色々鑑賞録
古い映画やドラマのあらすじを紹介してます
07 | 2014/08 | 09
S M T W T F S
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -

8.12日航機墜落 30回目の夏
1985年8月12日の日航機墜落事故を振り返る特別番組。
再現ドラマ、実際の映像、関係者の証言、遺族の半生を織り交ぜたセミドキュメンタリー。

vlcsnap-2014-08-16-15h23m45s124.jpg

フジテレビ公式
日刊ゲンダイ
Gigazine

<番組データ>
初回放送:2014年8月12日
放映局:フジテレビ系列

<Aパート>
・生存者の1人・吉崎博子さんの証言と、
新入手のボイスレコーダー、関係者の検証を元にした再現ドラマ

vlcsnap-2014-08-17-12h43m48s157.jpg

1885年(昭和60年)8月12日。
吉崎さんは夫、子供3人と共に123便に搭乗した。
同機には東京大阪を往復するビジネスマンの他、
歌手・坂本九さん、女優・吉田由美子さん等様々な人々が搭乗していた。

vlcsnap-2014-08-17-12h44m41s171.jpg

羽田を出発した123便は、伊豆半島上空に差し掛かる。

コクピットのやり取り(実際の音声)
午後6時24分、衝撃音。
高濱機長「まずい、何か爆発したぞ」

高濱機長は緊急信号「スコーク77」を発令し、
管制官に羽田への帰還を要求する。
機体が急激に傾く。
通常30度程度の傾きが40度近くに達する。
客席には酸素マスクが降ろされ、
チーフパーサー・波田野純は、乗客を落ち着かせるためにアナウンスを繰り返す。
「酸素マスク、十分お着けになってバンドを頭に掛けて下さい」(実際の音声)

vlcsnap-2014-08-16-15h47m23s250.jpg

この時、123便は垂直尾翼の6割を失い、
真っ直ぐ飛ぶことが不可能となっていた。
激しいダッチロール(横揺れ)に見舞われ、
乗客は吐き気を訴える。

vlcsnap-2014-08-17-12h55m17s142.jpg

コクピットのやり取り(実際の音声)
「ハイドロは?」
「ハイドロプレッシャー、オールロス(油圧全損)」
「オールロスですか?」

ジャンボの主翼、水平尾翼、垂直尾翼は4系統の油圧で制御されている。
油圧全損とはこの全てが効かない、
即ち、機体のコントロールが出来ないことを意味する。

vlcsnap-2014-08-16-15h49m29s219.jpg

コクピットのやり取り(実際の音声)
「なんでこいつ……」(事故調報告)

「何でこうしないんだ」or「何で降下しないんだ」(新音声聞き取り)

管制官との交信(実際の音声)
「JAPAN AIR 123, fly heading 090 radar vector to OSHIMA.
(123便、大島へレーダー誘導します。方位90度で飛行して下さい)」
「But now uncontrol(操縦不能)」

フライトデータによると、
ダッチロール(横揺れ)に加えてフゴイド運動(縦揺れ)が始まる。

vlcsnap-2014-08-16-15h53m01s43.jpg

失神する乗客が出て来る。
客室乗務員は、指示を出し続ける。
「赤ちゃん連れの方、背に頭を。
座席の背に頭を支える形にして下さい
ベルトはしてますか?
テーブルは戻してありますか?」(実際の音声)
客室乗務員・対馬祐三子さん、
不時着に備えて手帳に指示内容を筆記する。
「落ち着いて下さい。ベルトを外し、身の回りを用意して下さい。
荷物は持たない。ハイヒールを脱いで下さい」(実際のメモ)
一部乗客は、家族への遺書を準備する。

vlcsnap-2014-08-16-15h55m32s2.jpg

123便は羽田に機首を向ける
フライトデータによると、
エンジン出力に左右差があり、左側が僅かに大きい。
ジャンボは4つのエンジンを搭載し、操縦席からレバーで操作する。
通常は4つが同じ数値になるよう動かす。
操縦士が落ち着いて計器を見られなかったのか、手の癖なのか。(元日航機長・高本孝一さんの証言)
偶然にも123便は羽田へ向う。

vlcsnap-2014-08-16-15h58m14s103.jpg

福田機関士の提案でギアダウン。
(車輪を降ろすことで空気抵抗を増し、高度を下げようと試みる)
油圧全損のため、ロックを外して車輪自体の重さで降ろす。

「…もどろう」(事故調報告)

「羽田に戻ろう」(新音声聞き取り)

vlcsnap-2014-08-16-16h00m51s134.jpg

ギアダウンの影響で必要以上に急降下を始める。
客席の窓から山や土が見える。
123便は右に傾いて急旋回し一回転する。

コクピットのやり取り(実際の音声)
「頭下げろ、そんなのどうでもいい。
ストール(失速)するぞ」
管制官の呼掛けに応答する余裕なし。

vlcsnap-2014-08-17-13h23m10s97.jpg

米軍横田基地から123便に無線が入る(実際の音声)
「JAPAN AIR 123 AIR 123 YOKOTA APPROACH on guard.
If you hear me, Contact YOKOTA 129.4」
高濱機長の応答。
「ジャパナ123、アンコントーラブル」

vlcsnap-2014-08-17-13h25m02s75.jpg

横田基地は、緊急着陸の受け入れ準備に入る。
が、123便は左旋回して進路を外れる。
この原因は、恐らく風と思われる。
当時の気象観測記録によると、
この時吹いていたのは南西の風。
垂直尾翼を失った123便は、
風を制御することが機能的に失われているため、
風の向くまま機体が進んでしまう。(東京大学・鈴木真二教授の解説)
更に埼玉県秩父に雷雨が発生し、
今度は北東の風に煽られて御巣鷹方面に機首を向ける。

vlcsnap-2014-08-16-16h07m32s41.jpg

123便は山岳地帯へ向う。
地上からの目撃者・山崎敬一さんは、異変を見て123便の機影を撮影する。
この写真から、123便は垂直尾翼の大部分を失っていることが確認出来る。
山崎さんによると、降下と上昇を繰り返していたという。

vlcsnap-2014-08-17-13h28m56s98.jpg

高度を下げていた123便は、山肌スレスレを飛行している。

コクピットのやり取り。(実際の音声)
「山だ」
「はい」
「コントロール取れ、右。ライトターン」
「ライトターンですね」
「山にぶつかるぞ」
「はい」
「マックパワー(最大出力)」
「マックパワー」

「パワーちょっと絞って」
「あー右、右、頭下げろ」
「今、舵一杯」
「ストール、マックパワー、マックパワー、マックパワー」
「ストール」
「はい、高度落ちた」
(警報音が鳴り響く)
「ドーンといこうや。頑張れ」
※(この発言は当時メディアで報じられて投げやりな態度と批判を受けたが、実際はクルーを鼓舞するために発している)
「はい」
「頑張れ、頑張れ」
「下がってるぞ」
「はい」
「頭下げろ、突っ張れ」
「頭、上げろ」

vlcsnap-2014-08-17-13h33m44s179.jpg

乗客・吉崎博子さんは夫に言われてメガネを外す。
「掛けたままだったら怪我してしまうから。
落ち着こう。子供達の前だから、シッカリしよう」
子供が居るから、狼狽えるな」
吉崎さん夫婦は、手を握り合う。

vlcsnap-2014-08-17-13h36m52s255.jpg

コクピットのやり取り(実際の音声)
「下がってるぞ」
「はい」
「フラップは」
「下げましょうか?」
「降りない」
「いや、えー、オルタネート(代替装置)で」
「オルタネートか、はやり」
「ええ、オルタネートです」

123便はフラップを降ろし、空気抵抗を作って速度を落とす。
これは最後の手段。

vlcsnap-2014-08-17-13h40m12s221.jpg

管制官との交信(実際の音声)
「リクエストポジション?」(現在位置は?)
「熊谷から、あー25マイルウェストの地点です、どうぞ」
「はい、了解」
「JAPAN AIR 123、こちらの方はいつでもレディ(進入可能)になっております
なお、横田と調整して横田ランディング(滑走路)も
アベイラブル(いつでも着陸可能)になっております」
「はい、了解しました」

vlcsnap-2014-08-16-16h14m18s11.jpg

機体は更に急降下する。
生存者証言によると、真っ逆さまに落ちるジェットコースターのような状態。
客室乗務員は、最後まで指示を出し続ける。
「全身緊張。足を踏ん張って。頭を下げて」

vlcsnap-2014-08-16-16h16m03s27.jpg

コクピットのやり取り(実際の音声)
「パワー」
「フラップ止めな」
「パワー」
「フラップアップ、フラップアップ」
「パワー、パワー、フラップ」
「上げてます」
「ストールするぞ、頭上げろ、頭上げろ」

自動音声による警報。
「WHOOP WHOOP PULL UP」(上昇せよ)
衝撃音。

1985年8月12日午後6時56分。
日航123便墜落。

vlcsnap-2014-08-16-16h16m45s202.jpg

墜落事故を受けて救助本部が設置される。
しかし、墜落場所が中々特定出来ない。
誤報が相次ぎ、搭乗者家族はイライラを募らせる。
分っているのは、長野県・群馬県・埼玉県の3県に跨る山中の何処かということだけ。
地元消防団が救助隊を組織し、2000m級の山に1つ1つ登って確認する。
翌日夜が明けて、墜落場所は群馬県御巣鷹山中と判明する。

vlcsnap-2014-08-17-14h13m13s216.jpg

救助作戦が開始される。
陸上自衛隊第1空挺団から、岡部2尉が指揮官に抜擢される。
ヘリで御巣鷹に向い、隊員がロープで降下して捜索・救助に当たる方針が固まる。
ジャンボ機が激突した尾根は、山肌が抉れ赤土が剥き出しになっている。
立つことすらやっとという崖のような急斜面のため、生存者捜索は難航する。

vlcsnap-2014-08-17-14h15m13s193.jpg

その頃、生存者・吉崎博子さん達は、
御巣鷹の尾根から300m下のスゲノ沢で救助を待っていた。
墜落した衝撃で、機体の最後部が滑り落ちたのだ。
生存者4名は、この機体最後部の座席にいた人たちだった。

vlcsnap-2014-08-16-16h29m14s7.jpg

一方、地上からは上野村消防団が険しい山に分け入り、
御巣鷹の尾根を目指して進んでいた。
午前10時30分、スゲノ沢に散乱した機体の破片を発見する。
その中から4人の生存者が見つかる。
上野村消防団と第1空挺団は、
生存者を担架に乗せて救助ポイントに運び上げる。

vlcsnap-2014-08-16-16h35m13s11.jpg

しかし、上空にメディアのヘリが多数飛行しているため、
救助用ヘリがポイントに中々近付けない。
救護班の饗場医師は、
自衛隊の指揮系統を無視して手旗信号の隊員に直に頼み込んでヘリを要請する。

vlcsnap-2014-08-17-14h26m30s80.jpg

発見から2時間以上経過し、救助ヘリが到着する。
作間2等陸曹が、生存者を抱えてヘリに引き上げる。
まずは子供2人から。
この時、作間2曹は子供の負傷を考慮して、
敢えて命綱を付けずに引き上げた。
「大丈夫。助かるから」

vlcsnap-2014-08-16-16h38m28s164.jpg

続いて、生存者・吉崎博子さん。
体に負担が掛らないよう担架ごと引き上げるが、
これが災いする。
バランスを崩して、担架が回転してしまう。
作間2曹は、ヘリ機内から吉崎さんを励まし続けて何とか引き上げに成功する。

vlcsnap-2014-08-16-16h40m17s235.jpg

4人目の生存者が引き上げられ、
午後1時28分に救助が完了する。

vlcsnap-2014-08-16-16h41m06s211.jpg

吉崎さん母娘は、病院で治療を受けた3ヶ月後の11月14日に退院した。

vlcsnap-2014-08-16-16h41m34s246.jpg

遺族・吉田公子さんは、
娘の女優・吉田由美子さんをこの事故で失った。
由美子さんは、宝塚出身の将来を嘱望された女優だった。
事故後、公子さんは夫と長男と共に搭乗チケットから身元を確認した。
娘の部屋は今もそのままにしている。

vlcsnap-2014-08-17-14h35m27s93.jpg

<Bパート>
事故原因の検証
vlcsnap-2014-08-16-16h45m22s207.jpg

垂直尾翼が吹き飛んだ原因は何か?
事故調査委員会の報告書によると、
圧力隔壁の破損による空気流入で内部圧力が高まり、
垂直尾翼を"内側から"破壊したとされている。

vlcsnap-2014-08-16-16h46m00s87.jpg

この報告には異論があり、
ミサイルや無人標的機によって"外部から"破壊されたという説も一部根強く唱えられている。

vlcsnap-2014-08-16-16h46m29s125.jpg

異変時の衝撃音を、
生存者・吉崎博子さんは「ボワーン」と表現しており、
事故調査委員会は「ドーン」と表現している。

vlcsnap-2014-08-16-16h47m50s157.jpg

取材班は米国「エンジニアリングシステムインク」社に、
ボイスレコーダー分析を依頼した。
同社・ロバート・ウィン博士はこう分析する。

vlcsnap-2014-08-16-16h50m10s24.jpg

・衝撃音は3つある。
・音は金属の破壊音(一瞬でこれ程大きな音を出す材質は金属以外ない)。
・第1の音は、まず機体を伝わり山形波形を作る。
・谷型波形を挟み、同じ破壊音が機体の空気中を伝わってもう一度山形波形を作る。
・その時間差0.135秒から、音源はコクピットのマイクから47.87m~58.51mの間と思われる。
(圧力隔壁はこの範囲にある)

vlcsnap-2014-08-16-16h53m22s136.jpg

・2番目の音は、波形の形状から垂直尾翼の破壊音と思われる。
・内部から圧力が掛かって機体が変形し、徐々に破壊されている状態を表している。
・だとすると、1番目は圧力隔壁の破壊音と考えられる。

vlcsnap-2014-08-16-16h56m03s219.jpg

・3番目の音は、機体最後部が脱落した音だと思われる。
・圧力隔壁の破損によって生じた破片等が機体最後部の補助エンジンにぶつかり、
そこが一気に脱落したのではないか。

vlcsnap-2014-08-17-14h51m35s18.jpg

ウィン博士による結論。
1番目の音は、突如圧力隔壁が破損した音。
2番目の音は、垂直尾翼が内部から徐々に破壊されていった音。
3番目の音は、機体最後部が脱落していった音。

vlcsnap-2014-08-17-14h53m44s250.jpg

<Cパート>
遺族の証言。

乗客・永田昌令さんはビジネスマンで、
事故当日の仕事先でのやり取りを録音したテープが残っている。
永田さんの長男は、父の遺品のタバコを今も保存している。

vlcsnap-2014-08-17-14h55m47s243.jpg

遺族・谷口正勝さんの妻・谷口真知子さんの証言。
亡くなった夫は、家族でキャンプに行くのを楽しみにしていた。
事故後、夫の遺書が発見された。
遺体確認は、当時少年だった長男が行った。
真知子さんは、今も夫のキャンプ用品を保存している。
当時少年だった2人の息子は、共に結婚して家庭を持った。

vlcsnap-2014-08-17-14h59m41s200.jpg

最新解析!日航機墜落32分間の闘い(仮) [関西テレビ] 2014年08月12日 18時30分00秒(火曜日)

<日航機事故:関連作品>

テーマ:ドキュメンタリー動画 - ジャンル:テレビ・ラジオ

雁の寺(TV版)
水上勉原作「雁の寺」のドラマ版。
単発1時間の作品なので、物語は大幅に簡略化されている。
大筋は映画版と同じだが、
里子が継母に虐められていたと告白するなど独自設定もある。 

vlcsnap-2014-08-09-15h24m13s238.jpg

テレビドラマデータベース

<番組データ>
脚本:中島丈博
初回放送:1989年8月28日
番組名:テレビ東京「月曜・女のサスペンス」

<出演>
vlcsnap-2014-08-09-15h22m37s34.jpg
里子:かたせ梨乃

vlcsnap-2014-08-09-15h06m35s139.jpg
慈海:金田龍之介

vlcsnap-2014-08-09-15h04m27s105.jpg
慈念:馬渕英明

<ドラマ版の特徴>
慈海和尚の失踪から物語が始まり、
回想によって里子と慈念の密通に至る経緯が描かれる。
2人の恋愛感情がより露骨に描かれており、
殺人の動機も嫉妬に起因すると明示されている。
(映画版では、出生の秘密を知られたことが動機として暗示されているだけで、
慈念が里子に恋愛感情を抱いているという描写はない)
回想が終了して葬式が描かれ、
式の後に里子が慈念の殺人に気付く。
そして、破り取られた襖絵の前で里子が膝を付くシーンでエンドクレジット。
慈念が失踪して里子も寺を出たことがナレーションで語られる。

かたせ梨乃:雁の寺 [テレビ大阪] 2010年07月27日(火曜日)

<かたせ梨乃:関連作品>

テーマ:懐かしドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

雁の寺3(最終)
<その1>
<その2>

※ネタバレ注意
<その3>
vlcsnap-2014-08-09-10h59m11s154.jpg

慈念が久間家の回向に出た翌日、
寺に平吉がやって来た。
「実は、今朝早う兄貴ポッコリ逝きよりましてん」
兄が亡くなったので、葬式を手配して欲しいということだった。
応対した慈念は、
「慈海和尚は今留守なので帰り次第伝えておく」と答えて平吉を帰した。

慈海和尚は、昨日知り合いの寺へ遊びに行ったきり未だ帰っていない。
無断外泊など前代未聞だ。
心配になった里子は、慈念に連れ戻すよう頼んだ。
何せ、里子の運命は慈海和尚に掛っているので、
居なくなると困るのだ。

vlcsnap-2014-08-07-20h48m07s174.jpg

慈念は、里子に急かされるまま知り合いの寺を訪ねた。
この寺の住職・藤本雪州(山茶花究)は、慈海和尚とは懇意の仲だ。
慈念の話を聞いた雪州和尚は、呆れ顔で答えた。
「君んちの和尚さんは、昨夜8時頃帰ったよ。
久し振りにハシゴして、何処ぞでヘタってるのと違うか」
慈念は、困り果てて雪州和尚に相談した。
「檀家のお方が死なはりまして、明日葬式出してくれっちゅうて来はりましたんで。
お通夜も寺でせんなりまへんし」
事情を飲み込んだ雪州和尚は、慈念に答えた。
読経は僕がしてあげるから、君は帰って葬式の準備をしなさいと。

vlcsnap-2014-08-07-20h52m22s168.jpg

その夜、寺で久間家の通夜が執り行われた。
慈海和尚は、結局帰らなかった。
その為、雪州和尚が読経を代役して進められた。

vlcsnap-2014-08-07-20h53m49s12.jpg

久間家親族が寝静まった深夜、
里子は妙な物音を聞いて布団から身を起こした。
何か、ギシギシ木が軋む音が聞こえる。
本堂では、夜中も慈念の読経が続いている。
それとは別の音だ。
気になった里子は、本堂へ確かめに行ってみた。
「慈念はん、今何や音がしてたけど。
和尚さんが帰って来はったんと違うか?」
里子が問掛けても、答えはなかった。
慈念は、真っ暗闇の中で一心不乱に読経を上げ続けていた。

vlcsnap-2014-08-06-20h18m59s111.jpg

翌日、雪州和尚による最後の読経が終った。
慈念は、平吉に指示を出した。
「間もなくご出棺で御座いますが、
お棺は昨日お担ぎやしたお方とは別のお方に担いで貰います」
何か作法でもあるのだろうか。
平吉は、慈念に一つ頼み事をした。
遅れてやって来た叔父に、故人の顔を見せてやって欲しいと。
慈念は段取りに追われているのか、その願いを退けた。
「お気の毒ですが、もう時間が御座いません」

vlcsnap-2014-08-06-20h30m21s23.jpg

お棺を担ぎ上げるよう言われた久間家親族は、
余りの重さに驚きの声を上げた。
「重たい仏さんやないか」
「わい、こんな重たい仏はん初めてやわ」
「何でこないに重たいんねんやろな」
「平三郎はん、図体小っちゃい筈やのにな」
やっとのことで担ぎ上げると、
久間家親族は葬列を作って墓地へ向った。

vlcsnap-2014-08-06-20h53m39s163.jpg

お棺を収める墓地は、寺から歩いて数分の場所にある。
雪州和尚の読経が響き渡る中、お棺は墓穴に収められた。
久間家親族は作法に則ってお棺に土を掛け、故人の冥福を祈るのだった。

vlcsnap-2014-08-06-21h01m55s14.jpg

数日後、寺に僧侶たちが集められた。
慈海和尚の失踪が問題になり、一同で対応策を協議するためだ。
弟子の慈念が言うには、前々から旅に出たいと漏らしていたらしい。
とは言え、何の連絡も無しに姿を消すのは不可解だ。
僧侶たちが警察に届けようかと心配すると、
一同を取り仕切る武田海翁(南部彰三)が厳しく突き放した。
「放っとけ、放っとけ」
元々、慈海和尚は本山出頭をサボりがちで覚えが目出度くなかったのだ。

vlcsnap-2014-08-07-21h03m04s186.jpg

更に数日が経過した。
寺の新任住職は、竺道に決まった。
慈念の中学で教師をしていたあの竺道だ。
元は僧侶のため、留守坊主が務まると本山に判断されたのだ。
着任の日、
竺道が座敷に上がって茶を啜っていると、慈念は思いの丈をぶち撒けた。

vlcsnap-2014-08-06-22h01m20s81.jpg

「先生、悟りを開くということはどういうことですか?」
「悟り?何と言うたらいいか、まあ自分を知るということかな」
「自分を?出来ません、そんなこと。
自分っちゅうもんは、一生掛かっても分からんもんやと思います。
先生は自分を産んでくれた人を知ってはりますか?」
「そら、お母さんや。お母さんは大切や」
「そしたら、お父つぁんは?」
「父親も大切だ」
「ほんなら、何で出家するんです?
大事なお父つぁんやお母はんも捨ててまでも」
「迷いの絆を捨て去る為だ」
「そしたら、お母はんを想うことは迷いどすか?
そら矛盾してるわな。
私は、お母はんもお父つぁんも知りまへん。
捨てるのは、お父つぁんもお母はんもあらしまへん。
けども、私はお母はんに会いたい。
お父つぁんが誰やも知りたい。
先生、これも皆迷いどすか?
これが迷いやったら、やっぱり私は坊さんになれやしまへん。
先生は幸せなんです。
先生らが座禅して目を瞑ると、お母はんに育てられたええ日のことばっかりが思い出されますやろ?
けども、私らが目を瞑ったかて雁の鳴く声位しか聞こえやしまへん。
こんな気持ち、先生には分かりまへんやろ?
幸せなんです。私は、そないににしか思えません」

vlcsnap-2014-08-06-22h02m36s79.jpg

慈念は、仏壇に目をやって竺道に尋ねた。
「先生、人を殺すいうことはやっぱり悪いことですか?」
「殺す?修行さえ積めば人を殺す必要はない。
殺そうとする心は即ち迷いだ。
悟りを開けば、殺すことも生きることもどちらも虚しい」

竺道は、噛んで含めるように慈念の質問に答えた。
はぐらかした答えは一つもない。
しかし、そこに慈念の求める答えはあったのだろうか?

vlcsnap-2014-08-06-22h03m54s87.jpg

竺道との問答を遂えた慈念は、
身支度を整えて寺を出た。
異変を察知した里子は、慈念に縋り付いて引き止めた。

「どうしたんえ?
何処へ行くつもりなんえ?
何もアンタがここを出ることないやないの。
アンタ、ウチとアンタのことを和尚さんに言うたんと違うか?
それでアンタもここを出て行くのやろ?」
慈海和尚が寺を出て、
今また慈念が寺を出ようとしている。
その原因は、あの夜の出来事が原因ではないか。
疑念に駆られた里子は、割れた櫛を突付けて慈念を問詰めた。
「お仏壇の下に落ちてたけど、どうしたんえ?これ。
アンタが告げ口したさけ、ウチの人はここを出ていかはったのやろ?
な、そやろ?」
慈念は、真っ向からそれを否定した。
「私は何も言うてやしまへん。
あんなこと、人に言えることと違います」
里子は、スッカリ困り果てていた。
慈海和尚だけが頼りだ。
この寺を追い出されたら、一体どうすればいいのか。
里子が慈念に行き先を尋ねると、慈念は思い詰めた形相で答えた。
「和尚さんの行かはった所へ旅します」

vlcsnap-2014-08-03-20h48m57s3.jpg

それを聞いた里子は、慈念を追い掛けた。
「アンタ、和尚さんの行かはった所知ってるのか?」
慈念は、答えようとしなかった。
無言のまま墓地へ行くと、
先日埋葬した久間家の墓前に向って一心不乱に読経を始めた。
異様な慈念を見て、
里子は先ほどの言葉の意味を漸く理解しようとしていた。
「慈念はん、もしかしてアンタ和尚さんを……」
慈念は読経を中断し、里子に割れた櫛を差し出した。
里子が拾った櫛の、もう片方だ。
それを慈念が持っているということは……

vlcsnap-2014-08-07-19h57m45s176.jpg

恐ろしくなった里子は、墓地から寺に逃げ帰った。
息を切らして帰り着いた里子の耳に、何か鳥の声が聞こえた。
「鳴いてるわ。雁が鳴いてる。鳴いてる」
里子は、座敷に上がって声の主を探した。
座敷には雁の描かれた襖絵が無数にある。
その中に確かに居る。
あの声の主が。
一枚一枚確かめて回った里子は、襖絵の中に一つだけ破り取られたものがあることに気付いた。
「居いひん。雁が居いひん。お母ちゃん雁が居いひん」
それは、母子雁を描いた襖絵であった。
その母雁の部分だけが、何者かによって破り取られているのだ。
あの声の主は、母雁だろうか?
それとも、残された子雁だろうか?

vlcsnap-2014-08-07-20h38m37s116.jpg

それから数十年が経過した。
京の街は、すっかり変わった。
かつて慈海和尚が住職を務めた寺も、例外ではない。
観光スポットとなったこの寺には、
連日のように修学旅行生や外国人観光客が押し寄せる。
現在の住職・鷹見邦逸(小沢昭一)の仕事は、
専らそんな客たちの案内役であった。
邦逸は寺を紹介しながら、
フラッシュを焚く外国人たちに注意を促した。
「無断で写真撮ったらあきまへん。
絵葉書買うて下さい。売店でうってますさかい」

vlcsnap-2014-08-07-21h28m04s84.jpg

売り子の老婆は、
そんな邦逸の言葉を知ってか知らずか、
居眠りの最中だった。

vlcsnap-2014-08-07-21h28m52s59.jpg

寺の目玉は、「母子雁」の襖絵だ。
長年破れたまま放置されていたが、
美術評論家の高い評価を得て最近になって修復された。
邦逸は、通訳を介して外国人客にその旨を説明した。

vlcsnap-2014-08-07-19h43m43s175.jpg

元の襖絵を破り取ったのは誰なのか?
その行為にどんな意味があったのか?
今となっては、誰にも知る術はなかった。

若尾文子、高見国一:雁の寺_2006年11月29日(水)_[KBS京都]_アナログ

<原作:水上勉>

テーマ:邦画 - ジャンル:映画



プロフィール

rps1979y

Author:rps1979y
※映画・ドラマの粗筋紹介は、
オチまで記してあるので御注意下さい。
管理人への連絡先はこちら

最新記事

カテゴリ

リンク

このブログをリンクに追加する

Amazon検索

楽天検索

楽天で探す
楽天市場

買物履歴

ブログランキング