暴力よ。
教師への無礼は許せないわ。
罰として校庭20周なさい!」

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薫は、一人無人の校庭を走った。
その姿を、順子教師は厳しい顔で睨み付けていた。
騒ぎを知って、担任教師・大下直樹(宅麻伸)が順子教師に駆け寄った。
「君は俺が婚約を解消したことで、水穂に八当りしているとしか思えん」
大下教師に窘められると、順子教師は猛然と反論した。
「冗談じゃありませんわ。
あたしは今まであの子に甘すぎました。
これからは厳しく指導したいと思っているだけです。
あたしの授業中に起こったことです。
先生は口を挟まないで下さい」
許すような気配はなかった。
薫は何とか20周を走り終えると、その場に力尽きて倒れ込んでしまうのだった。

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その後、薫は自宅のソファで意識を取り戻した。
傍らに、大下教師が心配そうに寄り添っていた。
どうやら、倒れた後にここ迄担ぎ込んでくれたらしい。
薫が礼を言うと、大下教師は真剣な顔で薫の肩を抱いた。

「担任としては当然さ。
いや、今の俺の気持ちは担任ではないな。
水穂、君は結城が結婚したことで苦しんでいるんだろう?
俺の愛で、彼のことを忘れさせてみせる。
俺と君は、教師と生徒とは言っても歳は8つしか違わない。
君が卒業したら、結婚したい。
水穂、君が好きだ。
君も、俺のことを好いてくれるんなら……」

大下教師がキスしようと唇を寄せると、
薫は「止めて下さい」と拒んだ。
その瞬間、室内に呼び鈴が鳴り響いた。
薫がこれ幸いと出てみると、司の姉・結城小百合(大場久美子)が立っていた。
それを見て、大下教師は罰が悪そうに退散して行った。

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小百合の訪問目的は意外なものだった。
それは、司と会って力付けてやって欲しいというものだった。
薫は当然渋った。
もう会わない。
敬子さんとの幸せを壊さない。
そう胸に誓っていた。
だが、小百合はどうしても会って欲しいと食い下がった。
司は、薫と破局して以来すっかり自暴自棄になっている。
あれ程好きだった陶芸にも身が入らず、
このままでは師匠・長谷川欣吾(高橋昌也)に破門を言い渡されるかもしれない。
「一度でいいの。
司に会って力付けてやって。
そうすれば、司はきっと立ち直れるわ。
お願い。お願いします。お願い、薫さん」
小百合の目は真剣だった。
本気の懇願だった。
ここ迄頼まれると、薫も流石に断ることは出来なかった。
「分かりました。
私、司さんを励ます自信なんて無いけど、
あの人の為になるのなら」

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こうして、姉・小百合の図らいで薫は司と会うことになった。
待ち合わせの日、2人は海沿いの公園で再会した。
会いたかった。
死ぬ程会いたかった。
それでも、心を鬼にして今日まで我慢して来た。
感極まった薫は、司の胸に飛び込んだ。

「司、私を何処かへ連れて行って。
あなたが知ってる一番好きな所へ連れて行って。
そして、私を抱いて。
私、あなたが自分をメチャメチャにしていくのを見たくないの。
でも、何もしてあげられない。
私がしてあげられるのは、こんな事しかないの。
いいのよ、司。
私を好きにして。
その代わり、何もかも忘れて立ち直って」

司は嬉しかった。
薫の気持ちが心に沁みた。
だが、それでもこれは受けられないと言っている自分がいた。
司は、心惹かれながらも薫から体を離して答えた。

「薫、俺に構わないでくれ。
そんな事をすれば傷付くだけだ。
お前のその気持ちだけで十分だ。
俺は立ち直ってみせる」

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そんなやり取りをする2人の前に、再びあの人物が現れた。
司の妻・敬子であった。
敬子は、鬼の形相で鉄パイプを握り締めていた。

「薫、司はどんなことがあっても渡さないわよ。
あんたなんか……あんたなんか死ねばいい!」

敬子は鉄パイプを振り回して薫に飛び掛った。
止めようとする司を突き飛ばし、敬子は逃げ惑う薫を襲った。
薫は身を交わし、何とか石段に逃れた。
追い掛けて来た敬子が、その瞬間足を踏み外して転げ落ちていった。
グッタリした敬子を見て、薫と司は慌てて駆け寄った。
敬子は妊婦だ。
このままでは危ない。

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敬子は病院に担ぎ込まれた。
病床に付き添った薫は、苦しむ敬子の体をさすってやった。
敬子は不安に慄いていた。
子供が駄目になるのではないか。
それだけは嫌だ。
心細くなった敬子は、薫にポツリと漏らした。
「きっと、罰が当ったんだわ」
それは、敬子の生い立ちについてであった。
敬子は幼少期に産みの母を亡くした。
今の母は継母だ。
継母は、血の繋がらない敬子をとても可愛がってくれた。
そして、父の子を妊娠すると躊躇なく堕ろした。
産んでしまえば、血の繋がった子供ばかり可愛がって敬子を疎かにしてしまう。
それを恐れてのことだった。
敬子は、この事をずっと気に病んでいた。
自分の為に犠牲になった、生まれて来なかった命に罪の意識を感じていた。
「あたしの為に、あたしの弟か妹が日の目を見ることも出来なかったのよね。
もし、あたしの赤ちゃんが死んじゃったら、あたしの為に消えていったその子の罰よ。
あたしはどうなってもいい。
死んでもいい。
赤ちゃんだけは元気に産まれて欲しいの」

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『単なる不良少女と思われていた敬子に、こんな一面があったのか。
薫は言い知れぬ感動を覚えた。

薫は聖母マリアに祈った。
例え、私の命を召されるとも、
司と敬子の子が無事でありますように。
それは、報われぬ愛に殉じようと誓った薫の愛の証であった』

ドラマ アリエスの乙女たち(第11話) [サンテレビ] 2014年01月27日 15時00分00秒(月曜日)

<大場久美子:関連作品>


テーマ:もう一度見たいドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

アリエスの乙女たち:10話
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10話「たった一人の結婚式」脚本:大原清秀

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保

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津川敬子:相楽ハル子

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来栖順子:佐藤万理

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結城小百合:大場久美子

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雨宮ジュンヤ:深水三章

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長谷川千草:藤代美奈子

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ヒガシヨウコ:速川明子、松本明子、橋本実加子、嘉手納真夕、鈴木倫子、児玉陽子、滝あゆみ

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大下直樹:宅麻伸

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磯崎志乃:奈月ひろ子

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敬子の両親:平泉成、結城美栄子

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久保小夜子:梶芽衣子

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マキ水穂:野川由美子

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久保哲也:若林豪

<ストーリー>
『薫と司は、初めてのデートを約束していた。
そして、2人は愛を誓い合い恋は成就する筈であった。
だが、この時運命の女神が2人の愛を無残に引き裂きつつあることを、
薫は知る由もなかったのである』

陶工見習い・結城司(松村雄基)の前に、
恋人・津川敬子(相楽晴子)の両親(平泉成、結城美栄子)が現れた。
両親は、結城に衝撃的な事実を告げた。
それは、敬子が妊娠したという報せであった。
遅れて敬子本人がやって来た為、結城は敬子と一対一で話し合うことになった。
敬子の希望は一つだった。
結婚して欲しい。
それだけだ。
しかし、これは結城には受け入れ難い要求だ。
結城の心は敬子には無かった。
愛している人は別に居た。
結城は敬子に妥協案を出した。
出産費用を用立てて、子供を引き取ること。
それでも、敬子は納得しなかった。
どうしても結婚して欲しいと言って聞かなかった。
結城がなおも断り続けていると、
敬子は意を決して踏切の中に飛び込んだ。
「あたし死ぬわ。お腹の子供と一緒に」
丁度、列車が来たところだ。
結城は慌てて踏切の中から敬子を引き摺り出した。
敬子は興奮状態で絶叫した。
「離してよ!
あなたと一緒になれないなら死んだ方がマシよ。
幾ら頼んでもこの次は死んでみせるわ」
ここまでされると、結城も折れざるを得なかった。
「敬子、お前の言う通りにしよう。
産まれてくる子は力を合わせて育てよう」
とうとう、結城は敬子との結婚を承諾した。
敬子の凄まじい執念が、開かずの扉を抉じ開けた瞬間だった。

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その日、女子高生・水穂薫(南野陽子)は結城を待ち続けた。
待ち合わせの公園で、夜まで待ち続けた。
だが、結局結城は来なかった。
何か事故にでも巻き込まれたのではないか?
心配になった薫は、翌日結城のアパートを訪ねてみた。
応対に出てきた結城の姉・結城小百合(大場久美子)は、
弟はもう出掛ましたと言ったところでその場にしゃがみ込んでしまった。
見るからに体調が悪そうだ。
薫が気遣って小百合の背中を擦ると、背後から誰かが声を掛けた。
「どいてよ」
振り返ると、いつの間にか敬子が立っていた。
敬子は薫を押しのけて、小百合を抱き起こした。
「お早う御座います、お義姉さん。
お掃除しに参りましたわ。
それとも、洗濯を先にしましょうか?
私はこの家に嫁いでくるんですもの、その位のことするの当たり前です」
敬子の言葉に、薫はギョッと驚いた。
「何ですって?!」
敬子は勝ち誇った顔で答えた。
「あら、知らなかったの?
司はあたしと婚約したのよ。
ねえ、お義姉さん。
司とあたしはもうすぐ結婚するんですよね?」
敬子に振られると、小百合は気不味そうにそれを認めた。

『信じられなかった。
薫は心の中で叫んだ。
嘘、嘘と、千回も、万回も』

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薫は、その足で結城の工房へ飛んだ。
直接事情を訊こうと、結城を捕まえて問い質した。
そんな薫に、結城は苦しい胸の内を明かした。
それは、敬子が妊娠したという事実であった。
結婚しないと敬子は死ぬと断言している。
本気でやりかねない。
生れてくる命のためにも、それだけは阻止せねばならなかった。
「俺は愚かな男だ。
敬子とは遊びだった。
遊びで済むことと済まないことがあるのに、
俺は軽はずみな真似をした。
心底愛しているのは、あんた1人なのに。
後にも先にもあんた1人なのに。
俺は愚かなことを……
こうなったら、敬子を愛するように努力するしかない。
俺は愛してもいない女と結婚するようないい加減な男だ。
最低の男だ。
薫。忘れてくれ、俺のことは」
結城はそう言って項垂れた。
薫は、思わず結城に縋り付いていた。
結城は、薫を受け止めながら尚も続けた。
「薫、俺はお前を愛してる。
俺はお前を幸せにしてやりたいと思ってる。
だが、それはもう出来ない。
俺のことは忘れてくれ。
俺も、忘れるようにする。
これ以上話していてもお互い辛くなるだけだ。
帰ってくれ。
頼む、帰ってくれと言ってるんだ!」
結城は、縋りつく薫を強引に引き離した。
薫は、泣きながら工房を飛び出して行くのだった。

『人の世には、逆らうことの出来ない大きな運命の渦があるのであろうか。
その渦に巻き込まれた薫は、絶望のどん底に叩き込まれた。
前日までは司との愛を信じ、胸をときめかせていた薫であった。
司は、薫を導く唯一の灯火であった。
だが、一日にして灯火は消され、世界は何の希望もない闇の荒野と化したのである』

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翌日、薫の学校に私服の敬子が現れた。
結城との結婚が決まって退学することになり、
荷物を引き取りに来たのだった。
敬子は級友たちと別れの挨拶をして、幸せそうに婚約指輪を見せた。
帰り際、敬子が階段の踊り場に差し掛ったところで、
薫の心に危険な考えが閃いた。

『その時、薫の心を悪魔的な衝動が突き抜けた。
いっそ敬子さんが流産してしまえば、そうすれば司の責任は失くなる。
あの人は私の所へ帰って来る』

薫は敬子を突き飛ばそうとして、既のところで思い留まった。
そして、無人の講義棟へ飛び込むと、気を鎮めようと肩で息をした。
薫は猛烈な自己嫌悪に襲われていた。
「何てことを。私は何てことをしようとしたのかしら」
丁度そこに通りがかった担任教師・大下直樹(宅麻伸)は、
只ならぬ様子の薫を見て心配して声を掛けた。
「水穂、そんな所で何してるんだ?」
薫は、思わず大下教師に抱き着いていた。
「先生、私自分が恐ろしいんです。
先生、暫くこうさせていて下さい」
大下教師は、震える薫を宥めて抱擁に応じた。
次の瞬間、血相を変えた教師・来栖順子(佐藤万理)が怒鳴り込んで来た。
「大下先生!あなた達、恥ずかしくないの?
教師と生徒でそんな関係になるなんて。
あなた達は前から怪しいと思ってたけど、やっぱり。
先生との結婚のお話、今日限り無かったことにして下さい。
信じられないわ!」
順子教師は、説明しようとする薫の頬を張り倒して飛び出して行ってしまった。
大下教師と順子教師は、婚約中の仲だ。
薫がなおも追い掛けようとすると、大下教師は制止した。
「弁解などしなくていい。
順子さんは俺を信じなかった。
信じない相手に弁解までして、一生を共にする気はない」
大下教師は、何の未練も無い様子で薫の肩を抱いた。
続いて、薫は信じられない言葉を耳にした。
「あんな女より、俺が本当に好きなのは……君だ。
好きなんだ。
君は俺のことどう思う?
教師としてではなく、一人の男として」
出し抜けの告白だった。
混乱した薫は、もうどうしていいのか分からずその場から逃げ出していた。

『司との別離。
思いもよらぬ大下の愛の告白。
薫の心は千々に乱れ、絶望はいや増していた』

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その頃、薫の親友・久保恵美子(佐倉しおり)は、
生徒会長・磯崎高志(石橋保)のアパートに通い詰める毎日を送っていた。
高志の父が死んで以来、磯崎家の生活は激変していた。
責任感の強い高志は、家屋敷を全て処分して父の心中相手に賠償金を支払った。
金で済む話ではないか、娘を奪われた遺族へ出来る最大限の償いだった。
その為、磯崎家は忽ち経済的に困窮していた。
一家の稼ぎ手を失った上に、高志の母・磯崎志乃(奈月ひろ子)も体調を崩しがちで、
高志は学業と同時に毎日家事に追われねばならなかった。
そんな高志を少しでも助けようと、恵美子は毎日磯崎家に通って家事の手伝いを買って出ていたのだった。
葬儀の日に啖呵を切って以来、恵美子は本気で高志を好きになった。
いや、好きだという自分の気持ちに気付いた。
高志もまた、献身的に尽くしてくれる恵美子のことが好きになった。
もはや、迷いは吹っ切れていた。
2人は相思相愛であった。

その日、高志はアパートを出たところで、恵美子の母・久保小夜子(梶芽衣子)に呼び止められた。
小夜子は大事な話があると高志を喫茶店に誘うと、深刻な表情で訴えた。

「磯崎さん、恵美子との交際を控えて頂く訳にはいかないでしょうか?
あなたは生徒会長までなさっている人ですし、
お人柄を疑っている訳ではありません。
ただ、このまま交際が進めばいずれは結婚という話が出て来ると思います。
あなたは恵美子を幸せにしてやれますか?
心ばかりではなく、生活の面でも。
私も主人も恵美子はいずれ女子大を出し、それに相応しい家に嫁がせたいと思っております。
浅はかな親のエゴと、軽蔑して下さっても結構です。
でも、娘の将来の生活の安定を願い、何不自由なく暮させたい。
そう希望しない親があるでしょうか?
ただ、じっくり良く考えて頂きたいんです。
あたしがここへ来たこと、恵美子には言わないで下さい」

言い終えると、小夜子は喫茶店から出て行った。
終始、穏やかな口調だった。
高志を怒らせないよう、慎重な言い回しを崩さなかった。
それだけに、高志の胸に深く突き刺さった。

『高志は苦悩した。
愛が成立するためには、心ばかりではなく幾つもの条件が必要であることを、
改めて思い知らされたのである』

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その夜、薫と恵美子は親友同士夜空を見ながら語り合った。
薫は結城と破局し、恵美子もまた高志に別れ話を突付けられていた。
失恋した同士だったが、2人は互いを励まし合った。

「恵美子さん、泣かないで。アリエスは愛の星。
その星の下に生まれたあなたがそんな弱いことでどうするの?」
「そうね。私、高志さんが何と言おうとこれ迄通り……
いえ、これ迄以上に高志さんに尽くすわ。
例え、お嫁さんになれなくたって」
「結婚出来なくたっていいって言うの?」
「だってそうでしょ?報いを求めないのが本当の愛でしょ?」
「報いを求めないのが愛……
恵美子さん、本当にいいことを教えてくれたわ」

『報いを求めないのが愛。
その言葉が薫に深く染み入った』

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翌日、結城と敬子の結婚式が執り行われた。
親戚縁者や級友達が見守る中の、華やかな結婚式であった。
2人は大勢の祝福を受けて、牧師の前に愛を誓い合った。

その頃、薫は一人ウェディングドレスを身に纏うと、
無人の教会でマリア像に祈りを捧げていた。
「私は結城司を心の夫とし、生涯愛し抜くことを誓います。
喜びの時も、悲しみの時も、共にある時も、なき時も」

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『誰の祝福も無かった。
だが、至純の愛を貫かんとする薫の心には司が近々と寄り添っていたのである』

ドラマ アリエスの乙女たち(第10話) [サンテレビ] 2014年01月23日 15時00分00秒(木曜日)

<宅麻伸:関連作品>

テーマ:懐かしドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

アリエスの乙女たち:9話
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9話「愛なき妊娠」脚本:大原清秀

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保

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津川敬子:相楽ハル子

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結城小百合:大場久美子

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磯崎志乃:奈月ひろ子

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長谷川千草:藤代美奈子


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磯崎淳一郎:中尾彬、新谷由香:桂木文

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雨宮ジュンヤ:深水三章

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敬子の両親:結城美栄子、平泉征

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由香の両親:稲垣昭三、福田公子

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久保小夜子:梶芽衣子

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マキ水穂:野川由美子

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久保哲也:若林豪

<ストーリー>
女子高生・水穂薫(南野陽子)が、
陶工見習・結城司(松村雄基)に愛を告白しようとしたその時、
結城家の電話が鳴り響いた。
それは、小説家・磯崎淳一郎(中尾彬)が失踪したという報せであった。
急を知った薫と結城は、磯崎の息子・磯崎高志(石橋保)の自宅へ駆け付けた。
高志は八方手を尽くして探し回っていたが、
父の行方は杳として知れないという。
筆の進まない磯崎は、予てから自殺を仄めかす発言を繰り返していた。
今回は愛人・新谷由香(桂木文)を伴っての失踪だけに、
本気で心中する恐れがあった。
結城は、姉・結城小百合(大場久美子)から、
磯崎のお気に入りの場所が奥多摩渓谷であることを聞き出すと、
高志と薫を乗せて車を飛ばした。
辿り着くと、3人は声を枯らして磯崎を探し回った。
広大な奥多摩渓谷に、3人の声が虚しく轟いた。

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2日後、磯崎と由香は奥多摩渓谷下流域で水死体となって発見された。
2人の腕はネクタイで結び付けられていた。
覚悟の心中だった。
2人の死体は荼毘に付され、それぞれ遺族によって葬儀が執り行われた。
磯崎側の喪主は妻・磯崎志乃(奈月ひろ子)であったが、
心労が祟って葬儀の手配などとても出来る状態ではなかった。
一人息子の高志が、母に代って親類縁者への応対に追われねばならなかった。
高志の級友である薫、結城、それに久保恵美子(佐倉しおり)の3人は、
少しでも役に立とうと葬儀の手伝いを買って出ていた。
薫と恵美子が受付に立つと、
磯崎担当の編集者らしき3人組がやって来た。
3人組は生前の磯崎を評して、早速世間話に興じていた。

「何時かはこうなると思ったよ。磯崎は不器用だったからな」
「ああ、浮気と本気の区別が付かん奴だった。すぐのめり込む」
「最期は死にのめり込むか」
「まあ、しかし死んだとなると本は売れるだろう」
「印税はガッポリ入って、奥さんも結構喜んでいるんじゃないか」

カチンと来た恵美子は、香典を差し出した3人に啖呵を切った。
「要りません。お持ち帰り下さい。
冷やかしの香典なんて意味がありません」
年下の娘に言われてムッと来た3人は言い返した。
「何だね、君は。身内じゃないんだろう?」
恵美子は一歩も引かなかった。
「身内です。いずれ磯崎家に嫁いでくる者です」
恵美子の迫力に圧されて、3人組はボヤきながら引き返していった。
いつもは気弱な恵美子が、この時ばかりは負けなかった。
隣に居た薫は、感心して恵美子を抱き締めた。
「恵美子さん、立派だった。強いわ」

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こうして、磯崎の葬儀は薫たちの助けもあって無事執り行われた。
手伝いを遂えた結城が帰ろうすると、薫は追い掛けて呼び止めた。
「結城さん、ちょっと待って」
今日こそ言おう。
言うことがある。
今日を逃したら、いつ会えるか知れない。
振り返った結城に、薫は声を絞り出した。
「こんな時何だけど、私……」
その瞬間、傍らから女の呻き声が聞こえて来た。
声の方向を確かめると、結城の姉・小百合が蹲っているのが見えた。
2人は慌てて駆け寄った。
小百合は磯崎に最後の別れを言おうと葬儀会場まで来たものの、
本妻に遠慮して戸外で立ち尽くしていた。
しかし、そこで気分が悪くなって倒れてしまったのだ。
本妻と同じく、愛人の小百合もまた心身共に疲労の極みだった。

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小百合は、結城によって自宅に担ぎ込まれた。
付き添っていた薫が見届けて引き返そうとすると、
結城は小さな壺を持って来て差し出した。
「薫、あんたには姉貴が世話になった。
こいつを、礼に取っておいてくれ。
俺の最初の作品だ。
大した出来じゃないが、礼をするったって俺には他に何も無いんでな」
照れる結城の手から、薫は笑顔で受け取った。
「ありがとう。綺麗。
ねえ、結城さんの仕事場、一度見に行ってはいけない?
知りたいのよ、陶器をどうやって作るのか」
切掛を掴むと、薫は思い切って結城に申し出ていた。
2人は、来週水曜日に工房で会う約束を交わした。
告白しそびれていた薫に、
思わぬチャンスが回って来ようとしていた。

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約束の日、工房の前にやって来た薫は思わぬ人物と出会した。
結城の恋人・津川敬子(相楽ハル子)だった。
どうしてここに居るのか薫が戸惑っていると、敬子は挑戦的な目で睨み付けて来た。

「薫、あたしは負けないわよ。
司はあんたを愛してる。
だけど、そんなの問題じゃないわ。
司の心はあんたのものだけど、体は違うわよ。
あたしと司はかなり深い仲だったんだものね。
そう言えば分かるでしょ?
男と女の体の関係は、そう簡単に切れるもんじゃないわ。
今日だって、あたし司に呼ばれてたった今も……
薫、あんた司を賭けてあたしと体で勝負出来る?
自信があるなら遠慮無くどうぞ」

敬子に言われてショックを受けた薫は、
元来た道を引き返して行った。

『薫は、毫も司の愛を疑ってはいなかった。
だが、敬子にかつての司との関係の深さをまざまざと知らされた今、
澄み切った気持ちで司に愛の告白をする自信がなかった』

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その日、薫はとうとう工房には現れなかった。
結城は、約束をすっぽかされて少々憤慨して自宅に帰った。
そんな結城に、姉・小百合がお茶を入れながら語り掛けて来た。

「司、薫さんのことだけど。
この間、薫さんここに会いに来たでしょ?
あの時薫さんは何を言いたかったのか、あなたは未だそれを聞いてあげてないわね。
薫さんがどんな気持ちか、あなたにだって分からない訳じゃないでしょ?
会ってあげなさい。
女は愛のためなら、傷付くことなど恐れないわ。
あたしだって磯崎先生のことで傷付いたわ。
だからって、姉さんが不幸だったと思う?
ううん。
先生は私に楽しい思い出も一杯残してくれた。
あたしは後悔していないわ。
司、女にとって一番辛いのは愛する人が振り向いてもくれないことよ。
会いなさい、薫さんに。
さっき、薫さんが表に来ていたわよ」

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姉に促された結城は、後日改めて薫に手紙を出した。
その文面には、もう一度会いたいという結城の気持ちが率直に綴られていた。
受け取った薫は、感激して大喜びだ。
今度こそ伝えられる。
愛の告白が出来る。
薫が浮かれていると、傷心旅行から帰国していた母・マキ水穂(野川由美子)に、
散々冷やかしを入れられてしまうのだった。

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再度の約束の日、薫に会うために工房を出ようとした結城の前に思わぬ人物が現れた。
それは、敬子の両親(平泉征、結城美栄子)であった。
両親の訪問目的は、結城にとって衝撃的な事実を報せるためのものだった。

『それが、長い別離の始まりになろうとは、
この時の薫には知る由もなかったのである』

ドラマ アリエスの乙女たち(第09話) [サンテレビ] 2014年01月22日 15時00分00秒(水曜日)

<中尾彬:関連作品>


テーマ:懐かしのドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

アリエスの乙女たち:8話
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8話「男の決着」脚本:大原清秀

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保

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津川敬子:相楽ハル子

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結城小百合:大場久美子

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磯崎志乃:奈月ひろ子

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長谷川千草:藤代美奈子

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芝園道代:初井言榮

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来栖順子:佐藤万理

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新谷由香:桂木文

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大下直樹:宅麻伸

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磯崎淳一郎:中尾彬

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長谷川欣吾:高橋昌也

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マキ水穂:野川由美子

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久保哲也:若林豪

<ストーリー>
謹慎中の番長・結城司(松村雄基)は、
生徒会長・磯崎高志(石橋保)を校庭に引き摺り出すと、
因縁を付けて喧嘩を吹っ掛けた。
白昼堂々、大勢が見守る中の出来事だった。
高志は応じようとしなかった。
それでも、結城は一方的に高志を殴り倒した。
騒ぎを知った教師・大下直樹(宅麻伸)が駆け付けて現場は騒然となった。
大下教師が止めても聞かず、級友・久保恵美子(佐倉しおり)が止めても聞かず、
結城は高志を殴り続けた。
とうとう高志が気絶すると、結城はやっと手を止めて校庭から立ち去って行った。

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これを受けて、仰星高校では緊急職員会議が開かれた。
校長・芝園道代(初井言榮)は、これ迄退学処分だけは避けようと解決策を模索して来た。
しかし、二度続けての暴行事件となると見逃す訳にはいかなかった。
退学処分已む無し。
誰もがそう判断する中で、被害者の高志だけが一貫して退学処分に反対していた。
原因は自分にある。
結城の言い分を聞いてやって欲しい。
聞けば必ず納得出来る。
高志は、芝園校長に二人きりで会って結城から事情を聞いて欲しいと訴え出た。
何やら訳ありと察した芝園校長は、
結城に最後のチャンスを与えることにした。
それは、校長室で一対一で話し合うことだった。
にも関わらず、結城は中々校長室へやって来なかった。
痺れを切らした高志は、結城の自宅を訪ねて校長室へ行くよう説得した。
それでも、結城は呼び出しに応じようとしなかった。
芝園校長は、一晩校長室で待ち続けた翌朝に苦渋の決断を下した。
結城司を退学処分に処す。
高志の執り成しも、芝園校長の寛大さも、全て棒に振った結城に突き付けられた当然の結論だった。

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正式に退学処分が決定した結城は、
予てから通い詰めていた陶工・長谷川欣吾(高橋昌也)に弟子入りした。
無学でぶっきら棒だが、結城には陶芸に掛ける真剣な情熱があった。
長谷川は、そんな結城の意を汲んで弟子入りを許可してやるのだった。

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その頃、最後まで結城の退学阻止に尽力した高志は、
自室で物思いに耽っていた。
校長室への弁明を説得に行った夜、結城は高志にこう言った。
「どっちかに決めるんだな。
そう言えば分かる筈だ」
これが、高志はずっと引っ掛っていた。
薫と恵美子。
高志は2人共好きだった。
だが、それではいけないということは結城に言われなくても判っていた。
高志は、ずっと母が父の浮気で苦しむ姿を見てきた。
父のような男になりたくない。
なのに、今の自分は父と同じになろうとしている。

その晩、高志は久々に父・磯崎淳一郎(中尾彬)と語らう機会を持った。
磯崎は、高志の部屋に上がり込むとポツリポツリと話し始めた。
磯崎は女癖は悪いが、感性は鋭い男だ。
苦悩する息子を見て、何を抱え込んでいるかを容易に見破ることが出来た。

「高志、何を考えているんだ?
女のことだろ。
俺はな、大した作家じゃないが人間を見るのが商売だ。
お前の近頃の様子を見れば、何を考えているか位は分かる。
振られた悩みでもあるまい。
とすれば、お前の悩みは多分複数の女を同時に愛してしまったことだな。
人間も動物だよ。
哺乳類の中でな、一夫一婦制を保っているのは、
狼と、確かモグラかカモノハシ、2種類しか居ない。
人間は、無理な暮しをしてるんだよ。
高志、相手は誰だか知らんが、
どちらの女にも決められないんなら、二人共愛せ。
男と女のことは楽天的に考えろ。
いつか、結論が出るもんだ。
何らかの結論がな」

『高志は、初めて父の悲哀を感じ取っていた。
一人の男としての父の悲哀を。
そして又、何時に無い淳一郎の慈愛深い態度に、
何か異様なものを覚えていた』

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結城が退学処分を食らった後、
恋人・津川敬子(相楽ハル子)も又学校に退学願を出していた。
敬子は一途だった。
結城は敬子に冷たかったが、それでもずっと慕い続けて来た。
結城の来ない学校に行く意味はない。
迷わず決断が出来た。
恋の為なら自分を捨てられる。
それが敬子だった。

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女子高生・水穂薫(南野陽子)は、これが羨ましかった。
プライドの高い薫には、そんな真似は中々出来なかった。
本当は結城が好きなのに、それを表に出すのは嫌だった。
あんな奴のことなんか何とも思ってないと、意地ばかり張ってしまう。
そんな自分が嫌だった。
それに、好きなのに違うと強がってみせるのはとても苦しいことだった。
素直に自分を出せたらどんなにいいだろう。
「敬子さん、あなたは立派よ。
形振り構わず学校まで辞められる。
なのに私は……」

『今、薫は司への愛に目覚めていた。
その愛が、堰を切った奔流のように駆け巡った。
何と言われてもいい。
この想いを司に伝えたいと思った』

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薫は結城を訪ねることにした。
結城は道路工事のアルバイトで生計を立て、
陶工・長谷川欣吾(高橋昌也)の工房に通って修行に励んでいた。
工事現場へ行ってみると、結城は汗を流して作業に追われているところだった。
声を掛けようかと迷っていると、
見覚えのある女が作業員達にアイスを配っているのが見えた。
敬子だった。
可愛い差し入れに、みんな大喜びだ。
だが、結城だけが受け取ろうとせずにアイスを放り投げていた。
「余計な真似はしなくていい。
俺のために学校を休んでどうするんだ。帰るんだ。
敬子、俺にいくら付き纏っても無駄だ。いいな」
結城は敬子を無視して、また作業に戻って行ってしまった。

『もし、愛を告白すれば自分もあのようにあしらわれるかもしれない。
それでも良い。
薫はそう決意していた』

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その日、薫はマンション前で結城の帰宅を待った
バイトを終えた結城が現れると、薫は駆け寄って声を掛けた。
「結城さん、暫くです」
やっと会えた。
会って話が出来る。
薫は嬉しかった。
どんなに待ち望んだことか。
なのに、いざその時になると中々二の句が継げなかった。
「どうしても話があって」

薫は、結城のマンションに招き入れられた。
結城の姉・結城小百合(大場久美子)は、
気を使ってお茶の準備を始めてくれた。
結城の態度はいつもぶっきら棒だ。
今日も薫に素っ気ない。
それは、結城もまた薫を意識しているからに他ならなかった。
薫は懸命に声を絞り出した。
「結城さん、私……」

『薫は心の中で叫んでいた。
あなたが好きです。
共に生きたいと。
だが、言葉が出なかった』

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薫と結城の間で気不味い沈黙が流れたその時、
結城家の電話が鳴った。
それは、磯崎が失踪したという連絡だった。

『今、一つの愛の決着が着こうとしていた。
それが、薫と恵美子にも大きな変転を齎すことになろうとは』

ドラマ アリエスの乙女たち(第08話) [サンテレビ] 2014年01月21日 15時00分00秒(火曜日)

<高橋昌也:関連作品>

テーマ:もう一度見たいドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

アリエスの乙女たち:7話
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7話「真昼の決闘」脚本:長野洋

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保

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津川敬子:相楽ハル子

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結城小百合:大場久美子

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磯崎淳一郎:中尾彬

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磯崎志乃:奈月ひろ子

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長谷川千草:藤代美奈子

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ヒガシヨウコ:速川明子、松本明子、滝あゆみ、鈴木倫子、児玉陽子

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芝園道代:初井言榮

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来栖順子:佐藤万理

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大下直樹:宅麻伸

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教師:小出綾女

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久保小夜子:梶芽衣子

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長谷川欣吾:高橋昌也

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マキ水穂:野川由美子

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久保哲也:若林豪

<ストーリー>
仰星高校職員室で緊急会議が開かれた。
番長・結城司(松村雄基)が、生徒会長・磯崎高志(石橋保)を暴行したことが知れたのだ。
保健室で治療を受けた被害者の高志は、
担任教師・大下直樹(宅麻伸)の事情聴取に何も答えようとしなかった。
これを受けて、芝園校長(初井言榮)は、双方の保護者を学校に呼んで話を聞くことにした。
まずは、結城の姉・結城小百合(大場久美子)が校長室に呼ばれた。
芝園校長は、事の経緯を説明した上で小百合に尋ねた。

「弟さんは、磯崎高志君に対して異常とも思える程の敵意を抱いているように見えます。
それは磯崎君は生徒会長を務める程の優秀な生徒ですし、
一方弟さんの方は、お姉様の前でこんなことを申し上げるのは何ですけれど、校内一の不良と言われている生徒です。
何かにつけて比較されて面白くないのは当然だと思います。
それにしても、あの敵愾心は只事ではありません。
その辺の事情について、何か思い当たることは御座いませんか?」

訊かれて小百合はピンと来た。
弟はずっと小百合と高志の父・磯崎淳一郎(中尾彬)との交際に反対していた。
小百合が磯崎と小競り合いになった時は、姉を守ろうと真っ先に駆け付けて磯崎を殴り飛ばした。
今回殴った相手はその磯崎の息子だ。
姉を寝取られた恨みを息子に向けたと容易に察しが付いた。
固まった小百合を見て、芝園校長はその動揺を見て取った。
「お心当たりがお有りのようですね」
小百合は下手な嘘を付いて誤魔化した。
「いいえ、何も」

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続いて、高志の母・磯崎志乃(奈月ひろ子)が校長室に呼ばれた。
同席していた小百合は針の筵だった。
志乃とは、愛人と本妻の関係なのだ。
芝園校長は、志乃にも暴行の原因に心当りがないか尋ねた。
志乃は、即座に否定した。
「高志が暴力行為を受ける理由等、ある筈が御座いませんわ。
それとも、こちらの方には何かお心当たりでもお有りになるのかしら?」
志乃の皮肉が、小百合にグサリと突き刺さった。
続けて、志乃は芝園校長に要望を伝えた。
「ともかく、この様な行為に対しては断固たる処置を取って頂くようにと、
主人にもキツく言われて参りました」
加害者側の父兄である小百合は、何も言うことが出来なかった。

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その頃、女子高生・水穂薫(南野陽子)は、
番長・結城の恋人・津川敬子(相楽ハル子)に呼び出しを受けていた。
場所は、人気のない雑木林の中だった。
敬子は薫に訴えた。
「司はここで磯崎を殴ったわ。
何故殴ったの?
彼は訳もなく人を殴るような人間じゃないわ。
原因はあんたよ。
それ以外考えられないわ。
司は、あんたを知ってからすっかり変わってしまったわ。
そうよ、今彼の頭の中はあんたの事で一杯なのよ。
あんた、彼のことどう思ってるの?」
敬子に問い詰められて、薫は惚けた。
「別に。何とも思っちゃいないわ」
その瞬間、敬子は薫を張り倒した。
「何するのよ?!」と薫が睨み付けると、敬子は途端に俯いた。
「御免、御免なさい。
お願い、水穂さん。彼のこと少しは考えてあげて。
彼はあんたの事が死ぬ程好きなのに、
振り向いてもくれないんじゃ司があんまり可哀想で。
あたし見てられない。
お願い、彼の方を振り向いてあげて。
お願いよ、水穂さん」
敬子は何時に無く低姿勢だった。
どうしてなのか、薫にはその理由が判らなかった。
「あなた、結城さんのことが好きだったんじゃないの?」
薫が尋ねると、敬子は苦しい胸の内を打ち明けた。
「好きよ。死ぬ程好きよ。
好きだから、彼に辛い思いをさせたくないの。
こんな事、あんたに頼むなんて悔しい。
殺してやりたい程悔しい。
でも、彼の事考えると……」
敬子はその場に泣き崩れた。
「愛してる。愛してるのよ、彼のことを」

『初めて知る、鮮烈な愛の形であった。
例え自らは満たされなくとも、愛する者の幸せを願って身を引く。
これが真実の愛というものであろうか?』

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その日、都心のファッション会場では、
薫の母・マキ水穂(野川由美子)の新作発表が開催されていた。
会場には大勢の人々が詰め掛けていた。
新作は、どれも好評のようだ。
人々は、拍手喝采で讃えた。
ショーの締め括りに、マキ水穂はステージに立って客席に手を振った。
その時、マキ水穂は気付いた。
客席に前夫・久保哲也(若林豪)が居る。
目が合ったので、2人は互いに会釈した。
マキ水穂は、嬉しかった。
かつて、マキ水穂はデザイナーの仕事が忙しくなったことで久保と別れた。
決して憎しみ合ってではなかった。
余りに住む世界が違い過ぎたのだ。
久保は平凡な会社員で、マキ水穂は世界的に有名なデザイナーになろうとしていた。
生活は当然擦れ違った。
久保はマキ水穂に言えなかった。
キャリアを捨てて家庭に入って欲しい。
そんなことを言えば、今までの努力が全て無駄になる。
そこで、久保は自ら身を引く決心を固めてマキ水穂に離婚届を出した。
2人にはそんな因縁があった。
それから17年が経過していた。
パリを活動拠点に大成功を収めたマキ水穂は、
娘の薫を連れて日本に帰って来た。
薫には、すぐに友達が出来た。
それが、久保の娘・久保恵美子(佐倉しおり)だった。
何という偶然だろう。
以来、マキ水穂は娘の父兄という形で久保との交流を再開していた。
久保は再婚して別に家庭を持っている。
それは分かっていたが、久保への想いは日に日にぶり返していた。
やり直したい。
マキ水穂の心には、ずっと久保への未練が燻っていた。

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ショーを終えたマキ水穂は、久保を探した。
久保は駐車場で見つかった。
駆け寄ろうとして、マキ水穂は思わず物陰に身を隠した。
久保は女と話し込んでいた。
相手は、久保の現妻・久保小夜子(梶芽衣子)だった。
耳を澄ますと、2人の会話が聞くともなしに聞こえてきた。

久保は、現妻・小夜子を説得しているところだった。
マキさんとも薫さんとも二度と会わないで欲しい。
小夜子がそう念押ししたにも関わらず、久保はその約束を破っていた。
夫に不信感を抱いた小夜子は、実家へ帰っていた。
そして、今日もまた久保は禁を破って前妻・マキ水穂のショーへやって来た。
それを目撃した小夜子は会場を飛び出し、
久保は懸命に引き止めているのだ。

「帰って来てくれないか。帰って来て欲しい。
今更弁解はしない。
確かに水穂マキと再会した時に動揺したのは事実だ。
しかし、だからと言って君と恵美子を捨ててもう一度彼女とやり直そうと考えた訳じゃない。
無論、彼女だってそんな気は毛頭ないだろう。
私は今日彼女のショーを見に来た。
自分の中の気持ちをハッキリと確かめるためにだ。
私は確信した。断言してもいい。
仮にこの先偶然彼女と会うことがあっても、
二度と動揺することはないだろう。
他人なんだよ。
デザイナー・水穂マキと私は今はもう全く無縁の人間なんだ。
帰って来て欲しい、小夜子。君が必要だ。
恵美子の為にも、いや私自身の為に帰って来て欲しい」

このやり取りを立ち聞きしていたマキ水穂は、思わず涙ぐんだ。
もうやり直せない。
そんな事は判っていた筈なのに、改めて久保の口から聞くとショックだった。
いつかやり直せる。
少しだけ残っていた期待が、その瞬間完全に崩れ去った。
久保は、もう別の人のものなのだ。

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帰宅後、マキ水穂は娘・薫を呼んで伝えた。
来週イスラエルへ取材旅行に旅立つことが決まったと。
「一緒に来る?」
マキ水穂が確かめると、薫は学校があるからと断った。
薫は当分一人暮しをすることになりそうだ。
こんな事は、今回が初めてではない。
また母が気紛れを起こしたのだろうと、薫は高を括っていた。
マキ水穂は、娘に気取られまいと努めて明るく振舞った。
薫もまた、気になる人が居るから日本を離れたくないとは言えず、
母と冗談を言い合ってその場を誤魔化していた。

『その時、薫は母が哲也への想いを完全に断ち切るために旅立とうとしていることに、
未だ気付いていなかった』

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こうして、マキ水穂はイスラエルへ旅立って行った。
母を送り出した後、薫は1人切りになったマンションで鏡を見つめて自分を励ました。
週末は予定がある。
級友・恵美子の父・久保と会食するのだ。
愛馬エレクトラを失った薫にとって、これは唯一の息抜きだった。
その日、薫は久保に海の見えるレストランへ招待された。
お喋りして食べ終わった後、薫と久保は砂浜に出て行った。
薫は久保と居ると楽しかった。
父が出来たみたいで嬉しかった。
甘えさせてくれる人が欲しかった。
薫は靴を脱いで波打ち際で戯れた後、遊び疲れて砂浜にゴロリと横になった。
隣に久保が座っている。
それだけで満足だった。
ところが、今日に限って久保の様子は何処かおかしかった。
硬い表情のまま、何か言いたげな素振りを見せていた。
久保が気不味そうに切り出した。
「薫さん」
薫が呼び捨てでいいと言っても、久保は何時に無く他人行儀な態度を崩そうとしなかった。
何か深刻な話があるんだ。
察しのいい薫は、自分から久保に言ってやった。
「おじ様とママの事なら知ってます。
私、もしかしたらおじ様の子供かもしれませんね?」
薫は、前に久保と母の会話を立ち聞きしたことがあった。
そんな事くらい知っている。
出し抜かれた久保は、薫から目を逸らして立ち上がった。
「君のお母さんは違うと言ってる。
君は私の子供ではない。
私の子供は恵美子だけだ。
薫さん、君とこうやって会うのも今日限りだ。
今後二度と二人っきりで会うことはない。
いや、勿論恵美子のクラスメイトとして家に遊びに来る事はいい……
いや、家にも来ないで欲しい」
突然の別れ話に困惑した薫は、久保に訴えた。
「何故?どうして急にそんな事を?訳を話して下さい」
久保は何も答えようとしなかった。
薫は無性に腹が立って来た。
「そう、おじ様は私が嫌いになったのね。
いつも問題ばかり起こしている私なんかが恵美子さんの友達じゃ迷惑なのね。
そうよ、そうに決まってるわ。
分かりました。二度と私おじ様に会いたいなんて思いません。
恵美子さんとも学校でも口も聞きません。
いいのよ、もう。何も聞きたくない!」
薫は居た堪れなくなってその場から駆け出した。
久保は薫の後ろ姿を見送りながら呟いた。
「許してくれ、薫」

『父かもしれぬと慕った人の思いもかけぬ決別の言葉は、
薫の心に深い傷跡を刻み込んだ。
そして、今その傷を癒してくれる母は遠い異国の地を旅しているのだ。
孤独であった。
水穂薫は、今誰よりも孤独であった』

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薫は放心状態で繁華街をブラついた後、
結城のマンション前に辿り着いた。
何故だか分からないが、無性に結城に会いたくて仕方がなかった。
薫は、結城が現れるのをずっと待ち続けた。
暫くすると、帰宅途中の結城がフラリと現れた。
「薫?薫じゃねえか。どうしたんだ?」
結城が呼掛けると、薫は駆け寄って結城に抱き着いた。
「何も聞かないで、何も言わないで、ちょっとの間こうしていて」
思い詰めた表情の薫を見て、何かあったらしいと察した結城は抱擁に応じた。
ところが、結城がそのままキスしようとすると薫は身を捩って拒んだ。
「ありがとう。あなたの胸、とっても温かかったわ」
薫は礼を言って、結城の元から駆け出して行った。

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翌日、学校から謹慎を食らっていた結城は、
やるせなく馬場で物思いに耽っていた。
結城の処分は目下学校で協議中だ。
このまま退学になったら、姉の苦労を踏み躙ることになる。
教師達の意見は退学已む無しが大勢だった。
そんな中、被害者の高志だけが反対してくれていた。
正直複雑な心境だった。
そんな結城に、薫がそっと傘を差し出した。
いつの間にか雨が降り出していた。
薫には、予てから結城に訊いてみたいことがあった。
「前にあなたこんな事言ったわね。
男にとって行動は第二、言葉は第三の価値しかないんだよ。
教えて、男にとって一番価値のあるものって何なの?」
結城は、薫の真剣な眼差しを見て取って応えた。
「言葉は行動を説明し、付け足す為の表現だ。
そして、行動は生きる姿勢。
人はその生き方によって行動が決まり、
行動によって言葉が生まれるんだ。違うか?」
それは結城の哲学だった。
結城は不器用なりに考え抜き、一つの結論を導き出していたのだ。

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放課後、只ならぬ表情の結城が学校に現れた。
結城は高志を見付けると、有無を言わさずグラウンドに引っ張っていった。
「俺ともう一度やりあえ。
俺はお前が嫌いだ。お前も俺が嫌いな筈だ。
だからここで最後の決着を付けたい。
手前の親父が姉貴にしたことも気に入らねえ。
手前の煮え切らない態度も気に入らねえ。
さあ、ここで何もかもカタを付けてやる。掛かって来い!」
他の生徒たちが騒然と見守る中、結城は高志を殴り倒した。

『結城司の退学が決定的となった瞬間であった』

ドラマ アリエスの乙女たち(第07話) [サンテレビ] 2014年01月20日 15時00分00秒(月曜日)

<若林豪:関連作品>


テーマ:もう一度見たいドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

アリエスの乙女たち:6話
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6話「恐ろしい破局」脚本:長野洋

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保

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津川敬子:相楽ハル子

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新谷由香:桂木文

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結城小百合:大場久美子

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磯崎志乃:奈月ひろ子

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長谷川千草:藤代美奈子

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ヒガシヨウコ:速川明子、橋本実加子、松本明子、鈴木倫子、滝あゆみ、児玉陽子

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磯崎淳一郎:中尾彬

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大下直樹:宅麻伸

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芝園校長:初井言榮

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長谷川欣吾:高橋昌也

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マキ水穂:野川由美子

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久保哲也:若林豪

<ストーリー>
馬術大会2日目、女子高生・水穂薫(南野陽子)は、
仰星高校の期待を一身に背負って個人競技・中障害飛越に出場することになった。
ところが、薫の愛馬エレクトラの状態を確認したところ、
予てから負傷していた脚の状態が明らかに悪化していることが判明した。
これ以上は無理と判断した薫は、
顧問教師・大下直樹(宅麻伸)と相談して棄権を申し出ることにした。
名門校の面子に拘る芝園校長(初井言榮)は、これに慌てふためいた。
そんなドタバタを見て
薫と対立していた元・馬術部女子部員達が「それ見たことか」と嘲笑った。
これで闘争心に火が着いた薫は、
前言撤回して強行出場を宣言するのだった。

「エレクトラ、これが最後よ。頼むわね」
いよいよ、競技が始まった。
薫はエレクトラに跨がり、コースに出た。
合図と共に駆け出したエレクトラは、バーを次々飛び越えて行った。
本来なら、エレクトラには1m30cmのバーを飛び越える力があった。
だが、万全でない脚の状態で2日に渡る過酷な競技をこなしてきたエレクトラは、
1m20cmのバーですら引っ掛ける有様だった
薫は、馬上からエレクトラに呼び掛けた。
「エレクトラ、もういいの。お止め」
それでも、エレクトラは競技をやり遂げようとバーに挑み続けた。
主人の要求に答えようと、痛む脚を堪えて走り続けた。
そして、最後のバーを飛び越えたところで力尽きて地面に横倒しになってしまうのだった。

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こうして、事態は最悪の結果に終った。
競技に失格しただけでなく、エレクトラには致命的な傷を負わせてしまった。
獣医師による診察の結果、エレクトラはもう手遅れだと診断がなされた。
馬がここ迄脚を駄目にすると、もう生きていくことは出来ない。
いっそのこと楽にしてやった方が馬のためにもいい。
獣医師は、そう言ってエレクトラの薬殺を打診した。
薫は、「絶対に嫌」と拒否した。
診察に立ち会っていた大下教師と主将・磯崎高志(石橋保)は、
苦渋の決断だが仕方がないと薫を説得した。
放置すれば、感染症を起こして更に苦しむことになり、
何れにせよ死んでしまうのだ。
薫にもそれは判っている。
なるべく楽に死なせてやりたい。
仕方なく、薫は無言で頷いた。
一同の了承を得たと見た獣医師は、注射器を取り出した。
その瞬間、薫は激昂して獣医師に掴み掛った。
「出てって。
エレクトラは絶対に殺さないわ。
出てって。
みんな出てってよ。出てってよ。
誰もこの中へは入れさせないわ」
薫は獣医師たちを厩舎から叩き出すと、扉を閉鎖して中に立て籠もった。

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無人の厩舎で、薫はエレクトラに謝った。
「ごめんね、エレクトラ。こんな目に遭わせてしまって」
どんなに詫ても足りない。
後悔してもし切れない。
涙が止まらなかった。
薫は、獣医師が落としていった注射器に目をやると、
意を決して拾い上げた。
「エレクトラ、私の手でお前を天国へ送ってあげる。
それが私に出来るたった一つの……」

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数分後、薫が厩舎の扉を開けて出て来た。
「終ったわ。エレクトラは天国へ逝ったわ」
そう言って、薫は手に持っていた注射器を落とした。
心配して厩舎の前に集まっていた関係者一同が中へ入ってみると、
既にエレクトラは薬殺された後だった。
立ち尽くす薫に、涙目の番長・結城司(松村雄基)が詰め寄った。
「何が天国だ。地獄だよ。そうさ。
エレクトラはお前のために地獄に堕ちたんだ。
馬鹿野郎。馬鹿野郎!」
薫は一言も言い返せなかった。
結城は、終始エレクトラを走らせることに反対していた。

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気が付くと、薫は放心状態で林の中を歩いていた。
もう居ない。
大事なエレクトラが居ない。
仔馬の頃から一緒に育ったエレクトラが。
何よりも誰よりも大切な宝物が。
薫は猛烈な自責の念に苛まれた。
「エレクトラ、ごめんね。
許して、エレクトラ」
薫は心の中で手を合わせて、何度も謝った。

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その場に泣き崩れていた薫に、誰かの車がクラクションを鳴らした。
薫の親友・恵美子の父・久保哲也(若林豪)だった。
心配して追い掛けて来てくれたのだ。
久保は車を降りて、興奮状態の薫に駆け寄った。
「落ち着け。落ち着くんだ。
君の気持ちはよく分かる。
エレクトラが天国へ逝ってどんなに悲しいか」
久保の慰めの言葉に、薫は半狂乱で反論した。
「天国なんかじゃないわ。
あの人が言った通り、エレクトラは地獄へ堕ちたのよ。
そうよ。
エレクトラは苦しんで苦しんで苦しみ抜いて死んでいったわ。
これが地獄じゃなくて何なのよ!
私よ。エレクトラを地獄へ落としたのはこの私なのよ」
泣きじゃくる薫に、久保は優しく諭した。
「違うんだ。エレクトラの死に顔は綺麗だった。
美しい死に顔だった。
何故だか分かるか?
それは、エレクトラが立派に生き抜いたからだ。
エレクトラは君の為に喜んで走った。
君の為に力の限り飛んだ。
そして、君に抱かれて安らかに天国へ旅立った。
だから、あんな美しい死に顔をしていたんだ。
そうだよ、エレクトラは天国へ逝ったんだ。
今君が自棄になっては、立派に生き抜いたエレクトラの死を汚すことになる。
そうは思わないか?」
薫は散々泣いた後、久保に説得されて車で自宅に送って貰うのだった。

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翌日、薫の親友・久保恵美子(佐倉しおり)は、
薫が中々教室に現れないことを心配していた。
気が付くと、恵美子は級友・津川敬子(相楽ハル子)を睨み付けていた。
視線を感じた敬子は、恵美子の元に歩み寄った。
「何よ、その顔は?何か文句でもあるって言うの?
言いたいことは分かってるさ。
あんたの大好きな水穂薫の馬を殺したのは、あたし達だって言いたいんだろう?
確かに腹帯を切ったのはあたしさ。
でもね、その後しっかり治療していればエレクトラはあんなことにはならなかったんだ。
それをあいつがイキがって乗り回しているから、死んじまったんじゃないか」
開き直る敬子に恵美子が反論しようとした瞬間、薫が教室に入って来た。
「その通りよ。エレクトラを殺したのは私よ。それがどうかしたの?」
薫は、虚を衝かれた敬子の前に立ち塞がって続けた。
「何よ、その顔は?
エレクトラが死んで私が三日三晩泣き暮すとでも思っていたの?
お生憎様。私はこの通り元気に出て来たわ。
でも、これだけは言っておく。
あなた達がやった卑怯な真似は決して忘れない。
絶対に許さない」

『その強気の言葉と裏腹に、
エレクトラを失った薫の悲しみを誰よりも強く感じているのが恵美子であった』

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その夜、繁華街をブラツイていた番長・結城は、
姉・結城小百合(大場久美子)を目撃した。
小百合は、小説家・磯崎淳一郎(中尾彬)と小競り合いになっていた。
磯崎は女連れだ。
引き留めようとする小百合を振り切って、ホテルへ女を連れ込もうとしているようだ。
磯崎が小百合を突き飛ばしたのを見て、
結城は駆け寄って殴り飛ばした。
すると、小百合が結城の頬を張って叱り付けた。
「馬鹿。大人の世界に口を突っ込むなと言ったのが未だ分からないの?」
「姉さん、こんな目に遭って悔しくないのかよ?こんな奴にいいように弄ばれて恥ずかしくないのかよ?」
「あなたに何が分かるって言うの?
あなたには、大人の本当の愛がどういうものか何も分かっていないのよ」
「ああ、分からないね。こんな奴の何処がいいって言うんだよ」
結城が小百合と押し問答を繰り返していると、立ち上がった磯崎が歩み寄って来た。
「君が、結城君の弟かね?
殴りたかったら、もっと殴りなさい。
ついこの間も、息子に殴られたばかりだ。
確かに、君達若い者から見れば私はどうしようもない女ったらしの碌でなしかもしれない。
だがな、君は一つだけ誤解しておる。
私は君の姉さんを、弄んだ覚えはないよ。
愛していた。真剣に愛していたんだ。
愛は移ろいやすいもんだ。
どんなに激しい愛でも、必ず覚める時が来る。
そう、私と結城君との愛はもう終ったんだよ。
何と言われようと、それが私の生き方なんだ。
愛が冷めたものを、形だけに捕らわれて関係を続けることは出来ないんだよ。
常に新しい愛を求めて生きていく。
私にはね、そういう生き方しか出来ないんだよ」
磯崎は、全く悪びれる様子は無かった。
歯噛みする結城と小百合を尻目に、そのまま女の手を引いてホテルへと消えてゆくのだった。

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翌日の放課後、結城は磯崎の息子・高志を雑木林に呼び出して詰め寄った。
「姉貴はやっとお前の親父と別れる気になったらしい。
とは言うものの、早い話が捨てられたんだ。
何だかんだと小難しい屁理屈を並べ立てていたが、
お前の親父が姉貴を弄んで捨てたことに変わりはねえ」
結城が毒突くと、高志は言い返した。
「それで俺にどうしろって言うんだ?
親父から慰謝料でも取って来いって言うのか?
自分だけが被害者だと思うな。
親父のせいで、母は完全にノイローゼになった。
お前の所だけじゃない。
俺の家だって地獄なんだよ!」
高志が立ち去ろうとすると、結城は呼び止めて続けた。
「未だ終わっちゃいねえよ。
磯崎、お前薫とエクボのどっちが本当に好きなんだ?
2人に俺の姉貴みたいな思いはさせたくないからな。
どっちだ?どっちを取るんだ?」
問われた高志は、結城を睨み付けて答えた。
「俺は、薫さんも恵美子さんも好きだ。
どっちも同じ位好きなんだ。
自分でもどうしていいのか分からない。
どっちを取るかなんて、今の俺にはどうしても判断が付かないんだよ。
そうさ。俺はやっぱり磯崎淳一郎の息子だ。
俺の中にも親父と同じ淫蕩な血が流れているんだよ」
これを聞いて、結城は高志を殴り飛ばした。
高志は一歩も引かずに結城に叫んだ。
「殴れ。もっと殴ってくれ。
俺の中の汚れた血が残らず、残らず流れ出るまで殴ってくれ!」
それを受けて、結城は更に高志を殴った。
殴って殴って殴り続けた。
高志は無抵抗のまま結城に殴られ続け、顔中を腫れ上がらせて血を吹き出した。

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高志が結城に半殺しにされたという噂はすぐに学校中に広まった。
当然、薫の耳にも入った。
その日、薫は結城の姿を見付けると後を追って行った。

『仰星高校に吹き荒れる嵐は、更にその激しさを増そうとしていた』

ドラマ アリエスの乙女たち(第06話) [サンテレビ] 2014年01月16日 15時00分00秒(木曜日)

<主題歌:柏原芳恵>

テーマ:懐かしドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

アリエスの乙女たち:5話
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5話「親たちの秘密」脚本:大原清秀

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保、磯崎志乃:奈月ひろ子

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津川敬子:相楽ハル子

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新谷由香:桂木文

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長谷川千草:藤代美奈子

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ヒガシヨウコ:速川明子、松本明子、鈴木倫子、児玉陽子、滝あゆみ

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磯崎淳一郎:中尾彬

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大下直樹:宅麻伸、芝園校長:初井言榮

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久保小夜子:梶芽衣子

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長谷川欣吾:高橋昌也

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マキ水穂:野川由美子

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久保哲也:若林豪

<ストーリー>
女子高生・水穂薫(南野陽子)は、
馬術部主将・磯崎高志(石橋保)と雑木林で熱い抱擁を交わしていた。
そこへ、またしても番長・結城司(松村雄基)が現れた。
邪魔が入って薫がその場から逃げ出した後、
高志は結城に弁解した。
「結城、薫さんが悪いんじゃない。
僕の方からしたことだ」
結城は、これ迄何度となく高志に絡んでいた。
高志が憎い訳ではなかったが、高志の父に姉を取られたのが許せなかった。
八当りと知りつつ、結城はついつい高志に因縁を付けてしまうのだった。
「恵美子も好き、薫も好き。
お前、女ったらしの親父と何処がどう違うんだよ」
この一言にカチンと来た高志は、思わず結城を殴り飛ばしていた。
結城は捨て台詞を残して高志の元から立ち去った。
「恵美子もお前らを見てたよ。泣いてたぜ」

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その日、薫は同級生・久保恵美子(佐倉しおり)と一緒に下校した。
道中、恵美子は薫に尋ねた。
「薫さんは本当に高志さんを好きなの?
それとも、ただからかってるだけなの?
薫さんは本当は司さんが好きなのに、
その気持を押し潰そうとして、高志さんの気持ちを自分に向けようとしているでしょう?
私には分かる。
そして、薫さんは結果的には高志さんの心を弄んでいる。
高志さんがかわいそうよ」
図星を突かれて憤慨した薫は、恵美子を残して1人で帰って行ってしまった。

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薫に置いてけ堀を食らった恵美子は、
車で通りがかった薫の母・マキ水穂(野川由美子)に声を掛けられた。
マキ水穂は、恵美子を家まで送ってくれるという。
車中で、マキ水穂は薫の身の上話をしてくれた。
薫は母子家庭のフランス暮しで、幼少期から寂しい思いをして来た。
そこで、マキ水穂は少しでも薫の慰めになればと買い与えたのが愛馬エレクトラだった。
以来、薫はエレクトラを何よりも大切にして来た。
「恵美子さん、薫があなたに辛いこと言っても許してやってね。
お願いします」
マキ水穂は、とてもいい人だった。
娘のことを本気で心配していた。
先の衝突を見て、友達との仲を執り成しているのだ。
恵美子は、マキ水穂に答えた。
「私、何があっても薫さんが好きです」

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週末、薫は恵美子の父・久保哲也(若林豪)と会食することになっていた。
薫は、待ち合わせのレストランで久保を待った。
ところが、その日に限って待っても待っても久保は現れなかった。
薫が少々苛々していると、店員が伝言を預かったと手紙を持って来た。

「薫さん、やはり私たちはしばしば会うのは避けるべきだと思う。
馬術大会も間近だ。君の健闘を祈る。久保哲也」

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久保が会食をすっぽかしたのには理由があった。
ここ最近久保の様子がおかしいのは、
妻・久保小夜子(梶芽衣子)も勘付いていた。
久保は娘の親友・薫の馬術練習を見学に行き、
落馬事故が起きた時はいち早く病院に担ぎ込んでいた。
薫の母・マキ水穂は、久保の前妻だ。
縒りを戻そうとしているのではないか。
薫と頻繁に会っているのは、その為ではないのか。
小夜子の心に、そんな疑念が膨らんでいた。
小夜子は、久保に訴えた。
「あなた、マキさんにも薫さんにも二度とお会いにならないで下さい」
久保は「判った」と小夜子に約束していた。
今夜、久保は妻との約束を守ったのだ。

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その頃、番長・結城は、
陶芸職人・長谷川欣吾(高橋昌也)の家に通い詰める毎日を送っていた。
結城は、たまたまショーウィンドウで見た壺の美しさに惹かれていた。
その作者が長谷川だと知ると、住所を調べて訪ねて行った。
弟子にして欲しい。
その一心だった。
長谷川は、見るからに頑固職人という気質の男だ。
礼儀作法も無ければ伝手もない結城は、すぐさま追い返されてしまった。
しかし、それでも結城は毎日通い詰めた。
長谷川の娘・長谷川千草(藤代美奈子)は、
結城の熱心さに打たれて父を説得した。
やがて、長谷川も結城の情熱が本物だと知ると、
工房の中に招いて陶芸の手解きをしてやるようになった。
姉と仲違いして道を見失いかけていた結城は、
やっと自分の生きる道を見出そうとしていた。

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結城には、もう一つやることがあった。
それは、薫の愛馬エレクトラの世話をすることだった。
落馬事故の細工をした犯人は、結城の恋人・津川敬子(相楽ハル子)だった。
薫の嘆願で罪にこそ問われなかったが、結城はずっと責任を感じていた。
そこで、少しでも罪滅ぼしになればと早朝厩舎に出向いて、
エレクトラの世話を買って出ていたのだった。
その日、結城は厩舎で薫と出会した。
薫は、誰かがエレクトラの世話をしてくれているのに気付いてはいたが、
それが誰かまでは知らなかった。
今日初めて、それが結城だと知った。

『その時、薫の全身を名状し難い痛みが貫いていた。
これが恋。
その思いに愕然とする薫であった。
だが、そんな純情を素直に表現するには、余りに誇り高い薫であった』

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薫は結城の好意が嬉しかった。
にも関わらず、それを表に出すのは嫌だった。
薫は態と結城に悪態をついた。
「勝手に私の馬に触らないでよ」
薫は結城から手綱を引っ手繰ると、エレクトラを厩舎から出した。
「今日からエレクトラに乗るわ」
それを聞いて、結城は驚いた。
エレクトラは、先日の事故で脚を負傷している。
回復はしているが、まだまだ万全ではない
結城が止めても、薫は聞く耳を持たなかった。
薫は、エレクトラに跨ってそのまま馬場に出て行ってしまった。
丁度馬場では馬術部顧問・大下直樹(宅麻伸)が、部員たちに発破を掛けているところだった。
一同と目が合うと、薫はもう引っ込みが付かなくなっていた。
「先生、私は大会にはこのエレクトラに乗って出ます」
薫はそう言って、エレクトラで障害を飛び越えてみせた。
通常より高い1m30cmの障害だった。
息を呑む一同に、薫は豪語した。
「私、エレクトラでなければ出場しません」

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いよいよ馬術大会の日が来た。
顧問・大下教師、芝園校長(初井言榮)、部員たちが見守る中、
薫はエレクトラで競技に挑んだ。
初日の調教技術検査の結果、主将・高志が1位で薫は5位に食い込んだ。
万全ではないエレクトラに無理をさせて、ギリギリ頑張った順位だった。
競技が終った後、薫は厩舎でエレクトラに語り掛けた。
「ごめんね、エレクトラ。
お願い、後1日だけ頑張ってね」
本当はこんなことさせたくなかった。
エレクトラの世話をしながら、薫の目に涙が溢れて来た。

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その夜、主将・高志の家に泥酔した父・磯崎淳一郎(中尾彬)が帰宅した。
馬術大会に出場中の息子を激励していた母・磯崎志乃(奈月ひろ子)は、
夫を出迎えて凍りついた。
何と、磯崎は女を連れて帰宅したのだ。
磯崎は面食らう妻と息子に、その女性・新谷由香(桂木文)を紹介して居間に引っ繰り返った。
高志は屈辱に震える母を庇って、磯崎を殴り飛ばした。
「父さん、父さんは恥ずかしくないのか?」
磯崎は悪びれることなく開き直った。
「女はいいもんだぞ。
この世の中に女以外何があるんだ?え?」
その瞬間、高志の脳裏に結城に言われた一言が蘇った。
「恵美子も好き、薫も好き。
お前女ったらしの親父と何処がどう違うんだよ」
俺に父を責める資格があるのか?
俺にも父と同じ血が流れているんじゃないのか?
高志の胸にそんな思いが去来した。
高志は、由香を家から追い返して何とかその場を収めた。
筆が進まなくなると、酒に逃げて女に走る。
そんな父を見ていると、やり切れない思いだった。

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大会2日目の競技は、小障害飛越であった。
馬に乗ってバーを飛び越える危険な競技だ。
難易度の高いこの競技は、訓練を重ねた騎手であっても落馬が続出する。
薫を心配して、母・マキ水穂が観客席から見守っていた。
薫とは二度と会わないと妻に約束した恵美子の父・久保も、
陶芸工房で修行中だった番長・結城も、
薫が気になって駆け付けていた。
薫はエレクトラを駆って、この日の競技を無事クリアした。
しかし、主将・高志は全く精彩を欠いていた。
恵美子のこと、薫のこと、父のこと。
立て続けに翻弄された高志は、競技に集中出来ずにまさかの落馬をしてしまったのだ。

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これが響き、仰星高校は団体優勝から脱落した。
馬術の名門校にとって、屈辱の惨敗だった。
残るは個人競技のみだ。
仰星高校の名誉に掛けて、これだけは絶対逃す訳にいかない。
可能性が残っているのは、午後の中障害に出場する薫だけだ。
薫には、部員全員、学校全体の威信が掛っていた。
だが、薫はともかくエレクトラはもう限界だった。
厩舎で確認すると、エレクトラの脚は熱で腫れ上がっていた。
薫は大下教師と相談して、棄権を申し出ることにした。

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ところが、これに納得しなかったのが退部した元女子部員達だった。
元女子部員たちは、大下教師に口々に詰め寄った。
「先生、何処まで薫さんを庇うんですか?」
「私達を追い出してたった一人の女子選手として出場しておきながら途中で棄権。
そんな勝手を先生は許すんですか?」
「私達が出ていれば、女子だけの種目位は入賞間違い無かったのにね」
「これで馬術の仰星の名も終りよ」
これを聞いてカチンと来た薫は、前言撤回して一同に啖呵を切った。
「先生、すみませんでした。
私、出場します。
私、無理は承知でエレクトラに賭けるわ。
いいえ、出るからには勝ってみせる!
誰が何と言おうと、私は決めたわ」
プライドの高い薫は、人に弱みを見せるのが大嫌いだった。

『今、仰星高校馬術部とエレクトラに恐るべき破局が訪れようとしていた』

ドラマ アリエスの乙女たち(第05話) [サンテレビ] 2014年01月15日 15時00分00秒(水曜日)

<佐倉しおり:関連作品>


テーマ:懐かしのドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

アリエスの乙女たち:4話
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4話「恋のスクランブル」脚本:大原清秀

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保

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津川敬子:相楽ハル子

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来栖順子:佐藤万理

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結城小百合:大場久美子

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長谷川千草:藤代美奈子

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ヒガシヨウコ:速川明子

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磯崎淳一郎:中尾彬、新谷由香:桂木文

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大下直樹:宅麻伸

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芝園校長:初井言榮

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松本明子、鈴木倫子、児玉陽子、滝あゆみ

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久保小夜子:梶芽衣子

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長谷川欣吾:高橋昌也

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マキ水穂:野川由美子

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久保哲也:若林豪

<ストーリー>
『水穂薫が仰星高校に転校してきて2ヶ月、
薫への反発を募らせた馬術部の女子部員たちは、
一斉に退部を申し出た。
それは、伝統を誇る仰星高校馬術部にとってかつて無い危機であった』

馬術大会の代表に2年生の水穂薫(南野陽子)が選ばれた。
これが切っ掛けで、馬術部女子部員全員が退部届を提出した。
3年生の部員を差し置いて、入部間もない薫が選ばれるのはおかしいという抗議の表明だった。
顧問教師・大下直樹(宅麻伸)は、これに対して一歩も引こうとしなかった。
それなら仕方がないと、全員の退部届を受理してしまった。
女子部員たちは、そんな大下教師に憤慨して部室から出て行ってしまうのだった。

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その日、薫は恵美子の自宅に招かれて夕食を御馳走になった。
恵美子の母・久保小夜子(梶芽衣子)は、娘の友達を歓迎してくれた。
丁度食べ終わったところで、恵美子の父・久保哲也(若林豪)が帰宅した。
恵美子は父にビールを注いで談笑を始めた。
家族団欒の微笑ましい光景だ。
これが薫には妬ましかった。
当たり前のように父が居て、母が手料理で饗してくれる。
母子家庭の薫には、この当たり前がなかった。
不愉快になった薫は、失礼しますと言って久保家から出て行ってしまった。
薫は帰り道に、邪な衝動が芽生えて来るのを感じていた。
「恵美子さんから、何もかも奪い取ってやりたい」

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翌日、薫は厩舎で馬術部主将・磯崎高志(石橋保)を捕まえた。
高志は恵美子の恋人だ。
薫は磯崎に自分のことを好きかどうか尋ねてみた。
高志は戸惑いながら答えた。
「好きだよ。変な意味じゃなくてね」
薫は微笑んで続けた。
「変な意味でも、私構いません。
もしそうだった、私もっと練習に打ち込みます」
薫に見つめられると、高志もマンザラではなかった。
いや、それどころか薫の魅力に急激に惹き込まれた。
高志の足が一人でに薫に歩み寄ったところで、2人は背後に視線を感じた。
番長・結城司(松村雄基)が立っていた。
薫は、それを見てそそくさと逃げ出した。
結城は高志に詰め寄った。
「お前も結構器用だな。
恵美子ってものがありながら薫にまで。
増して、お前は磯崎の息子だからな」
結城に冷やかされると、高志はムキになって否定した。
「父と僕とは違う。
僕は生涯掛けて、ただ1人の女性を愛し抜く」

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その夜、結城は仲間と繁華街をブラついていた。
そこで、結城は高志の父・磯崎淳一郎(中尾彬)を目撃した。
磯崎は、女を連れてホテルに入って行った。
相手は姉ではない。
別の女だ。
怒った結城は、自宅に取って返して姉・結城小百合(大場久美子)に報告した。
「姉さん、あんな奴とはもう別れてくれ」
結城が訴えても、小百合は手を止めなかった。
小百合は今、磯崎の下着を洗い終えて畳んでいるところだった。
どうしてそこ迄尽くすのか。
結城が苛立って下着を取り上げると、小百合は淡々と答えた。
「司、先生が女癖の良くない人だと姉さんが知らないとでも思うの?
でもね、先生はあたしを一番愛して下さってる。
あたしは信じ抜くわ。
信じることしか出来ない」

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一方、薫は新たな獲物に目を付けていた。
今度の獲物は、恵美子の父・久保だった。
薫は仕事帰りに久保を待ち伏せして、またレストランで食事を御馳走になった。
薫は久保にビールを注いで尋ねた。
「恵美子さんの注いだビールと私のビールと、どちらが美味しいですか?」
久保はそれに応えずに、薫に諭した。
「君、私達がこうして会うのはやはり不自然だ。
いいかい、君は私にとっては娘の友人だ。
その君と私が、こうして毎週会うのはどうも良くない。
お互い自制すべきではないかと思っている」
これを聞くと、薫は途端に涙ぐんだ。
久保もこれには困った。
慎重な言い回しをしたつもりだったが、
思春期の少女を傷付けてしまったようだ。
久保は仕方なく今の言葉を撤回した。
「判った。君がそうしたければ毎週会おう。
私は君の父親にはなれないが、少しは代りになれるかもしれない」
久保がそう言うと、薫は途端に笑顔を取り戻した。
「ありがとう、おじ様」

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翌日の放課後、薫が馬術練習を一休みしていると、
退部した女子部員たちが声を掛けて来た。
「これをあなたに上げるわ」
女子部員たちは、そう言って薫に千羽鶴を差し出した。
どういうつもりだろう?
薫が訝しんでいると、女子部員たちは取り繕った。
「そりゃあたし達は諍いをした仲だもの。
変だと思うでしょうけど、あたし達だって学校を思う気持ちに変わりはないわ。
仰星馬術部の名誉のために、あなたには是非個人優勝して欲しいのよ。
あなたもスポーツマンなら人の好意は素直に受け取って欲しいわ」
一応筋は通っている。
断る理由もないので、薫は「ありがとう」と言って千羽鶴を受け取った。
このやり取りの間、薫は愛馬エレクトラから少しだけ目を離していた。

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薫は再び馬術練習に戻った。
馬場に障害物コースが設けられ、これを飛び越える練習だ。
危険が高いので、絶対に気を緩めてはならない。
一緒に練習していた主将・高志は、薫に何度も注意を促した。
しかし、この日の薫は何処か集中力を欠いていた。
いつも見物に来る番長・結城が来ていないので、少々張り合いを無くしていたこともあった。
代わりに練習を見守っていたのは、
恵美子の父・久保と薫の母・マキ水穂(野川由美子)だった。
2人は何やら立ち話をしていた。
何を話しているのかは聞こえなかった。
薫は、これが気になって仕方なかった。
母とおじ様との間に一体何があるのだろう?
何処か上の空だった薫は、トラップを飛び越えたところで姿勢を崩して馬から転げ落ちた。
それを見て慌てて久保たちが駆け付け、薫は病院に担ぎ込まれた。
落馬した拍子に地面に叩き付けられた薫は、気絶して意識を失っていた。
診察の結果、薫の怪我は大事に至らなかった。
手当が早かったこともあり、薫は間もなく意識を回復した。
付き添っていた母・マキ水穂、親友・恵美子、恵美子の父・久保は、
ほっと胸を撫で下ろすのだった。

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その頃、厩舎で薫の愛馬エレクトラを手当した主将・高志は、
顧問教師・大下に報告を入れていた。
馬の腹帯が切れるよう、誰かが細工した形跡が残っていたのだ。
これを受けて、退部した馬術部員達を含めて関係者一同が校長室に呼び付けられた。
芝園校長(初井言榮)は、一同を問い詰めた。
「これは単なるイタズラとして済ませる訳にいきません。
薫さんが無事だったからいいようなものの、
殺人未遂と言っても過言ではありません」
しかし、部員達は中々口を割らなかった。
同席していた大下教師は、痺れを切らして部員たちを次々張り倒していった。
「お前達には、人への思いやりも正直さも無いのか!」
見兼ねた薫が大下教師を制止した。
「先生、もう止めて下さい。
今度の事件の責任は私にあるんです」
薫は芝園校長に向き直って訴えた。
「第一に、騎乗する前に私が腹帯をよく点検しなかったこと。
第二に、腹帯に異常があれば乗っていて気が付くべきでした。
私がボンヤリしてました。
第三に、誰が犯人であるにしろ私がこれ迄その人の恨みを買うようなことをしてきたからです。
ですから、これ以上犯人を追求することは止めて下さい」
薫の意を汲んで、芝園校長はその場を収めることにした。
「分かりました。
あなたの広い心に免じて、この事件は不問に付すことにしましょう」

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こうして、薫は馬術部の練習に戻った。
今日は、主将・高志と遠乗りに出掛けた。
雑木林に差し掛ったところで、2人は馬を繋いで一休みした。
高志は薫に例の事件のことを聞いてみた。
「しかし、君は優しいんだな。
君はヒガシ君や津川君が憎かった筈だ。
なのに許した」
薫はいたづらっぽく答えた。
「あの事?あれは磯崎さんが居たから出来たんです。
あの時、磯崎さんは殴られてるヒガシさん達の姿をとても見てられないって様子でした。
私はその気持に沿いたかっただけです」
おもむろに、薫は高志に抱き着いた。
「高志さん」
薫は初めて高志を名前で呼んだ。
二人きりになった瞬間を見計らって、再度のアプローチだった。
先日来、薫を意識していた高志は思わず口走っていた。
「水穂、僕も君が好きだ」

この様子を木陰から覗き見していた恵美子は、居た堪れなくなって逃げ出した。
「薫さんの馬鹿。やっぱり男の人の方がいいんだわ」

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薫と高志がなおも抱擁を交わしていると、
またしても番長・結城がふらりと現れて2人の元に歩み寄って来た。
「結構な眺めだぜ。
磯崎、お前ほざいたな。
生涯掛けて恵美子だけを、1人の女だけを愛し抜くってな。
それがどうだ?聞いて呆れるぜ」

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『水穂薫を巡る愛の様相は、増々波乱の極に達しつつあった。
それは、アリエスの星の下に生まれた薫の宿命であったろうか』

ドラマ アリエスの乙女たち(第4話) [サンテレビ] 2014年01月14日 15時00分00秒(火曜日)

<相楽晴子:関連作品>

テーマ:懐かしドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

アリエスの乙女たち:3話
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3話「二人だけの夜」脚本:長野洋

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保

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津川敬子:相楽ハル子

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来栖順子:佐藤万理

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結城小百合:大場久美子

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家元:東恵美子

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ヒガシヨウコ:速川明子

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松本明子、橋本実加子、嘉手納真夕、鈴木倫子

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磯崎淳一郎:中尾彬

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大下直樹:宅麻伸

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芝園校長:初井言榮

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久保小夜子:梶芽衣子

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マキ水穂:野川由美子

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久保哲也:若林豪

<ストーリー>
女子高生・水穂薫(南野陽子)は、シャワーから出て異変に気付いた。
部室に閉じ込められている。
ドアは外から施錠され、窓には鉄格子が嵌っている。
密室となった部室に、部員は誰も居なかった。
居たのは、以前馬場で薫を襲った番長・結城司(松村雄基)だけだ。
部室は校舎から離れている。
大声を上げても誰にも聞こえない。
ここで襲われたら逃げられない。
薫は隙を見せまいと結城を睨みつけた。
結城は、薫にバスローブから制服に着替えるよう促した。
その間浴室に入っていてくれるという。
「安心しな。俺だってレディーへの礼儀くらい守ってやるさ」

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薫が着替え終わって振り向くと、いつの間にか結城が真後ろに立っていた。
薫は結城を張り飛ばした。
すると、結城は薫を組み伏せた。
「何するの!礼儀を守るって言ったじゃない」
薫が抵抗して暴れても、男の結城を跳ね除けることは出来ない。
「男の言葉なんか信用するな。
いいかよく覚えとけ。
男にとって行動は第二、言葉は第三の価値しかないんだよ」
「第一は何よ?」
「そいつは自分で考えるんだな」
結城は謎めいた持論を薫に説くと、薫を抑えていた腕をあっさり解いた。
「とにかく言葉に縋ると傷付くだけだ。判ったか?」

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時間はタップリあった。
明日早朝には馬術部の部長・磯崎高志(石橋保)が朝練にやって来る。
どう騒いでもそれ迄部室から出られない。
2人はここで夜明かしするするしかないのだ。
やることは何もなかった。
意外にも、結城はあの後大人しかった。
薫を襲う素振りは見せなかった。
薫は結城にコーヒーを入れてやった。
食べ物はない。
空きっ腹を抱えながら、2人は何となく会話して気を紛らせた。
結城は身の上話を始めた。
結城の両親は、航空機事故で亡くなっていた。
それ以来、ずっと姉が親代わりだ。
結城の姉・結城小百合(大場久美子)は、弟を食べさせるために出版社に就職した。
そこで出会った小説家・磯崎淳一郎(中尾彬)と恋に落ち、
今は泥沼の不倫関係にある。
以来、姉との仲はギクシャクしている。
そこ迄打ち明けたところで、結城は話を打ち切った。
「いけねえ。何でこんな話始めちまったのかな。
さてと、食い物も無えんじゃ寝るっきゃ手は無えか」
結城は、机の上に横になった。
ソファは薫に譲ってくれるという。

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2人は部室で床についた。
深夜、目の覚めた結城は起き上がって薫の元に歩み寄った。
薫は動かない。
このままキスしてもバレない。
誘惑に駆られた結城は、薫に顔を寄せた。
が、既のところで思い直して顔を洗って自嘲した。
「駄目な男よ。いつかきっとお前の方から飛び込んで来るようにしてやるぜ」
実は薫は起きていた。
ナイフを握って身構えていた。
いざとなったら、これで自分の身を守るつもりでいた。
危ないところだったが、どうやら使わずに済んだらしい。

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こうして緊張の一夜が明けた。
朝練の高志が、鍵を開けて部室に入ってきた。
薫と結城に出迎えられて、高志は目を丸くした。
「君たち、どうしてここに?!」
「誰かに閉じ込められたんです」
薫の言葉に高志は増々驚いた。
ということは、薫と結城は2人で夜明かししたことになる。
誤解を解こうと薫は高志に説明した。
「何にもありませんでした。この人意外に意気地がないんです」
戸惑う高志を尻目に、結城はさっさと部室を出て行ってしまった。
誰が2人を閉じ込めたのか?
鍵を持っているのが馬術部員である以上、他に犯人はあり得ない。
高志は薫に言い含めた。
「いいかい。
僕は今朝一番にこの部室に来た。
その時、君も結城もこの部室の中には居なかった。
君達はそれぞれ、ちゃんとそれぞれの家に帰った。
ここに閉じ込められた者など、誰もいなかったんだ。
いいね?」
高志は懸念していた。
2人の間に何もなかったとしても、これが漏れたら学校中が大騒ぎになる。
薫の対面も、馬術部の面目も丸潰れだ。
高志は、遅れてやってきた馬術部の面々にも釘を差しておいた。
絶対口外するなと。

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しかし、どれだけ口止めしてもこの手の話はすぐに漏れてしまうものだ。
2人が部室で夜を明かしたという噂は、瞬く間に校内中に広がっていった。
薫の同級生・久保恵美子(佐倉しおり)の耳にも当然入った。
恵美子はショックだった。
恵美子は薫のことが本気で好きだった。
昨日、高志に告白されてもそれを断った程だ。
恵美子は、厩舎で馬の手入れをしていた薫を捕まえて問い詰めた。
「薫さん、本当なの?」
薫は夜明かしは本当だと認めて、さっさと恵美子を追い返してしまった。
薫は追い詰められていた。
馬術部の部員たちからは、退部を迫られていた。
「こんな学校辞めてやる」
悔し紛れに薫が呟くと、担任教師・大下直樹(宅麻伸)が厩舎に入って来た。
校長室に来いという。
どうやら、噂が教師たちの耳にも入ったようだ。

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薫は、芝園校長(初井言榮)に呼び出されて噂の真偽を問われた。
薫は説明した。
誰かに部室に閉じ込められて、結城と2人で一晩過ごしたこと。
インスタントコーヒーを5杯飲んで気を紛らせたこと。
でも、それだけで何もなかったこと。
弁明が終ると、芝園校長は「分かりました」と言って薫に退室を命じた。
拍子抜けした薫は、芝園校長に尋ねた。
「私の言ったこと、信用して下さるんですか?
嘘付いてると思わないんですか?」
芝園校長は笑顔で答えた。
「あなた、私が何年教師をやってると思うんですか。
生徒が嘘を付いているかどうかは、目を見ればすぐに分かりますよ」
信じてくれたんだ。
薫は嬉しかった。
芝園校長は、これ以上噂を広める生徒がいたら処罰するよう大下教師に命じた。

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こうして、薫は何とか学校を辞めずに済んだ。
追いだそうとする人間も居たが、守ってくれる人もいた。
薫には不思議な魅力があるのだ。
それを自覚してか、薫は周囲を翻弄して面白がるところがあった。
大下教師に恋人が居ることを知りながら、
二人きりになるとわざと体にもたれかかった。
厩舎で高志と一緒になると、自分から手を握ってやった。
ドギマギする高志の反応を楽しみ、
恵美子の嫉妬を煽った。
無邪気でいたずら好き。
薫にはそんなところがあった。

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そんな中、またしても薫を中心に一騒動起きようとしていた。
来る馬術大会の代表に、薫が選ばれたのだ。
推薦したのは、顧問の大下教師と部長の高志だった。
部員たちは、薫が代表なら全員退部すると猛抗議していた。

『水穂薫を巡る波乱は、更にその混迷の様相を深めつつあった』

ドラマ アリエスの乙女たち(第03話) [サンテレビ] 2014年01月09日 15時00分00秒(木曜日)

<松村雄基:関連作品>

テーマ:懐かしのドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

アリエスの乙女たち:2話
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2話「これが愛?」脚本:大原清秀

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保

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津川敬子:相楽ハル子

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来栖順子:佐藤万理

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結城小百合:大場久美子

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磯崎志乃:奈月ひろ子

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ヒガシヨウコ:速川明子、土井弓子:松本明子、橋本実加子、嘉手納真夕、鈴木倫子?

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磯崎淳一郎:中尾彬

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大下直樹:宅麻伸

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マキ水穂:野川由美子

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久保哲也:若林豪、久保小夜子:梶芽衣子

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ロミオ:南野陽子、ジュリエット:佐倉しおり(劇中劇)

<ストーリー>
パリからの帰国子女・水穂薫(南野陽子)が、
仰星高校に転校して数日が過ぎた。
薫の存在は、校内に混乱を巻き起こしていた。
同級生・久保恵美子(佐倉しおり)は、
同性でありながら薫に恋愛感情を抱いていた。
恵美子にとって、薫は憧れの存在だった。
薫は絶対に自分を曲げない。
相手が誰でも変わらなかった。
馬術部では自分の馬以外乗らないと主張して先輩と衝突し、
不良が自分の馬を虐めていると知るとステッキを振り回して追い払った。
女子生徒たちが薫は恵美子とレズではないかと噂すると、
「女が女を愛してはいけないって法律は無いわ」と啖呵を切った。

今日もまた、薫は授業で教師・来栖順子(佐藤万理)と衝突していた。
薫が宿題をやって来なかったのだ。
咎められると、フランスでは宿題が禁止されていると言って教室を飛び出してしまった。
自由奔放で何に臆することもない。
それが薫だった。

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授業を抜け出した薫は、愛馬エレクトラの様子を見に馬場へ向った。
すると、誰かが勝手にエレクトラに乗って駆け廻っているのが目に入った。
薫が慌てて駆け寄ると、乗っていた男がエレクトラから降り立った。
昨日衝突した不良たちのリーダー・結城司(松村雄基)だった。
「本当にいい馬だぜ、こいつは」
結城は悪びれることもなく薫にエレクトラの手綱を渡した。
勝手に乗るなと薫が抗議すると、結城は薫に抱きついて囁いた。
「薫、お互い授業をサボった者同士だ。楽しく過ごそうじゃないか」
薫は怒ってステッキを振り回した。
結城は腕に切り傷を負ったが怯まなかった。
「痺れるぜ。増々血が燃えら」
そう言って、結城は薫を干草の上に組み伏せた。
流石の薫も男の力には敵わない。
あわやというところで、背後から誰かが結城を怒鳴り付けた。
「結城、止めんか!」
薫の担任教師・大下直樹(宅麻伸)だった。
誰かの通報を受けて駆け付けて来たらしい。
結城は薫を開放して傍らを見やった。
結城の恋人・津川敬子(相楽ハル子)が、気不味そうに立ち去るのが見えた。
結城を取られると感じた敬子が、大下教師を呼んだのだ。
「今度はあんた好きにしてみせるぜ。覚悟しとけ」
結城は薫に捨て台詞を吐いて立ち去っていった。
大下教師が大丈夫かと声を掛けると、薫は気丈に立ち上がった。
「あんな奴くらい、先生が来なくてもぶっ飛ばしてやりました」

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薫を襲った番長・結城は、姉・結城小百合(大場久美子)と2人暮しだった。
両親は既に亡くなっている。
その日、帰宅した結城は机の上に綺麗な壺が飾ってあるのに気付いた。
「姉さん、どうしたんだよ?この壺」
聞くと、小百合が結城のために買って来てくれたものだった。
結城は壺に見惚れた。
一目でいい品だと判った。
結城は陶磁器が好きで、審美眼が磨かれていたのだ。
弟が興味を示してくれると、小百合も嬉しかった。
「でもこれ、高かったんじゃないのか?
姉さん、俺のために無理して」
結城が心配すると、小百合は笑顔を作って答えた。
「大丈夫よ。今月は特別に先生がお手当を弾んで下さったから」
その瞬間、結城は壺を叩き割った。
「何をするの?!」
驚く小百合に結城はぶち撒けた。
結城は小百合には感謝していた。
出版社に勤めて弟を養って、こうして私立高校にまで通わせてくれている。
感謝してもし切れない。
だが、『先生』は嫌だった。
『先生』とは、小説家・磯崎淳一郎(中尾彬)のことだ。
小百合は磯崎と不倫関係にある。
磯崎は妻子ある男だ。
それどころか、その息子というのが結城の同級生・磯崎高志(石橋保)だ。
級友の父に姉が抱かれている。
考えただけでも虫唾が走った。
増して、そんな奴の金で何を買って貰っても嬉しいどころか腹が立つだけだった。
結城が詰ると、小百合は憔悴して壺の破片を片付け始めた。
激昂していた結城は、やっと我に返った。
「御免」
そう言って結城はその場から逃げ出した。
姉が誰と恋愛しようがそれは自由だ。
理屈では判っている。
でも、嫌で嫌で仕方なかった。
やり切れない思いで、結城は街へ出て自棄酒を煽るのだった。

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数日後、演劇部の公演日がやって来た。
演目は「ロミオとジュリエット」だ。
ロミオ役は薫で、ジュリエット役が恵美子だった。
客席では恵美子の両親・久保哲也(若林豪)と久保小夜子(梶芽衣子)が、
固唾を呑んで見守っていた。
薫の母・マキ水穂(野川由美子)も駆け付けていた。
マキ水穂は有名なデザイナーだ。
忙しい中、娘の晴れ姿を見るために無理して時間を作ってくれたのだ。
幕が進み、いよいよ芝居は佳境に入ってきた。
ジュリエットは、昏睡薬を飲んで自らの死を偽装する。
それを発見したロミオは、ジュリエットが死んだと勘違いして本物の毒薬を煽る。
最後に、ロミオはジュリエットにキスして息絶える。
愛する2人の悲劇を描いた名シーンだ。
演じ終えると、客席は拍手喝采で2人を讃えた。

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こうして、公演は大盛況の中幕を下ろした。
上演後、恵美子は薫の母・マキ水穂に両親を紹介した。
「初めまして」
挨拶する恵美子の父・久保とマキ水穂は、何処かぎこちなかった。
恵美子は気にしなかったが、勘のいい薫はピンときた。
2人の間に何かある。
初対面は偽りだ。
この人は母の何なのだろう?

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週明け、薫は仕事帰りの久保を待ち伏せして問い詰めた。
「おじ様、ママとは本当に初めて会ったんですか?
ママとはどんな関係ですの?」
薫に問われた久保は白を切った。
「何の関係もないよ」
嘘。
薫は思った。
しかし、追求する材料は何も持っていなかった。
薫は久保にせがんでレストランで食事を御馳走して貰い、ダンスホールでワルツを踊った。
薫は母子家庭だ。
私にもお父さんがいたらな。
薫は久保とワルツを踊りながらそんな感慨に耽っていた。

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翌日、薫は馬術部で練習を遂えた後更衣室でシャワーを浴びた。
出て来てみると、部員は誰も残っていなかった。
居たのは、先日馬場で薫を襲った番長・結城1人切りだった。

『アリエスの星の下に生まれた乙女・水穂薫の危機であった』

ドラマ アリエスの乙女たち(第02話) [サンテレビ] 2014年01月08日 15時00分00秒(水曜日)

<南野陽子:関連作品>


テーマ:懐かしドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

アリエスの乙女たち:1話
南野陽子主演の学園ドラマ。
転校生の少女と同性でありながら彼女に憧れる少女とを中心に、
様々な因縁と葛藤が広がってゆくというお話。
「ヤヌスの鏡」に比べると、ロマンスと悲恋が強調されたより少女漫画らしい作風になっている。
それでいて、大映ドラマならでは強調表現と畳み掛ける展開も健在。
昼ドラに負けない愛憎劇が楽しめる一作。

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テレビドラマデータベース
大映ドラマのヒロインたち 極端なセリフもマジメに演じた
wikipedia

<番組データ>
初回放送:1987年4月8日~9月23日
放送枠:毎週水曜午後8時、フジテレビ系列

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1話「魔性の瞳」脚本:長野洋

<出演>
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水穂薫:南野陽子

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久保恵美子:佐倉しおり

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結城司:松村雄基

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磯崎高志:石橋保

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津川敬子:相楽ハル子

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来栖順子:佐藤万理

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結城小百合:大場久美子

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ヒガシヨウコ:速川明子

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松本明子、橋本実加子、嘉手納真夕

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磯崎淳一郎:中尾彬、磯崎志乃:奈月ひろ子

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大下直樹:宅麻伸

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芝園道代:初井言榮

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久保小夜子:梶芽衣子

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マキ水穂:野川由美子

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久保哲也:若林豪

<ストーリー>
女子高生・久保恵美子(佐倉しおり)は、
生徒会長・磯崎高志(石橋保)に仄かな恋心を抱いていた。
馬術部に所属する高志は、今日も早出して乗馬訓練に励んでいた。
高志を慕う恵美子は、馬場の傍らからその姿を見守るのが日課だった。
今日も恵美子が高志と挨拶を交わしていると、
突然少女の乗った馬が柵を飛び越えて馬場に駆け込んで来た。
恵美子は驚いて尻もちを付いていた。
そんな恵美子に、馬上の少女が声を掛けた。
「失礼、怪我は無かった?」
少女は恵美子の無事を確認すると、また馬で柵を飛び越えて走り去って行った。

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その日、恵美子の学級に転校生がやって来た。
馬場に現れたあの少女だった。
少女は、水穂薫(南野陽子)と名乗った。
担任教師・大下直樹(宅麻伸)は、パリからの帰国子女だと一同に紹介した。

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放課後、恵美子は演劇部の練習に向う途中に不良生徒の一団とすれ違った。
不良の1人が、恵美子の肩にわざとぶつかった。
その拍子で、不良は本を床に落とした。
ヌード写真集だった。
「拾ってくれよ」
不良に言い掛かりを付けられて恵美子が困っていると、
丁度通りがかった高志が割って入った。
「馬鹿な真似は止めろ。女の子にこんな物を見せて何が面白いんだ」
待ってましたとばかりに不良の1人が高志に詰め寄った。
番長の結城司(松村雄基)だった。
「こんな物って言ったな。
生徒会長さんはこんな物には興味が無いって言うのか?
こんな物見たくもねえって言うのかよ?」
磯崎は、結城に言い返した。
「見たくないと言えば嘘になるな。
俺だって男だ。
綺麗なヌードには興味がある」
高志と結城が言い争っている間に、恵美子はそそくさとその場から逃げ出した。

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恵美子は少々複雑な気持ちだった。
高志が庇ってくれて助かった。
しかし、ヌードに興味があると言い返した高志の台詞はショックだった。
「あの人があんな事言うなんて、信じられない」
多感な恵美子は、高志に抱いていた憧れが急に崩れ去るのを感じていた。
それどころか、男というものに対して強い嫌悪感が湧いてきた。
高志も、そんな男の1人なのだ。
恵美子は、演劇部顧問・来栖順子(佐藤万里)に体調不良を訴えてその日の稽古を休んだ。
演目の「ロミオとジュリエット」の公演は間近に近付いている。
恵美子はジュリエット役だ。
今休んでいる暇はない。
それでも、稽古する気になれなかった。

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一方、馬術部では別の騒動が持ち上がっていた。
新入部員の薫が、自分の馬であるエレクトラ以外には乗らないと主張したことで、
先輩部員たちと衝突していたのだ。
「そんな勝手な真似、許さないわよ」
先輩部員の諌めに、薫は耳を貸そうとしなかった。
そこで、互いに引くに引けなくなったこともあって1つの賭けが提案された。
それは、馬場を3周して勝った方の主張が通るというものだった。
薫と勝負するのは、女子部員のリーダー格・ヒガシヨウコ(速川明子)だ。
2人は馬に跨ると、合図を機に一斉に馬を走らせた。
薫には自信があった。
エレクトラは特別な馬だ。
絶対に負けない。
ヨウコの駆る馬の後尾に付けると、スパートを掛けてカーブで一気に追い抜いた。
慌てたヨウコは、バランスを崩して馬から転げ落ちてしまった。
それを見ても、薫は走るのを止めようとしなかった。
あっという間に馬場を1周すると、周回遅れのヨウコに再び迫った。
「止めてー!」
ヨウコが悲鳴を上げて蹲ると、薫の馬はその上を軽々飛び越えた。
そして、3周を走り終えたところで、漸く薫は走りを止めて馬から降りるのだった。
勝負に立ち会っていた馬術部主将・高志は、薫を猛然と批難した。
「何故止まらなかった。相手は落馬したんだぞ」
薫は、高志を睨み返した。
「関係ないわ。3周走れと言ったのはあの人よ。だから走っただけ」
薫の余りの気の強さに、騒動を見守っていた人々は誰もが唖然とさせられていた。

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薫は、勝ち誇った気持ちで愛馬・エレクトラを厩舎に繋いだ。
そんな薫の前に、不良生徒のリーダー・結城司がフラリと現れた。
司は不敵な笑みを湛えて薫に歩み寄ると、いきなり抱き竦めてキスしようと唇を寄せた。
薫は咄嗟に司の頬を張り飛ばした。
「何するのよ!」
司は臆することなく、そのまま薫を壁に抑え付けた。
逃げられない。
薫が抵抗を諦めかけたその時、エレクトラの嘶きが厩舎に響いた。
すると、何故か司は薫を抑え付けていた腕を緩めてしまった。
「あ~あ、馬に見られてのラブシーンじゃ気分出ねえや」
司は踵を返して厩舎から出て行った。
気の強い薫だったが、司が出て行った後はその場にへたり込んでいた。

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日曜日、恵美子は父・久保哲也(若林豪)とショッピングに出掛けた。
買物を終えてデパートから出て来た恵美子と久保は、例の転校生・薫と出会した。
恵美子と薫は奇遇を喜び、喫茶店に入ってお喋りすることにした。
2人は誕生日の話題で盛り上がった。
恵美子は3月末で、薫は4月初頭だ。
同学年だが、ほぼ1年歳が離れている。
2人は同じ牡羊座、即ちアリエスの生れだと意気投合した。
薫は母子家庭で、母はファッションデザイナーだという。
丁度恵美子がその日来ていたスーツも、薫の母・マキ水穂(野川由美子)のデザインだった。
恵美子は薫にときめきを覚えた。
男勝りで乗馬をこなし、有名デザイナーの母まで持つ帰国子女の薫は、
恵美子にとって友達以上の存在に思えた。
恵美子の父・久保は、そんな2人のやり取りを傍らから静かな表情で見守っていた。
久保は薫を一目見た時から内心動揺を感じていた。
だが、それを表に出すまいと努めて平静を装っていた。
この子はひょっとして……
久保の心にある疑念が膨らんでいた。

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週が開け、恵美子はまたいつものように登校した。
放課後、恵美子の所属する演劇部ではロミオ役の生徒が急病で倒れたと大騒ぎになっていた。
公演間近なのに代役を立てなければならない。
大役なので中々決まりそうになかった。
一体相手役は誰になるんだろう。
不安に駆られながら、恵美子は校外の雑木林に向った。
人気のない場所で芝居の稽古をするためだった。
恵美子は「ロミオとジュリエット」の一節を読み上げてみた。
「ロミオ、その名をお捨てになって。
あなたと関わりのないその名を捨てた代りにこの私を受け取って」
すると、誰かが相手役の台詞を暗唱しながら恵美子に歩み寄って来た。
「受け取ります。
お言葉通り恋人と呼んで下さい。
それが僕の新たな洗礼。
これからはもう決してロミオではありません」
薫だった。
薫は恵美子に微笑んだ。
薫は日本人学校でシェイクスピアを習ったことがあったのだ。
それを見て恵美子は閃いた。
「あなたはロミオよ。そうよ、あなたこそ私のロミオなんだわ。
お願い、私のロミオになって」

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恵美子は薫を連れて講堂に走った。
そして、部員を前に薫を相手に「ロミオとジュリエット」を演じてみせた。
薫は恵美子にせがまれるまま、急造のロミオを引き受けていた。

『その時、久保恵美子は正しくジュリエットであった。
今目の前に横たわる水穂薫のロミオに、恵美子は正しく恋をしてしまったのだ。
そして、この不思議な感情は水穂薫にも微妙な反応を呼び起こしつつあった。
アリエスの乙女たちの危険な愛の旅が始まろうとしていた』

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芝居がクライマックスに差し掛ったところで、
薫は突然芝居を中断して講堂から飛び出して行った。
外から馬の嘶きが聞こえてきた瞬間だった。
薫には嘶きの主が判った。
愛馬エレクトラだ。
馬術部に入部した薫は、自分の馬を馬場に繋いでいた。
誰かがエレクトラを虐めている。
エレクトラが助けを呼んでいる。
前に衝突した馬術部員たちが何か悪さをしているに違いない。
薫はそう直感して馬場へと走った。

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案の定、馬場では数人の不良たちがエレクトラを追い掛け回していた。
薫は乗馬用ステッキを手に取ると、不良たちを相手に鞭を振り回した。
「よくも私のエレクトラを」
それに怒った不良たちが薫を取り囲むと、
騒ぎに気付いて駆け付けた番長・結城が一同を諌めた。
「テメエら。何をやってるんだ。誰がこんな事しろって言った」
結城が不良たちを殴り飛ばすのを見て薫は叫んだ。
「止めて。下手なお芝居はいい加減にしてよ」
結城が手を止めて振り返ると、薫は毒づいた。
「惚けないでよ。
エレクトラをこんな目に遭わせた張本人はあなたなんでしょ」
確かに結城は不良たちのリーダーだ。
だが、この件に関しては預かり知らぬことだった。
見に覚えのないことで詰られた結城が薫に詰め寄ると、
遅れて駆け付けた恵美子が間に割って入った。
「止めて!私の薫さんに手を出したら承知しないわよ」
騒ぎを見守っていた一同が静まり返った。
普段大人しい恵美子の予想外の一言だった。
恵美子と薫はレズビアンなのか。
唖然とする一同を尻目に、薫は馬の手綱を引いて言い放った。
「エレクトラは私の命よ。
この馬を痛めたら誰であろうと私は殺す!」

『名門・仰星高校に波乱の幕開けが訪れようとしていた』

ドラマ アリエスの乙女たち(第01話) [サンテレビ] 2014年01月07日 15時00分00秒(火曜日)

<原作:里中満智子>

テーマ:懐かしドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ



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