色々鑑賞録
古い映画やドラマのあらすじを紹介してます
09 | 2017/10 | 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

兵隊やくざ
勝新太郎、田村高廣主演の軍隊映画。
暴れん坊だが憎めない部下の面倒を見ることになった上官が、
部下を庇って板挟みになるうちに強い絆で結ばれてゆくというお話。
様式美を追求した田中徳三監督の「悪名」と違い、
本作の増村保造監督は実にリアルに世界観を捉えている。
白黒映像に獰猛な迫力があり、
軍隊の描写にも説得力がある。
それでいて戦争映画に在りがちな重苦しい雰囲気になることもなく、
娯楽映画に欠かせない軽快さや開放感を忘れない。
主人公を演じる勝新太郎は、
愛嬌たっぷりでバイタリティ溢れており、嵌り役の名演技を見せる。
部下に振り回されながらも男気を通す上官・田村高廣が、これまた格好いい。
今見ても面白い映画なので、機会があれば是非見て欲しい作品。

vlcsnap-2013-12-14-17h47m29s75.jpg

allcinema
MovieWalker
勝新太郎 兵隊やくざ シリーズ 池田博明
狂い咲きシネマロード『兵隊やくざ』
映画評index

<作品データ>
脚本:菊島隆三
監督:増村保造
撮影:小林節雄
公開:昭和40年(1965年)
配給:大映

<出演>
vlcsnap-2013-12-14-17h54m29s182.jpg
大宮貴三郎:勝新太郎

vlcsnap-2013-12-14-18h04m02s11.jpg
有田上等兵:田村高廣

vlcsnap-2013-12-14-18h10m01s18.jpg
黒金伍長:北城寿太郎

vlcsnap-2013-12-14-18h28m32s122.jpg
音丸:淡路恵子

vlcsnap-2013-12-14-18h14m24s93.jpg
中沢准尉:内田朝雄

vlcsnap-2013-12-14-18h13m52s29.jpg
野木二等兵:森矢雄二

vlcsnap-2013-12-14-18h26m57s205.jpg
憲兵:成田三樹夫

vlcsnap-2013-12-14-18h57m02s71.jpg
石上軍曹:早川雄三

vlcsnap-2013-12-14-19h01m31s203.jpg
みどり:滝瑛子

vlcsnap-2013-12-14-19h08m54s19.jpg
桃中軒梅竜:山茶花究

<ストーリー>
昭和18年(1943年)、満州・孫呉の兵舎に初年兵たちが送り込まれて来た。
これから初年兵たちには、この兵舎に寝泊まりして厳しい訓練が課されることになる。

有田上等兵(田村高廣)は、歩兵教育の受け持ちだ。
この兵舎で暮すようになってもう3年になる。
日本から遠く離れた満州には、楽しいことなんて何もありゃしない。
街から外れた荒れ地にポツンと建てられた粗末な兵舎の中で、
来る日も来る日も訓練に明け暮れている。
早いところ満期を迎えて日本に帰りたかった。
そもそも、有田は軍隊が嫌いだった。
上下関係に縄張り意識と、理不尽ばかりが罷り通る世界なのだ。

有田は上官に呼び出され、新たに補充された初年兵たちの説明を受けた。
今回の初年兵の中には要注意人物がいるらしい。
大宮貴三郎(勝新太郎)という男で、元はヤクザの使い走りだという。
軍隊に入った後も、大宮は揉め事ばかり起こしていた。
そこで、上層部はここ満州で大宮を徹底的に教育しようと送り込んで来たのだ。
有田は軍隊は嫌いだが、責任感は人一倍強い男だ。
任されたことはキッチリやり遂げる。
身柄を預けられた以上、大宮を一人前の兵隊に育て上げると上官に約束した。

初年兵の訓練は厳しいものだ。
重い装備を担いで、荒れ地でみっちりしごかれる。
一通り訓練を終えるとみんなヘトヘトだ。
有田は、初年兵たちを労って入浴を許可した。
大宮はじめ初年兵たちは、熱い湯船に浸かって漸く一息付くのだった。

暫くして、有田に報告が来た。
浴場で大喧嘩が始まったという。
慌てて駆け付けると、初年兵たちが傷だらけで倒れていた。
例の大宮も、顔中にアザを作ってぶっ倒れていた。
兵隊たちが浴場で乱闘になったらしい。
原因を確かめてみると、砲兵の先輩が初年兵たちに言い掛かりを付けたのが切欠だった。
大宮は、仲間を庇って数人の先輩相手に闘っていた。
義侠心に駆られての行動だが、これが軍隊では許されない。
増して、相手は管轄の違う砲兵たちだ。
必ずやり返しに来るだろう。

後日、有田の懸念した通りの出来事が起きた。
砲兵隊の黒金伍長(北城寿太郎)が、
「大宮を出せ」と、兵舎に怒鳴りこんで来たのだ。
理由は、すれ違った時に敬礼をしなかったからだという。
言い掛かりも甚だしい。
追い返しても良かったが、大宮本人は責任を取りたいという。
有田は、大宮に付き添って黒金伍長と話を付けることにした。
事前に、有田は大宮に言い含めておいた。
「大宮、軍隊じゃ無理が通って道理が引っ込む。
何を言われても我慢しろ。
絶対に手出しをするな。
何でもいいから謝ってしまえ」

有田が大宮を連れて行くと、黒金伍長は早速噛み付いた。
「貴様は今日俺に敬礼をしなかった。
砲兵隊の制裁を教えてやる」
大宮の顔にビンタが飛んだ。
続いて、黒金伍長は大宮の腹に鉄拳を叩き込んだ。
1発じゃ終わらない。
10何発も叩き込んで来る。
大宮はその間無抵抗のままだ。
1、2発で終わればそれで済ませるつもりでいたが、
ここまでやられると流石に有田も我慢出来なくなって来た。
有田は、黒金伍長を怒鳴り付けた。
「おい、伍長!
お前軍隊の飯を何年食ってる?
たった2年だ。
俺はこの部隊で4年飯を食ってる。
大宮は歩兵、お前は砲兵だ。
お前は大宮の上官じゃない。
何の権利もない。
とすれば、これは制裁じゃない。
決闘だ。
大宮がお前を殴り返しても、上官を侮辱したことにもならず、
抵抗した訳でもない」
有田が目で合図すると、大宮は許可が降りたと知って黒金伍長に掴み掛かった。
喧嘩は得意中の得意だ。
反撃を許された大宮は、あっという間に黒金伍長をぶちのめしてしまった。
黒金伍長は「助けてくれ」と悲鳴を上げた。
勝負ありと見た有田は、「もういい。止めろ」と大宮を制止した。
有田は大宮に兵舎へ帰るよう命じ、引っ繰り返っていた黒金伍長を助け起こした。
黒金伍長は、大学出の元拳闘選手だ。
初年兵にのされたなんて、誰にも知られたくないだろう。
有田は一応黒金伍長に口止めした後、医務室に担ぎ込んでやるのだった。

小競り合いは何とか片付き、初年兵の着任から3ヶ月が無事に経過した。
兵舎での教育は一通り終了だ。
これからは師団演習が始まる。
これがまたキツイ。
8貫(30kg)の荷物を背負い、3日間で70里余り(300km)を行軍する。
どんなタフな男でも音を上げる強行軍だ。
中でも真っ先に落伍の危機に貧したのが大宮だった。
大宮は喧嘩は強いが、歩くのは大の苦手なのだ。
大宮なりに何とかやり通そうと頑張ってはいるが、
もう限界が来ているのは明らかだった。
行軍中、有田は上官に申し出た。
大宮を連れて近道を抜ける許可を下さい。
夜までには野営地に合流します。
有田はいい加減な提案をする男ではない。
また、落伍者が出たら引率者には責任が問われてしまう。
上官は、有田の提案を呑んで大宮と別ルートを行くことを許可してくれた。
有田は、ヘタる大宮を抱き抱えて荒野を進んだ。
道中、大宮は不思議がって尋ねた。
「上等兵殿は何故自分に親切なんです?」
有田は答えた。
「お前みたいなとんでもない奴は、放っとけないんだ」

有田と大宮は、やっとの思いで野営地に辿り着いた。
休憩を取った後、有田は見晴らしのいい丘に登ってみた。
そこからなら日本が見えるのではないか。
そんな気がした。
早く除隊して日本に帰りたい。
有田が物思いに耽っていると、同じく丘に登って景色を眺めていた下士官が歩み寄ってきた。
黒金だ。
もう伍長ではない。
軍曹に出世していた。
「あの時は親切にして貰ったな。忘れんぞ」
黒金軍曹は、そう言って有田を殴り付けた。
元拳闘選手だけにパンチは強烈だ。
有田は滅多打ちにされてその場に倒れこんだ。
黒金軍曹は有田に命じた。
「大宮って奴に、明日の朝6時ここに来いと言え」

翌朝、傷の癒えない有田が大宮に抱えられて例の丘にやって来た
有田は大宮を止めたが、大宮は会って片を付けると言って聞かなかった。
丘に辿り着くと、黒金軍曹の部下たちが周囲を取り囲んだ。
リンチするつもりで待ち伏せしていたのだ。
大宮は1人連中に立ち向かうが、さすがに多勢に無勢だ。
組み伏せられて、殴る蹴るの暴行が始まった。
絶体絶命だ。
そんな時だった
これを見た歩兵の仲間たちが丘に駆け付けて来た。
有田は、こういうこともあろうかと予め助けを呼んでおいたのだ。
人数で不利になった黒金軍曹の部下たちは、途端に引き下がっていった。
大宮は立ち上がると、黒金軍曹に突進して殴り飛ばした。
黒金軍曹が気絶したのを見届けた大宮は、有田に振り向いて言った。
「上等兵殿、これで貸し借り無しです」

こうして何とか今回の騒ぎは収まったが、
有田の歩兵部隊は上層部に大目玉を食らってしまった。
懲罰として、部隊全体に外出禁止が言い渡された。
休みの日に街に遊びに行くのは、兵隊にとって唯一の娯楽だ。
それを取り上げられたら溜まったものではない。
当然ながら、この懲罰を破って無断外出する者が現れた。
その第1号が、何と騒動の原因になった大宮だった。
大宮が兵舎から無断で抜け出したことを知った有田は、
連れ戻しに街へ向った。
大宮は置屋に転がり込んでいた。
相手をしていたのは、将校専用の女郎・音丸(淡路恵子)だった。
音丸は、一兵卒にも関わらず大宮のことが気に入ったらしいのだ。
恋愛は自由だが、大宮は兵隊だ。
このまま見過ごす訳にはいかない。
有田は何とか大宮を説得して兵舎に連れ戻し、
事を荒立てないよう上官の中沢准尉(内田朝雄)に掛け合ってみた。
「私に免じて許して下さい。
昨夜は私の監督が不行き届きだったんです」
有田が部下思いなのは中沢准尉も判っているが、
ここは他の兵隊の手前不問という訳にはいかなかった。
中沢准尉は有田に命じた。
「お前が大宮に制裁を加えろ。
お前が大宮を打ちのめせば他の兵隊も納得する」

こうなると、立場上やらない訳にはいかない。
有田は大宮を呼び出して言った。
「昨夜の事件で、俺がお前を制裁することになった。
俺は制裁は大嫌いだ。
軍隊に入って3年間、殴られたことはあるが殴ったことは一度もない。
しかし、今日は殴る」
有田がこう言うと、大宮も覚悟して答えた。
「分かりました。お願いします」
有田は、大宮に竹刀を振り下ろした。
しかし、続けて叩くことはどうしても出来なかった。
大宮は憎めない男だ。
それに、有田は人を殴るのが大嫌いなのだ。
「もういい。いいから、帰れ」
有田は、そう言って大宮の前から立ち去っていった。
一人残された大宮は、傍に転がっていたレンガを拾い上げて自分の顔を殴り付けた。
このままでは有田の面目が立たない。
軍規違反の兵隊は、上官にこれでもかと殴られるものだ。
大宮は、自分の顔をレンガで何度も殴り付けて傷だらけにした。
顔が腫れ上がると、大宮は中沢准尉に謝りに行った。
中沢准尉は大宮の顔を見て、それだけ殴られたらもう十分だと納得してくれた。
これで有田の立場は助った。
後になってこれを知った有田は、呆れながら大宮に言った。
「バカだな、お前は」

有田と大宮の間に絆が芽生えようとした頃、
またしても兵隊の脱走が発覚した。
今度の脱走者は野木(森矢雄二)という初年兵だ。
野木は気弱な男だ。
大宮のように、置屋に遊びに行くような度胸はない。
軍隊暮しが辛くて、本気で逃げ出したのだ。
これが外部に知れたらタダでは済まない。
兵隊の逃亡は重罪だ。
憲兵に見つかれば、容赦なく殺されてしまう。
有田は、大事になる前に連れ戻そうと部下を集めて探しに出た。
兵舎の周辺は、何もない荒野が広がっている。
逃げたところで野垂れ死が関の山だ。
捜索に駆り出された大宮は、広がる荒野に向って叫んだ。
「おおい、野木~。野木~。生きておれよ~」
その瞬間、銃声が轟いた。
慌てて銃声の場所へ駆けつけると、
そこで野木は自分の頭を撃ち抜いて死亡しているのだった。

結局、野木の自殺は演習中の事故死ということで片付けられた。
死体の確認に来た憲兵(成田三樹夫)は、応対に出た有田に散々嫌味を言って帰って行った。
有田と大宮は、やり切れない思いだった。
休みの日、2人は置屋に上がり込んで無念の野木を思って杯を傾けた。
項垂れる2人を見て、女郎の音丸は気遣ってウニをツマミに出してくれた。
「可哀想にね。
でも、あたし達にはもっとアレな話が山ほどあるわ。
胸病んて死ぬ日の朝まで客取ってた女の子がいた。
あたしだってどうなるか分かりゃしない。
さ、何もかも忘れて遊びましょうよ。
好きなようにして頂戴。
へそ酒でもいいのよ」
音丸はそう言って布団の上に横になった。
へそ酒とは、名前の通りへそに酒を盛ってそれを舐めるという馬鹿馬鹿しい遊びだ。
有田と大宮はこの遊びに興じているうちに、虚しさ以上に怒りが込み上げて来た。
野木が脱走したのは、元はといえば炊事係に殴られたのが原因だ。
炊事班長の石上軍曹(早川雄三)は、荒くれ者で有名だった。

「野木の敵を取ってやる」
大宮は置屋を飛び出すと、息巻いて兵営の炊事場へ殴り込みに行った。
ところが、石川軍曹は意外にも大宮に寛大だった。
ここに殴り込みに来るなんて大したもんだと、
大宮を持ち上げて酒を振る舞い始めた。
こうなると、大宮も悪い気はしない。
酔っ払って、石川軍曹と談笑になってしまうのだった。

後からこれを知った有田は、炊事場へ乗り込んで大宮を連れ戻した。
人のいい大宮は、石上軍曹に騙されている。
炊事場で揉め事を起こすと役得の多い炊事班長を外される。
石上軍曹は、そう考えて場を収めたに過ぎない。
後から必ず報復に来るだろう。
有田は大宮に注意した。
「このままじゃ済まんぞ。
用心しろよ、大宮。
二度と炊事場には来るな」

有田は、やがて来るだろう報復に備えて手を打ち始めた。
まずは、石川軍曹の弱みを握ることにした。
先日置屋に遊びに行った時に、音丸がウニを出してくれた。
高価なものだ。
軍隊からの横流し品に違いない。
有田は、置屋の女郎・みどり(滝瑛子)に会って話を聞いてみた。
石川軍曹は、みどりを贔屓にしている。
みどりは、石川軍曹の秘密を話してくれた。
有田の睨んだ通り、石川軍曹は軍用食を横流しして荒稼ぎしていた。
決定的な弱みを握って、有田は兵舎に引き返した。
丁度、兵舎では大騒動になっていた。
大宮が炊事班長の部下に袋叩きに遭っていたのだ。
有田は、傍らで成り行きを見守っていた石川軍曹に噛み付いた。
「班長、止めさせろ。
止めさせんとお前、軍法会議に掛るぞ。懲役だ。
貴様、砂糖の横流しをやっとるだろう。
俺は証拠を握っておる。
部隊長に差し出したらタダじゃ済まんぞ。
憲兵隊に引っ張られるのが怖かったら、俺の言うことを聞け。
喧嘩を止めさせろ。止めさせんか」
有田に言われて、石川軍曹は渋々部下たちに止めるよう命じた。
「よし、俺が大宮とやる。
一対一の勝負なら文句あるまい、上等兵」
石川軍曹はそう言い捨てて、大宮と取っ組み合いの喧嘩を始めた。
大宮は喧嘩だけは滅法強い。
相手が大勢ならとにかく、一対一なら負けはしない。
さしもの石川軍曹も、頑丈な大宮には歯が立たなかった。
このままでは勝てないと感じた石川軍曹は、
卑怯にもサーベルを抜いて大宮に斬り掛かった。
「大宮!」
有田は危ないと見て、大宮にサーベルを投げて渡した。
大宮はサーベルの闘いでも負けなかった。
とうとう石川軍曹を捻り伏せ、止めを刺そうとサーベルを振り上げた。
「殺すな!」
有田が叫ぶと、大宮はハッと我に返った。
大宮はヤクザの使い走りをしている時に、人を殺したことがある。
組が身代りが立ててくれたので刑務所には行かずに済んだが、そのことをずっと後悔してきた。
もう人殺しはしたくない。
大宮がそんな身の上話をしたのを、有田は覚えていてくれたのだ。
大宮は、有田にサーベルを返して約束した。
「また助けられましたね。今度は自分が上等兵殿を助けます」

こうした中も、戦局は日に日に悪化していた。
兵隊たちは、南方の戦線へ次々送られていた。
ここ満州の部隊も例外ではない。
有田には、任期満了を目前にして即日招集が掛けられた。
やっと終ると思っていた兵役がまだまだ続くと知って、
有田はがっくり来ていた。
やがて、全部隊に動員令が出た。
いよいよ、前線に送られる。
有田も大宮も、部隊全員だ。

出発を3日後に控えた日のことだった。
大宮は有田に囁いた。
「上等兵殿、やりましょう。脱走です。
上等兵殿も軍隊が嫌いでしょう?
いよいよ上等兵殿を助ける時が来た。
ここ半年も考えた計画です。
やれば必ず成功する」
大宮にこう言われて、有田は怯んだ。
脱走は重罪だ。
軍隊から逃げ出したい気持ちはあったが、失敗すれば確実に殺される。
先に慰問団に紛れて逃げ出した兵隊の1人は、敢え無く憲兵隊に捕まっていた。
答えを渋る有田に、大宮は熱い口調で訴えた。
「考えてるんですか?
考えてる時じゃない。やる時だ。
あんたが嫌でも俺がやる。
無理にでもあんたを引っ張って行く。
上等兵、黙って俺に付いて来い!」
有田は、大宮の力強い説得に漸く頷いた。
「ようし、付いて行こう。
俺もお前と別れたくないんだ」

部隊出発の日は大雪だった。
だからと言って出発が中止になることはない。
部隊全員が汽車に乗せられた。
汽車は、雪の荒野を突き進んでいった。
有田と大宮もこの汽車に乗り込んでいた。
汽車が新京に差し掛かろうというところで、大宮が有田に合図した。
「今です」
有田は大宮と共に席を立った。
仲間の兵隊たちは、皆長い汽車の旅に疲れて眠っていた。
2人は先頭車両の機関車に乗り込むと、運転手に拳銃を突き付けた。
「おい、連結器を外せ」
運転手は、言われるままに連結器を切り離した。
客車は置き去りにされ、機関車だけが雪の荒野を疾走して行った。
2人は軍服を釜に投げ入れて、用意しておいた支那服に着替えた。
「部隊の連中が気が付いて騒ぎ出す頃は、この機関車を放り出して何処かの街の中だ」
大宮はそう言って有田に微笑んだ。
有田は、この大胆不敵な計画にすっかり感心していた。
「大宮、シャバで生きる知恵はお前の方がある。
これからはお前が俺の上官だ。
遠慮無く命令してくれ。
何処にでも行く。何でも聞こう。
全くとんでもない奴だ、お前は」
有田に煽てられた大宮は、照れ笑いを浮かべながら呟いた。
「音丸に見せたかったな、この脱走」
2人を乗せた機関車は、煙を上げながら雪の荒野を疾走していた。

勝新太郎、田村高廣:「兵隊やくざ」 [KBS京都] 2012年02月08日 20時00時00秒(水曜日)

<兵隊やくざ:関連作品>



テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
http://rps1979y.blog.fc2.com/tb.php/51-b0fe20e3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

rps1979y

Author:rps1979y
※映画・ドラマの粗筋紹介は、
オチまで記してあるので御注意下さい。
管理人への連絡先はこちら

最新記事

カテゴリ

リンク

このブログをリンクに追加する

Amazon検索

楽天検索

楽天で探す
楽天市場

買物履歴

ブログランキング