色々鑑賞録
古い映画やドラマのあらすじを紹介してます
06 | 2014/07 | 08
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雁の寺2
<その1>

<その2>
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ある日、寺に宇田竺道(木村功)という男がやって来た。
竺道は、慈念が通う中学の担任教師だ。
以前は慈海和尚と同じく僧侶であったが、
派閥争いに巻き込まれて僧門を追われたという異色の経歴を持つ。
その竺道が何故寺を訪問したのか。
理由は、慈念の出席日数が足りないことを慈海和尚に報告する為であった。
慈念が中学を度々サボっているなど、慈海和尚にとって寝耳に水だ。
慈海和尚は、慈念を呼んで問詰めた。
サボりの理由が教練だと知ると、慈海和尚は厳しく叱り飛ばした。

「アホ、兵隊ごっこくらい何や。高い月謝払ろて行ってるのやで!」

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竺道が帰った後、里子は大目玉を食らった慈念を気遣って声を掛けた。
慈念は、中々心を開いてくれない。
何を尋ねても、最小限の返事しかしない。
しかし、里子の方は同じ貧しい出自の慈念に強く感情移入していた。
どうして心を閉ざすのか?
里子はその原因が幼少期にあるのではないかと考え、慈念に身の上を尋ねてみた。
「あんた、若狭に居た時に何ぞあったん違うか?」
すると、慈念は火が付いたように怒りだした。

「奥さん、私は坊さんになった人間どす。
村も家も皆捨てて、坊主になった人間どす。
もう、そんなもんの事何も訊かんといて下さい!」

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後日、寺に木田黙堂(西村晃)という僧侶から手紙が届いた。
本山に登る前に、この寺に立ち寄るという便りだった。
この黙堂和尚こそ、慈念を寺に斡旋した人物だ。
里子は思った。
この黙堂和尚に尋ねれば、慈念の生立ちが分かるのではないか。

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数日後、約束通り黙堂和尚が寺にやって来た。
門を潜ろうとしたところで、黙堂和尚は慈念に呼び止められた。
慈念は、黙堂和尚に縋り付いて訴えた。

「和尚さん、お願いどす、ワシの頼み聞いておくれやす。
頼んます。お父つぁんのこともお母はんのことも言わんといておくれやす。
ワシは……ワシは知られとうないんや。
ここの和尚さんにも奥さんにも、誰にも知られとうないんや。
若狭に居た時のこと、何も言わんといて欲しい。
な、和尚さん。頼んます、頼んます。ワシの一生のお願いや。な、和尚さん」

慈念の深刻な形相を見て、黙堂和尚は戸惑いながら約束した。
「んん……そうか、よっしゃよっしゃ」

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その夜、黙堂和尚は座敷に通されて慈海和尚と里子の饗しを受けた。
里子は、頃合いを見て慈海和尚に尋ねた。
慈念の幼少期に何があったのか?
酒の回った黙堂和尚は、口止めされていたにも関わらずつい口を滑らせた。

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慈念は捨子だった。
お菊という瞽女に産み落とされ、阿弥陀堂に捨てられていた。
その後、貧しい寺大工に引き取られたが、
口減らしのためにこうして寺に奉公に出されることになった。
そんな悲しい身の上だ。
元の名前がステキチであることを、慈念は酷く恥じているという。
これを聞き出した里子は、増々慈念に共感を覚えていた。

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一方、このやり取りを立ち聞きした慈念は怒りに震えていた。
あれ程念を押したにも関わらず、黙堂和尚は約束を破った。
やりようのない怒りに駆られた慈念は、庭池の鯉目掛けて包丁を投付けた。

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そんな慈念の脳裏に、家を出された日の出来事が蘇った。
口減らしの為、寺大工の家から寺の奉公に出されたあの日。
出発直前、養母(菅井きん)は慈念に言い聞かせた。
誰に問われても、絶対に出自を明らかにするな。
お前はもう"乞食谷"の住民ではない。
修行を積んで立派な坊さんになりなさい。
そう言って、養母は慈念を寺に送り出した。
慈念は、今日までその教えを忠実に守って来たのだった。

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その日の深夜、慈海和尚が寝静まったのを確認して、
里子は慈念の部屋へ忍び込んだ。
そして、慈念を思い切り抱締めた。

「慈念はん。あんた、可哀想や。
ウチのもん、何でもあげる。みんなあげる」

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南嶽の四十九日が来た。
寺には、南嶽の妻子が法要にやって来た。
慈海和尚は、ここ数日風邪気味だ。
予めそれを聞いていた南嶽の妻子は、慈海和尚へスッポンを差し入れた。
この日は、慈海和尚に代わってその弟子・慈念が読経を執り行った。
慈念は、元々頭のいい子と見込まれて寺に入った。
慈海和尚に厳しく指導されたこともあって、
今ではすっかり僧侶の作法を身に付けている。
南嶽の妻子が帰った後、慈海和尚は慈念に回向を命じた。
檀家の久間家から、読経を頼まれていたのだ。

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慈念は命じられた通り久間家へ赴き、仏間に通されて読経した。
久間家では現在主人が病に臥せている。
読経を遂えた慈念が帰ろうとすると、
主人の弟・久間平吉(伊達三郎)が呼び止めた。
用件は、慈海和尚への伝言であった。
久間家の主人は間もなく亡くなる。
その時は、慈海和尚に葬儀を手配して欲しいという言付けだ。
慈念はそれを承りながら、妙な答えを返した。

「和尚さんは、何や修行に出たい言うてはりましたけど。
何でや知りませんけど、そない言うてはりました」

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慈念は、回向を遂えて寺へ帰った。
出迎えの里子が「ご苦労さん」と労うと、慈念は何故か庭木のトンビに目をやった。

「奥さん、トンビがあそこで何してるか知ってはりますか?
トンビはね、あそこで貯めてますねん。
あの木の天辺に、大きな穴が有りますねん。
暗い壺が有りますねん。
その真っ暗な壺の中に、蛇やら魚やらネズミやらがウジョウジョしてますねん。
それ皆、トンビが地面で足手にした奴を咥えて運んだ物で。
蛇は赤いのも居たし、白いのも。
それらが、黒い泥々した中でグジョグジョ、グジョグジョ……」

気味が悪くなった里子は、「止めて止めて」と言いながらその場から逃げ出した。
慈念は、一体何が言いたいのだろう?

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その夜、体調の回復した慈海和尚は知り合いに招かれて晩酌を交わした。
雨の夜道を千鳥足で寺に帰って来た慈海和尚は、
門を潜ったところで何者かに襲われて意識を失った。

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<その3に続く>

<川島雄三:関連作品>

テーマ:邦画 - ジャンル:映画

雁の寺1
若尾文子主演の文芸映画。

寺で住み込み修行中の小坊主が、
和尚とその愛人の間で自尊心が揺さぶられてゆくというお話。

鬱屈した少年心理が緻密に描写された
川島雄三監督晩年の傑作。



allcinema
MovieWalker
wikipedia
若尾文子スペシャルインタビュー(3):『雁の寺』
いくらおにぎりブログ

<作品データ>
原作:水上勉
脚本:舟橋和郎、川島雄三
撮影:村井博
監督:川島雄三
公開:昭和37年(1962年)
配給:大映

<出演>
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桐原里子:若尾文子

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北見慈海:三島雅夫

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宇田竺道:木村功

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堀之内慈念:高見国一

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岸本南嶽:中村鴈治郎

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藤本雪州:山茶花究

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桐原たつ:万代峯子

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藤本ますみ:加茂良子

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鷹見邦逸:小沢昭一

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木田黙堂:西村晃

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堀之内かん:菅井きん

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千石喜七:石原須摩男、久間平吉:伊達三郎

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笹井南窓:木村玄、岸本秀子:金剛麗子

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久間平三郎:藤川準

<ストーリー>
京都のさる寺に、母子雁を描いた美しい襖絵があった。
この襖絵を描いたのは、高名な画家・岸本南嶽(中村鴈治郎)である。
南嶽は、この寺の檀家であった。
寺の和尚・北見慈海(三島雅夫)とは親しい仲にある。
慈海和尚に頼まれると、面倒だからと断る訳にもいかなかった。
南嶽は、高齢の身を押して襖絵を描いた。
漸く仕上げて寺に収める日、南嶽は襖絵を見ながら自嘲した。
「儂が死んだら、ここは差し詰め"雁の寺"や。
洛北に一つ名所が増える」

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それから暫く後。
南嶽は、体調を崩して床に臥せた。
死期が近いと悟った南嶽は、病床に慈海和尚を呼んだ。
そして、ある遺言を託した。

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やがて、南嶽は亡くなりその初七日が来た。
その日、慈海和尚の寺に桐原里子(若尾文子)という妙齢の婦人がやって来た。
南嶽の遺言とは、生前囲っていた妾の始末であった。
その妾というのが、この里子なのだ。
慈海和尚に妻はない。
住込みの小坊主・堀之内慈念(高見國一)と男の2人暮しだ。
慈海和尚は、身の回りの世話を全てこの慈念にさせた。
それも殊更キツい態度だった。
些細な理由で叱責を繰り返し、これも修行と辛く当たった。
初めてこの寺を訪問した里子は、2人のやり取りを見て思わず漏らした。
「キツう叱らはんのどすな。あない叱らんかてええのに」
女の肌が恋しい慈海和尚は、里子を奥に上げると早速首筋に顔を寄せて匂いを嗅いだ。
そして、酒を振る舞って里子を酔わせると、抱着いて強引に体を求めた。
「ワシなあ、南嶽から頼まれたんや。
あんたの面倒見てくれ言うたんや。
あの男、ワシがあんた好いてるっちゅうことを知ってたんや。
どや、あんた聞いてくれるか。
どや、聞いてくれるな」
里子もこうなることは薄々察していたのか、
一応拒みながらも結局は流れに身を任せるのだった。

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南嶽を失った里子にとって、慈海和尚は渡りに船だった。
実家は酷く貧しい。
父は既に亡く、母も薬の行商でやっと暮している有り様だ。
とても面倒を見て貰える余力はない。
その日から、里子は慈海和尚の愛人として寺に転がり込むことになるのだった。

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一方、小坊主の慈念は、寺で寝泊まりしながら中学校に通う毎日を送っていた。
学費は慈海和尚の負担だ。
衣食住の上に学費まで負担して貰っているので、
慈念は慈海和尚に頭が上がらない。
寺の生活でどんなに怒鳴り散らされても、反抗する気は起きなかった。
しかし、中学校に通うのは慈念にとって苦痛だった。
勉強が嫌いな訳ではない。
教練が嫌なのだ。
体力のない慈念は、重い鉄砲を担いで行進するのが苦痛だった。
ボロボロの靴を履き潰して、来る日も来る日もしごかれる。
ケチンボの慈海和尚に新しい靴を買って欲しいと言い出すことも出来ず、
慈念はとうとう教練のある日は学校をサボるようになっていた。

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里子を住まわせるようになって以来、慈海和尚の毎日は薔薇色だった。
ダブルベッドを購入して準備万端に整え、
毎晩のように里子を求めた。
当の里子は、夜以外はすることがない。
炊事、洗濯、風呂焚きに至るまで、身の回りの世話は全て慈念がしてくれる。
別に何に困るでもないが、退屈を持て余すようになっていた。

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ある日、里子は慈海和尚に慈念の出自を尋ねてみた。
慈海和尚によると、慈念は若狭の寺大工の子だという。
貧しい家のため、この寺を追い出されると行く所がない。
だから、どんなにキツくしてもここに居られるだけ天国なのだという。
それを聞いた里子は、慈念の境遇を我が身に重ねた。
私と同じだ。

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慈海和尚が留守の昼下がり。
里子は、せっせと庭掃除をする慈念を呼び止めて菓子を持たせた。
「ひもじいこっちゃろ。これ、全部食べても構へんのえ」
慈念が御礼を言ってまた庭掃除に戻ると、
里子はそれとなく自分の身の上を打ち明けた。
同じ貧しい家の出で、ここを追い出されたら帰るところもない。
しかし、女の自分と違ってあなたには将来がある。
修行を積めば立派なお坊さんになれるのだから、今は辛抱するのよ。
そう言って、里子は慈念を励ました。
話に夢中になったせいか、里子はつい縁石で足を踏み外した。
着物の裾が肌蹴て慈念に足を見られると、里子は妙な恥ずかしさを覚えた。
自分の話を一通り遂えた里子は、今度は慈念に身の上を尋ねた。
「慈念はん、あんたステキチさんって言うんたんかいな。
面白い名前や思てたけど、若狭のお父さんが付けはったん?
ステキチっちゅう名……」
その話題になると、中途であるにも関わらず慈念は突然逃げ出した。
里子には、理由が分からなかった。
ステキチという名前に、何か負い目でもあるのだろうか?

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このところ、慈念は腕に縄を結んで床に就く。
僧侶の生活は朝が早い。
寝坊は厳禁だ。
にも関わらず、慈念は一度寝坊して朝の務めに遅れたことがあった。
慈海和尚はそれ以来慈念の腕を長縄で結び、自分の寝室に引き込むことにした。
夜の写経の時間に居眠りしていないか、
朝の務めの時間に寝過ごさないか、
時々縄を引っ張って慈念が起きているか確かめるためだ。
縄を引く合図が来ると、慈念はすぐに慈海和尚の部屋へ用件を聞きに行く。
馬鹿馬鹿しくも合理的な仕組みであった。

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深夜、慈念は合図が来たので慈海和尚の寝室へ駆け付けた。
「和尚さん、お呼びどすか?」
慈海和尚は、慌てて慈念を追い払った。
「寝惚けたらあかんがな。呼んでへん、何も呼んでへんがな。ええから戻って早よ寝え」
これは、合図ではなかった。
寝返りを打った里子が、足を引っ掛けただけだ。
当然ながら、里子は慈海和尚と同じ寝室で寝る。
慈念が帰った後、里子は肌蹴た着物を直しながらその視線を思い返した。
「また見られた、ウチ」

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<その2に続く>

<若尾文子:関連作品>

テーマ:邦画 - ジャンル:映画

オープン・ユア・アイズ4(最終)
<その4>
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セサールが閉鎖病棟の生活に戻って数日が経過した。
ある日、セサールは娯楽室でふとテレビを見て驚愕した。
例の男がテレビに出て、あの話をしているのだ。
この男の名前は何だ?
セサールは男の名前を確かめようと、画面下部の字幕を目で追った。
『L.E.社 デュベルノワ社長』

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セサールは、アントニオ医師を呼び出して訴えた。
「インターネットを使いたい。
あんたから許可を取ってくれ」

インターネット閲覧が許可されると、
セサールは早速「L.E」を検索した。
「エリ」とは人名ではなく、「L.E」という会社名だ。
では、「L.E.」とは何の略なのか?
ネットで調べると、すぐに判明した。
「L.E.」とは「Life Extension」の略、即ち「延命」だ。

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セサールは、アントニオ医師に外出許可を取るよう頼んだ。
勿論普通に外出出来る訳はない。
警察官の監視下という条件でだ。
アントニオ医師がどう尽力したかは分からないが、数日後に希望通りの外出許可が降りた。
セサールは、どうしても行って確かめなければならなかった。
あのL.E.社へ。

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L.E.社は、巨大なビルにオフィスを構える立派な会社だった。
受付でデュベルノワ社長との面会を申し込むと、
セサールとアントニオ医師は待合室に通された。
セサールはL.E.社のパンフレットを読んで次第に記憶が戻るのを感じていた。
このL.E.社には、前に来たことがある。
担当者がやって来ると、セサールはL.E.社の事業内容について尋ねた。
L.E.社の事業は、文字通り「延命」だった。
死体を冷凍保存し、来るべき未来に蘇生させる。
医学は日進月歩の進化を遂げている。
いつになるかは分からないが、死体の蘇生が可能な日が来るに違いない。
その日が来るまで肉体を冷凍保存し財産を運用するのが、このL.E.社の事業なのだ。
そこで、セサールは担当者に疑問を投げ掛けてみた。
仮に蘇生する日が来たとしても、その時代に生きていけるのだろうか?
20世紀の人間が30世紀に目覚めたところで、住む世界が余りに違い過ぎる。
すると、担当者はパンフレットの14条「記憶操作」について説明した。
今の時代に不治の病の患者が1人死亡したとする。
死体が冷凍保存され、蘇生可能な未来が来る。
しかし、患者は未来ではなく「今の時代」に生きたいと願っている。
そこで、L.E.社は患者の記憶を操作して、蘇生時に「夢」を見せる。
患者の意識は、病死直前の記憶からその「夢」に飛んでいる。
あたかも、病死することなく「今の時代」を生き続けているかのように。
そこ迄説明を聞いたところで、セサールは部屋を飛び出した。
そして、化粧室に飛び込んで頭を整理した。

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もしかして、俺は一旦死んだのかもしれない。
L.E.社と契約して死体を冷凍保存し、夢を見せられているのかもしれない。
記憶の混乱も怪現象も、L.E.社の夢に何か手違いがあったと考えれば説明が付く。

セサールは、心配して化粧室まで追い掛けて来たアントニオ医師に打ち明けた。
「これは夢に違いない。これは虚構なんだ」
アントニオ医師は、セサールを叩いてその考えを否定した。
「じゃ、私も夢か?そんな訳ないだろ。どうだ、痛いか?これが夢か?」
それでも、セサールは認めようとしなかった。
「僕は誰も殺してない。全部夢だ。ヌリアとソフィアを間違えたり、顔が潰れたり、何もかも夢だ」
頑ななセサールを前に、アントニオ医師は意外な提案を出した。
「じゃ、そのマスクを取ってみろ。本当に顔が潰れているかどうか確かめてみろ」
セサールは促されるままマスクを外した。
そして、鏡に目をやった。
アントニオ医師は、穏やかな口調でセサールに言った。
「どこが醜いと言うんだ?人が羨むハンサムじゃないか」
しかし、鏡に写るセサールの顔は、あの醜く潰れた顔のままだ。
頭を抱えるセサールに、アントニオ医師は説明を続けた。
「君の病気は拒食症と同じだ。醜いと思い込んでいる。
その思い込みで我が身を滅ぼそうとしている」
セサールは、絶叫して化粧室を飛び出した。
「目を覚ましたい!」

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ロビーに走ったセサールは、警備員に飛び掛って拳銃を奪い取った。
そしてビルの外に飛び出すと、通行人目掛けて発砲した。
「これは悪夢だ。目を覚ましたい!」
逃げ惑う人々を狙って、セサールは乱射し続けた。
事態に気付いた他の警備員たちが、駆け付けてセサールに銃を構えた。
「銃を捨てろ」
セサールは聞く耳持たず、警備員たちに銃を向けた。
その瞬間、アントニオ医師が間に割って入った。
「止めろ、撃つな」
警備員たちの銃弾は、無情にもアントニオ医師の体を貫いていた。

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数分後、セサールとアントニオ医師は意識を取り戻した。
ビルの前で、2人は何事も無かったかのように立ち上がった。
互いの体には傷一つ無く、周囲には人っ子一人居なかった。
撃たれた筈のアントニオ医師は、激しく混乱していた。
「信じられん。一体どうなってる。そうか、ドッキリカメラに違いない!」
狼狽するアントニオ医師を尻目に、セサールは静かに呟いた。
「誰か居る。ビル屋上に」
何故だか分からないが、セサールにはそれが分かった。

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セサールとアントニオ医師がビル屋上に行ってみると、
そこに待っていたのは例のテレビの男だった。
「自己紹介しよう。L.E.社のデュベルノワだ。君と会ったのは150年前だ。
今起きていること、全てはセサールの想像の産物だ」
セサールは、デュベルノワに尋ねた。
「いつからが夢だ?」

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デュベルノワは、説明した。
セサールがバーへ行った帰りに、道端で酔潰れた夜。
それが、現実の最後の記憶だ。
目覚めた後は、全てL.E.社の見せた夢なのだ。

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現実のセサールはあれ以来ソフィアに会えず、潰れた顔を悲観して人生に絶望した。
そして、L.E.社と未来の蘇生を契約して、服毒自殺していたのだ。
この説明を聞いたセサールは、デュベルノワに怒りをぶつけた。
「俺は何のために大金を払った?ヌリアに会うためか?化け物の顔で苦しむためか?」
一連の悪夢について、デュベルノワは更に説明した。
「君の夢だ。君が作った。社がセットした舞台で、君が地獄を創った」
望めば叶う。
夢の世界にも関わらず、セサールは自ら悪夢を望んでいた。
一体何故?
セサールの心にあった罪の意識がそうさせたのだろうか?
デュベルノワは、セサールの気持ちを見透かして尋ねた。
「どうしたい?もう一度夢を見るかね?金も友達もソフィアもいる夢を」
セサールは首を横に振った。
「もう沢山だ」
デュベルノワは、もう一つの提案を出した。
「別の選択肢もある。君の時代は1997年だが、今は2145年だ。君の顔は治せる。
目を覚ませば、未来で普通に暮せる。どうしたい?」
セサールの望みは1つしかなかった。
「どうすれば目が覚める?」
デュベルノワは、ビル屋上から飛び降りることだと目で教えた。
その前に、1つだけ願いを叶えるという。
セサールは、心の中で念じた。
元の顔に戻って、ソフィアと再会すること。
念じた途端セサールの顔は元に戻り、ソフィアを抱き締めてキスしていた。
やはり夢なのだ。
生前の未練が、セサールに悪夢を見せていたのだ。

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セサールは、ビル屋上の縁に立った。
いつの間にか、ビル屋上にはアントニオ医師にソフィア、それに親友ペラーヨも佇んでいた。
彼らの視線を背に受け、セサールはビル屋上から飛び降りた。

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地面に激突して意識を失った後、セサールは女の声で起こされた。
「大丈夫よ、落ち着いて、目を覚まして」

ペネロペ・クルス:オープン・ユア・アイズ_2006年1月12日_(テレビ大阪)_アナログ

<フェテ・マルティネス:関連作品>

テーマ:洋画 - ジャンル:映画

オープン・ユア・アイズ3
<その3>
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セサールは、時々夜中に目が覚めた。
そんな時、セサールはまず鏡で自分の顔を確かめるのが習慣だった。
今日も大丈夫だ。
鏡を見て安心したセサールは、ふと同じベッドに寝ていたソフィアに目をやった。
そこに居たのは、死んだ筈のヌリアだった。
そんな馬鹿な。
セサールはライトを点けて、再度女の顔を確かめた。
やっぱりヌリアだ。
セサールはヌリアを叩き起こすと、縛り上げて詰問した。
「ソフィアを何処へやった?
あの事故で死んでなかったんだな?
どうやって死体を摩り替えた?」
物凄い剣幕のセサールを前に、ヌリアは泣きながら答えた。
「私がソフィアよ。何を訊いてるのか分からない」
恍けるつもりか。
セサールはヌリアを張り飛ばして、警察に電話を掛けた。

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セサールは、警察署でひと通りの事情を説明した。
ソフィアがヌリアに入れ替わり、ソフィアは何処かへ連れ去られたと。
それを聞いた刑事は、呆れた様子でセサールに答えた。
「彼女がソフィアだ。戸籍も住所も確かめた。
君の言う女性は存在しない」
セサールがなおも説明しようとすると、刑事は逆にセサールを問詰めた。
「君は彼女を殴ったな?何故か知らんが告訴しないそうだ。
君はヤクでもやってるのか?通院歴があるな」
頭がオカシイと思われているようだ。
これ以上話すのは無駄だと考えたセサールは、説明を打ち切って警察署を飛び出した。

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警察署を出たセサールに、ペラーヨが詰め寄った。
「何故ソフィアを殴った?」
セサールはペラーヨに説明した。
あいつはヌリアだ、ソフィアじゃない。
それを下手な言い訳と感じたのか、ペラーヨはセサールに写真を突き付けた。
「お前が殴ったのはソフィアだ」
セサールは写真を見て愕然とした。
ソフィアとのツーショットだった筈の写真が、いつの間にかヌリアになっているのだ。

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セサールは1人バーに入った。
何がどうなっているのかサッパリ分からない。
考えを整理していると、隣の男が話し掛けて来た。
見覚えがある。
確か、テレビで見た男だ。
男は、何故かセサールの悩みを全て知っている様子だ。
「君を助けてやる。君は正常だ。ただ、夢を見てる。
夢を見ている間は、本人にその自覚がない」
セサールが反論しようとすると、男はバーの客を見るよう促した。
「彼らも君の意識の一部だ。君さえ望めば彼らを殺せる」
何だこいつは。
セサールは、頭を抱えて呟いた。
「皆、静かにしてくれ」
その途端、バーは静寂に包まれた。
セサールが驚いて顔を上げると、バーの客は皆静止していた。
丸でビデオの一時停止のようだ。
セサールは、増々混乱して絶叫した。
「どういうことだ!真実を教えてくれ!」

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セサールがそこ迄話したところで、アントニオ医師は質問を挟んだ。
「そのテレビの男は、どんな番組に出てた?」
確か、死体を冷凍保存する話をしていた。
セサールがそう答えると、アントニオ医師はセサールをベッドに横たえた。
そして、より詳しい事情を訊き出そうとセサールに催眠術を掛けた。
「私の指を目で追って、夢の話をよく思い出せ。エリとは誰だ?」
混濁した意識の中で、セサールは何か薬を飲んだ後もがき苦しんだことを思い出した。

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セサールが意識を取り戻すと、アントニオ医師は改めて質問した。
「君は何か薬を飲んだな?どんな薬を飲んだ?病気は薬のせいかもしれないんだぞ。
ソフィアに何をした?思い出せ」

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セサールは再び記憶を辿った。
いつのことだか分からないが、とにかく自宅アパートに帰った。
部屋にはソフィアの写真が飾ってある筈が、全てヌリアのものに入れ替わっていた。
自分が描いた筈の似顔絵ですらヌリアになっている。
ソフィアは一体何処へ行ったんだ?
その瞬間、セサールは誰かに頭を殴られて気絶した。
意識を取り戻した時、そこに居たのはソフィアだった。
ソフィアはセサールに謝った。
「ごめんなさい、泥棒かと思って」
やっと会えた。
セサールは、ソフィアに抱着いてキスした。
今度こそソフィアだ。
しかし、暫くするとまたソフィアだった筈の女がヌリアになってしまう。
「ソフィア、君に会いたい」
セサールは興奮状態のまま、ヌリアの顔に枕を押し当てた。
そして、ヌリアがもがき苦しむにも関わらず全体重を掛け続けた。
やがて、ヌリアは窒息死した。
殺してしまった。
ヌリアだかソフィアだか知らないが、とにかく誰かを殺してしまった。
自分の行為が恐ろしくなったセサールは、思わず鏡を見た。
そこに写ったのは、あの醜い潰れた顔であった。

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セサールの話を聞いたアントニオ医師は、非情な通告をせざるを得なかった。
「君は錯乱してる。
だって、説明出来んだろ?
何故恋人を殺したのか?エリやテレビの男は何者なのか?
来週は裁判だ。
君が錯乱状態だったと訴えて減刑を狙うしかないな」
面会時間が終了した為、アントニオ医師は面会室から出て行った。
1人取り残されたセサールは、自分の運命に未来がないことを改めて悟った。
獄中にしろ閉鎖病棟にしろ、どのみち20年以上閉じ込められるのだ。

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<その4に続く>

<ナイワ・ニムリ:関連作品>

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